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【番外編】 初出勤日 定時後
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昼ごはん中に泣き出してしまった真希に慌てた私は、うっかりと定時後に飲みに行く約束をしてしまった。
約束というか、なんだろうね?
『わっ。ちょ、真希、泣かないで!分かった。分かったから今は泣き止もう?定時後にもう一回話を聞くからさ』
まあ、こんな感じでテンパって口走り、定時後に話をする事になったのだけれど・・・。
「へぇ~。ふぅ~ん。これが佳奈先輩の新しい彼氏かぁ~」
いや、何で三人で飲む事に?!
これも自業自得ではあるんだけど、元々、私は聖夜君と会う約束をしていたのだ。それを真希の涙に焦った私はうっかりと忘れて約束をしてしまったのだ。後から気付いて、聖夜君に予定変更の連絡をしようにも、既に会社の外までお迎えがきていたわけで。
結果、何故だか分からないうちに、私と真希、そして聖夜君の三人で飲みに行く事になってしまったのだ。
「あ、この人が佳奈さんの元カレの今カノですね。佳奈さんの元カレって、急に目が悪くなったんですかね?あ!それとも老眼が始まったとか?
だってこの人、性格が顔に滲み出ていますよね?良くない方に」
「はぁ!?お前こそ、目がおかしいんじゃない?それに誰が聖クンの今カノなんだよ。今も昔も彼女じゃないし!」
いや、なんでこの二人はこんな喧嘩腰なわけ?
真希は兎も角、聖夜君はにこやかな表情なままだけど、目は笑ってないのはなんで?
確かに彼も聖と真希の事は知っているけど、でも聖夜君には関係のない話だよね?
まあ、私の彼氏だから無関係ではないけれど、だからって真希に対しての態度は、普段のほんわかした雰囲気とは違ってかなり厳しい。
「ま、まあ?折角三人で飲みに来たんだから仲良く、ね?仲良く飲もうよ」
本当は私こそが真希に厳しい言葉の一つや二つ。いや、酷い事をされたんだからもっと言ってやっても良い思う。でも、この殺伐とした雰囲気はなかなかに辛い。しかも被害者そっちのけで謎のバトルを見続けるのも・・・。
「本当、佳奈さんて優しいですよねぇ。この人にも、ゲス野郎にももっと怒ったって良いんですよ?」
あ、やっぱり聖夜君は私の為に怒ってくれているんだ。なんか嬉しいかも。
「本っ当に佳奈先輩ってチョロいよね!コイツ、先輩の為に言っているようでいて、ボクをダシにして先輩の中の自分の好感度を上げようとしているだけだから!
どうせ付き合う事になったのだって、強引な押しに負けたか、あざとく断りにくい雰囲気に持ち込んだんじゃない?」
う"っ!・・・ほぼ正解デス。
だって年末年始に何度か会う約束をして、これも聖夜君の押しに負けたっていうか・・・。で、でも楽しかった。一緒に過ごして楽しかったんだよ。
それで何となくそういう流れになって・・・気付いたら付き合うって話になってたの。よく分かんないうちに!
「あ。やっぱりそうなんだ」
「えっ!まさか口に出してた?」
「うん。ま~、佳奈先輩らしいよね。だって聖クンの時だって、似たようなもんだったんでしょ?」
真希に言われてみれば、あの男と付き合う時も向こうからグイグイとこられたからだった。
え?私、マジでチョロい女なの!?
「それだけ佳奈さんが素敵な女性だって事です。チョロいなんて失礼なことを言うこの人とは縁を切った方が良いですよ?」
「だからお前、年下のくせに生意気なんだよ!大体、『この人、この人』って煩いんだよ。ボクは真希って名前があるの!」
いや、本名は真希だよね?
初対面の聖夜君にもまきって呼ばせるの?
え?ま、まさか聖夜君のことを狙っ・・・。
「絶っ対違うから!こんな腹黒な奴は願い下げだから!」
「僕だって嫌ですよ。僕、まさきサンみたいな男、友達にだってなりたくないですもん」
ほぼ二人同時に拒絶の言葉が出てきたけど、どうやらまたしても口に出していたらしい。真希には、てっきり恭ちゃんの事で恨まれているのかと思っていたけれど、いきなり泣き出して謝ってくるし、一体どうしちゃったんだろう?
「誰がまさきだ!ちゃんとまきだって名乗っただろうが!イブ男、ムカつく~」
イブ男・・・。
いやいや。二人の方が会話が弾んでいるからね?喧嘩腰ではあるけど。
「まあ。ボクも佳奈先輩には悪い事したなぁ、って。恭クンに振られて、年末年始はどこにも行かずに色々考えたんだよ。まさか、休み明けに出勤したら先輩に新しい彼氏が出来てるとは思わなかったけど。しかもこんな腹黒そうなヤツが」
いきなり真希が昼に泣き出した時と同じようなトーンになって、見ようによっては申し訳なさそうにしているようにも見えるんだけど・・・。どうにも聖夜君のことが気に食わないらしい。
「誰がイブ男ですか、誰が。
あ、でも僕もまさきサンの事は好きにはなれないけど、別に佳奈さんの交友関係に口を出す気はないですよ?
もう先輩に変なちょっかいをかけないなら、ですけど。
あ、それから今後も" 好きじゃない"、という意思表示はしっかりさせてもらいますが」
コミュニケーション能力が高そうな二人なのに相性は良くないみたい。それでもお互いに憎まれ口を叩いているのに、二人が話しているのって私のことなんだよね。
なんだかんだ言っても真希は、今回の件を反省したようだし、どうやら私の事は嫌いじゃないらしい。聖夜君は・・・私の事をすごく心配してくれているんだろうなぁ。
「なんか、ちょっと嬉しいかも」
「「佳奈さん(先輩)って、本当に優しい(チョロすぎ)!」」
ぼそっと呟いた言葉は二人にも聞こえていたようで、ほぼ同時に言われた言葉は納得出来ない。だけど、それでも今夜のお酒がほど良く美味しく飲めたのは、やけ酒じゃなくてやっぱり嬉しい気分だったからだと思う。
なのに、どうして翌日の真希の顔に薄っすらと赤い斑点が幾つもあって、定時後に会った聖夜君の顔にも赤い斑点があったんだろう?
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ここまでお読みいただきありがとうございます。
約束というか、なんだろうね?
『わっ。ちょ、真希、泣かないで!分かった。分かったから今は泣き止もう?定時後にもう一回話を聞くからさ』
まあ、こんな感じでテンパって口走り、定時後に話をする事になったのだけれど・・・。
「へぇ~。ふぅ~ん。これが佳奈先輩の新しい彼氏かぁ~」
いや、何で三人で飲む事に?!
これも自業自得ではあるんだけど、元々、私は聖夜君と会う約束をしていたのだ。それを真希の涙に焦った私はうっかりと忘れて約束をしてしまったのだ。後から気付いて、聖夜君に予定変更の連絡をしようにも、既に会社の外までお迎えがきていたわけで。
結果、何故だか分からないうちに、私と真希、そして聖夜君の三人で飲みに行く事になってしまったのだ。
「あ、この人が佳奈さんの元カレの今カノですね。佳奈さんの元カレって、急に目が悪くなったんですかね?あ!それとも老眼が始まったとか?
だってこの人、性格が顔に滲み出ていますよね?良くない方に」
「はぁ!?お前こそ、目がおかしいんじゃない?それに誰が聖クンの今カノなんだよ。今も昔も彼女じゃないし!」
いや、なんでこの二人はこんな喧嘩腰なわけ?
真希は兎も角、聖夜君はにこやかな表情なままだけど、目は笑ってないのはなんで?
確かに彼も聖と真希の事は知っているけど、でも聖夜君には関係のない話だよね?
まあ、私の彼氏だから無関係ではないけれど、だからって真希に対しての態度は、普段のほんわかした雰囲気とは違ってかなり厳しい。
「ま、まあ?折角三人で飲みに来たんだから仲良く、ね?仲良く飲もうよ」
本当は私こそが真希に厳しい言葉の一つや二つ。いや、酷い事をされたんだからもっと言ってやっても良い思う。でも、この殺伐とした雰囲気はなかなかに辛い。しかも被害者そっちのけで謎のバトルを見続けるのも・・・。
「本当、佳奈さんて優しいですよねぇ。この人にも、ゲス野郎にももっと怒ったって良いんですよ?」
あ、やっぱり聖夜君は私の為に怒ってくれているんだ。なんか嬉しいかも。
「本っ当に佳奈先輩ってチョロいよね!コイツ、先輩の為に言っているようでいて、ボクをダシにして先輩の中の自分の好感度を上げようとしているだけだから!
どうせ付き合う事になったのだって、強引な押しに負けたか、あざとく断りにくい雰囲気に持ち込んだんじゃない?」
う"っ!・・・ほぼ正解デス。
だって年末年始に何度か会う約束をして、これも聖夜君の押しに負けたっていうか・・・。で、でも楽しかった。一緒に過ごして楽しかったんだよ。
それで何となくそういう流れになって・・・気付いたら付き合うって話になってたの。よく分かんないうちに!
「あ。やっぱりそうなんだ」
「えっ!まさか口に出してた?」
「うん。ま~、佳奈先輩らしいよね。だって聖クンの時だって、似たようなもんだったんでしょ?」
真希に言われてみれば、あの男と付き合う時も向こうからグイグイとこられたからだった。
え?私、マジでチョロい女なの!?
「それだけ佳奈さんが素敵な女性だって事です。チョロいなんて失礼なことを言うこの人とは縁を切った方が良いですよ?」
「だからお前、年下のくせに生意気なんだよ!大体、『この人、この人』って煩いんだよ。ボクは真希って名前があるの!」
いや、本名は真希だよね?
初対面の聖夜君にもまきって呼ばせるの?
え?ま、まさか聖夜君のことを狙っ・・・。
「絶っ対違うから!こんな腹黒な奴は願い下げだから!」
「僕だって嫌ですよ。僕、まさきサンみたいな男、友達にだってなりたくないですもん」
ほぼ二人同時に拒絶の言葉が出てきたけど、どうやらまたしても口に出していたらしい。真希には、てっきり恭ちゃんの事で恨まれているのかと思っていたけれど、いきなり泣き出して謝ってくるし、一体どうしちゃったんだろう?
「誰がまさきだ!ちゃんとまきだって名乗っただろうが!イブ男、ムカつく~」
イブ男・・・。
いやいや。二人の方が会話が弾んでいるからね?喧嘩腰ではあるけど。
「まあ。ボクも佳奈先輩には悪い事したなぁ、って。恭クンに振られて、年末年始はどこにも行かずに色々考えたんだよ。まさか、休み明けに出勤したら先輩に新しい彼氏が出来てるとは思わなかったけど。しかもこんな腹黒そうなヤツが」
いきなり真希が昼に泣き出した時と同じようなトーンになって、見ようによっては申し訳なさそうにしているようにも見えるんだけど・・・。どうにも聖夜君のことが気に食わないらしい。
「誰がイブ男ですか、誰が。
あ、でも僕もまさきサンの事は好きにはなれないけど、別に佳奈さんの交友関係に口を出す気はないですよ?
もう先輩に変なちょっかいをかけないなら、ですけど。
あ、それから今後も" 好きじゃない"、という意思表示はしっかりさせてもらいますが」
コミュニケーション能力が高そうな二人なのに相性は良くないみたい。それでもお互いに憎まれ口を叩いているのに、二人が話しているのって私のことなんだよね。
なんだかんだ言っても真希は、今回の件を反省したようだし、どうやら私の事は嫌いじゃないらしい。聖夜君は・・・私の事をすごく心配してくれているんだろうなぁ。
「なんか、ちょっと嬉しいかも」
「「佳奈さん(先輩)って、本当に優しい(チョロすぎ)!」」
ぼそっと呟いた言葉は二人にも聞こえていたようで、ほぼ同時に言われた言葉は納得出来ない。だけど、それでも今夜のお酒がほど良く美味しく飲めたのは、やけ酒じゃなくてやっぱり嬉しい気分だったからだと思う。
なのに、どうして翌日の真希の顔に薄っすらと赤い斑点が幾つもあって、定時後に会った聖夜君の顔にも赤い斑点があったんだろう?
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