【 本編 完結 】結婚式当日に召喚された花嫁は、余興で呼ばれた聖女、でした!?

しずもり

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逃げ帰った聖女だと気付かれていたと知った日

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アレクが私への愛を真顔で滔々と語った事によって毒気を抜かれたらしいカイウスは


「兄上も随分と物好きだったんですね」


という言葉を捨て台詞にして、マウント夫婦は早々に立ち去って行った。



もしや、ウザい二人を追い払う為に?


なんて、思いかけたんだけどね。


「・・・・話の途中で立ち去るとはマナーが成っていないな」


と、言った時のアレクの表情は本気だった。


この日はこれ以上は私の身が持たなさそうだったので、早々にお茶会は終了したのだった。





「クリス、あの指を鳴らす仕草には何か特別な理由ワケがあるのだろうか?」


何度目かのお茶会の席で、座ってすぐに赤い瞳をキラキラと輝かせ目の前で尋ねられた時の私のダメージの深さといったら、、、、。


元の世界へ戻った経緯がどのように伝わっているのか、まだ詳しくは聞いていなかった。


だから私もアレクとのお茶会の席でずっと聞いてみたかった事ではあった。


なのにその後のお茶会でも未だ聞く事が出来ていなかったのは、なぜかマウント夫婦カイウスたちが毎回やって来ては、アレクの真顔から繰り出される少しズレた反撃に撃沈撤退後、お茶会終了、を繰り返していてアレクに肝心の話は聞けないままだったのだ。


わざわざ、下らないマウントを取りに毎回現れるカイウスたちは暇なの?それとも構ってちゃんなの?


そうして肝心な話が出来ないまま一週間が経ち、今日こそは!とアレクに聞こうと思っていたところ、癒えたと思っていた傷口に塩水をぶっかけられる行為に等しい言葉が、お茶会が始まって早々にアレクの口から飛び出したという訳だ。


辛い。


既に何度かアレクとはお茶会をしていて、毎度の邪魔者カイウスたちの乱入はあったものの、アレクの態度も変わらなかったのであえてスルーしてくれたのだと思っていた。


なのに今更聞かれるとは思わなかった。この時間差口撃はダメージが大きい・・・。


スルーして欲しかった部分に期待の目を向けられている分、余計にツラい。


今ならアレクの膝抱っこも甘んじて受けられる気がする。

正面から期待に満ちた瞳で見つめられ、指パッチンの理由を求められる事に比べたらお姫様抱っこもお膝抱っこもなんて事は無いな。


あぁ、、、本当に十五歳の私!今すぐ指パッチンをする特別な理由を考えて?


「んっ、んん。あ、あの動作については、その、力を最大限に引き出す為と言いますか・・・」


嘘は言っていない、はず。たぶん。

指を鳴らす動作で行う浄化方法が一番浄化の力が強いのは経験上分かっている事だ。


「成る程。祈りの儀式、という事なんだな」


アレクは納得した様に頷いている。

祈りの儀式、か。

そう言うと神聖な感じに聞こえる。実は中坊が調子に乗っただけなんだけれどね。


「あのっ!アレクは私が聖女サーヤだと知っていたように感じましたが、どうして気づいたのですか?

だって、この世界ではまだ半年しか経っていないのでしょう?

それに私が元の世界に戻った後は何がどうなったのですか?」


これ以上、指パッチンについては触れられたくないのとについて聞くのは今しかない!と身を乗り出してアレクに尋ねた。


「・・・・この世界では半年しか経っていない、という事はクリスの世界では違ったという事だろうか。

クリスの世界ではどの位の時が経っていたのだ?

そう言えば私はまだクリスの歳も聞いていなかったな。見たところ私よりは歳下に見えるのだが」


私の言葉に少しの間沈黙し小さく頷いてからアレクの発した言葉に私も今更ながらに驚いた。


名前以外の個人情報さえ知らぬまま、一国の王太子の婚約者になってしまう状況がどれ程の異常な状況だったのか、と。


こんなんでよく王太子の婚約者に承認されたよね?


「あぁ、国王陛下父上にはクリスとサーヤが同一人物だと内密に伝えてあったからな」



まさかの爆弾発言っ!


「ど、どどどどういう事ですかっ!?

それで陛下は納得したのですか?私、出発前と全然違いましたよね?

今回は名前も栗栖と名乗っていたし一般人だと言ったと思いますけど?」


この世界では半年しか経っていなくても元の世界では十年も経っていて見た目も大きく変わっている筈なのに、私が聖女サーヤだと納得したの?本当に?


「たぶん宰相も何か気づいている筈だ」


慌てふためき矢継ぎ早に質問する私に、相変わらず冷静沈着なアレクはさらに私を動揺させる言葉を放った。


「へっ?どうして?」


陛下が知っているだけでも驚きなのに、宰相も気付いている?

もしかして私、十年前と全く変わっていないわけ?

それはそれで悲しいんですけど。


「カイウスが召喚した聖女が謁見の間で挨拶した時に、宰相もその場に居たからな」

ポソリと言ったアレクの言葉に、カイウスに連れられてドキドキしながら何も知らないままに謁見の間に行った日の事を思い出していた。


・・・思い出そうとはしたけれど、国王陛下とアレクの事以外は覚えてないなぁ。
だって十年以上前の事だもん。


首を傾げる私を見てフッと笑ったアレクの微笑む姿は不自然なところなんてどこにもないんですけど!?

確かにいつも無表情っぽいけれど、実はそれなりに笑ってはいるんじゃないの?

お付きの人や護衛さんだったら見た事があるんじゃない?とそう思って、今日も距離を置いて見守っていらっしゃる護衛さんや侍女さんたちを見回したら全力で首を振られた。

皆、私の表情から気持ちを読むのが上手だよね。


「その分ではクリスは覚えていないのだろうが、カイウスに紹介された君は『初めまして。クリスサヤです』と名乗っていたのだが。

だからたった半年しか経っていないとはいえ、カイウスが失敗したという聖女召喚で現れた女性がクリスと名乗れば、宰相が聖女サーヤと何か関連があるかも知れないと思ってもおかしくはないだろう」


あらっ、まさかの自爆でした。


確かに自己紹介はフルネームでするよね~。確かに当たり前の様にしてたかも。学校生活ってフルネームで名乗る機会が多いし結構習慣になっていたからね。


そっかぁ。そこからバレたのか。


てか、最初からじゃん。全然ダメじゃん。


あれ?でもカイウスもそれは聞いていたはずなのに、全く同一人物だとは思ってないよね?

あの人、本っ当に私に興味がこれっぽっちもなかったんだなぁ、マジで。


本当に最悪な初恋泥棒だわ。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ここまでお読みいただきありがとうございます。


前回の更新から少し時間が経っていましたが、その間、流行病(相変わらず特効薬の無いアレ)に家族が感染!、からの家庭内クラスターで弱ってました。

一昨日ぐらいに熱も下がり明後日ぐらいから外出(と言っても食品の買い物程度ですが)出来るぐらいまで回復しました。

夏休みになってからまた流行っているらしい、というのは聞いていましたが、まさかの家族旅行直後に感染までがセットの夏休みの思い出となりました。
(もう本当にしんどくて二度と感染したくは無い経験でしけれど。)
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