聖なる夜に私は叫ぶ

しずもり

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クリスマスイブ前日

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「君を愛そうと思ったけれど、やっぱり無理だった」

そんなサイテーな言葉を三年付き合った彼氏に言われ、問答無用で振られてしまったのはクリスマスイブの前の日。


三年も付き合っていたのだから、に、最後のプレゼントを渡しても良かったんじゃない?

あ、が別れの言葉、ってか!


私?

クリスマスイブの前日だからプレゼントは購入済みでしたけど?

つーか、即に渡し済みだったよね。ねぇ、きよし


ん?もしかして確信犯か?

オイ、きよし!!


ちょっとお高めブランドの腕時計。

限定モデルが十二月頭に発売で、それをリクエストされたのだ。

しかも『こういうのって、発売日直ぐに身に付けて人に見せびらかすモンだよな』なんて言って、一緒に並んで購入したその場で身に付けていたっけ。

『同じ限定版なら、このペアウォッチの方が良くない?』と聞いたら

『いや、お前とペアにするなら、もっと恋人らしい雰囲気の別のモノにしようぜ』なんて言って、自分の左手の指を右手の人差し指で、トントン、なんてするからさぁ。


もしかしてクリスマスイブにプロポーズされるん?

なぁ~んて、勝手に期待していたんですけど。
でも、そう思ってしまうのも仕方なくない?


それが、まさかのクリスマスイブ前日に振るか?

きよしさんよぉ~。
アンタ、人の心ってものが無いわけ?


しかもさり気なく手首を確認したら、職場で自慢する為に毎日身に付けてた腕時計が無いじゃん!

あれか?
振られて逆上した私に奪われるとか思って、わざわざ外してきたってこと?


やっぱり無理だった、と思ったのっていつの時点よ。

十二月に入る頃には分かっていた事なんじゃないの?

なのに、愛せなかった彼女に二十万もする腕時計を強請るか?

しかも朝五時から寒い中、店頭に並ばせてさぁ。

いくら『一緒に並んであげるから』なんて言ったって、アンタが欲しかっただけでしょうがっ!!

しかも金は一切出さずにさ。


言うだけ言って、『ふぅ~、やっと言えた』みたいなスッキリした表情をしたきよしとの別れ話(一方的な!)は、コンビニ前の駐車場での立ち話で。
そうして三年間という短くもないお付き合いをバッサリと終了させて去って行った聖。


マジ、最低!!


聖が去って行ってどれぐらい茫然自失で突っ立っていたんだろうな、私ってば。


コンビニにお酒を買いに来ていたらしい若い兄ちゃんたちに、ソッと缶チューハイを握らされて我に返った。


「「「おねぇさん、ドンマイっ!」」」


お兄ちゃんら、声援をありがとう。

でも、ナンパはしていかないんかいっ!

缶チューハイ一本で去って行くって、それは優しさかい?
それともそれ以上は関わり合いになりたくないが私から滲み出ていたのかい?


・・・まぁ、どっちだっていい。
最低野郎に言いたい事は後から山のように溢れてきているけど、聖は既にトンズラした後だ。


若い子たちの声援を糧に、一晩中飲んで忘れてやるっ!!!


そう思って、実行したのが昨晩のこと。



そう、今日は嬉し、楽しいクリスマスイブ。
世間ではね。

正に聖夜イブという言葉がしっくりくる夜だね。
あ、夜空が、じゃなくてが、だよ。

あれからコンビニでお酒をカゴいっぱいに買って、コンビニ店員さんをドン引きさせていたのには気付かないフリをして。

缶ビールがびっしり入った一枚三円のビニール袋をブンブン振り回して。

私、腕力と握力は結構あるんで。

なあんて会話をどこで、誰としたんだっけ?

 気付いたら一人暮らしの1DKの部屋に戻っていて、『迎え酒じゃ~!!』なんて言って、何故か握りしめていたそこそこ名の知れた日本酒を飲んで、泣いて。

トイレで泣きながらスマホのフォルダーを消しましたとも!
一枚づつ画像を見て、思い出しながらさ。

所々じゃなくて、割と記憶が飛んではいるけれど、私がクリスマス前日に!いきなり恋人に振られた!ってのは、事本当の出来事だったんだよね。信じたくはないけれど。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ここまでお読みいただきありがとうございます。
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