【 本編 完結 】結婚式当日に召喚された花嫁は、余興で呼ばれた聖女、でした!?

しずもり

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【 番外編 】ざまぁ、な話。その後の話。

王太子アレクシス 〜 還ってしまった聖女 〜

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聖女サーヤが召喚された時、何故か本人だけでなくベッドも付属して召喚された。


そのベッドは聖女に充てがわれた客間にそのまま置かれた為に、聖女が" 穢れを祓う旅 "に出立してもベッドはそのまま置かれ、聖女の部屋として存在していた。

数日に一度、聖女の部屋を掃除するメイドがいたが本人不在の部屋に訪れる者はいない。アレクシス以外は。


その日も無意識の内にフラフラと聖女の部屋に向かった彼は、聖女の部屋から楽しそうな声が聞こえてくるのに気付いて足を止めた。

掃除中だからか、部屋の扉は開いているようで外にまで会話が聴こえてくる。


「ねぇ、あの男女。変な恰好して現れたと聞いているけど、って何か分かる?」

「ん~?随分面積が小さい布ね。

えっ!ちょ、ちょっとってまさか、、、。」

「嘘でしょう?こんなの初めて見たわ!あぁ、もしかしてこっちは胸に、、、。

こんなに刺繍が施されて、もしかし凄く高価な物なんじゃない?しかも新しいわよ。」


「あんなのには必要無いんじゃない?絶対似合わないわよ。」


「言えてるわね。だから使って無かったのよ。」


聖女サーヤを男女と見下し馬鹿にするような発言を楽しそうに喋っている声に腹が立ち、思わず大きな音を立てて部屋に入る。


「「きゃぁっ!!」」

突然の侵入者に悲鳴を上げたメイドが二人、赤い布切れを持って聖女のベッドに座っている。
聖女ベッドは寝台の下に引き出しがついてるのだが、その引き出しが開いて物が散乱していた。


「お、王太子殿下っ!何故、こちらに?」

メイドたちはベッドから離れるように慌てて立ち上がるとさり気なくベッドの引き出しを元に戻そうとしている。


「お前たちこそ此処で何をしている?」

「わ、私たちは聖女様の部屋の掃除を任されているメイドです。

本日も部屋のそうじをしていたところです。」

「そ、そうです。ベッドの上が散らかっていましたので、、、。

も、もう終わりましたのですぐに退出します!」

メイドの言葉など無視して問えば、二人は互いの顔を見合わしながらボソボソと答えたかと思うと、二人して逃げるように部屋を出て行こうとする。


「待てっ!お前たちが手にしている物は何だ?仕事に関係のない物を部屋に持ち込んだのか?」

「ち、違います!こ、これはこの部屋に落ちていた物でゴミかとっ!」


分かっていてキツく問い詰めれば、二人は慌てたように赤い布切れを隠そうと手を後ろに回す。


「この部屋にあったのならば、それは聖女サーヤの物であろう。聖女サーヤの私物を勝手に破棄するなどあってはならない。」


こういう時に" 無表情 "だと言われている己の顔は役に立つとアレクシスは思う。
特に声を荒げた訳でもないが、メイドたちは肩を震わせて怯えきっている。


「ほ、本当にゴミだと勘違いしてしまっただけなのです。お許し下さいっ!」

「次の仕事がありますのでっ。私たちはこれで失礼します。」


投げ捨てるように赤い布切れをベッドの上に置いてメイドたちは部屋から逃げるように去って行く。


王太子を前にしてあのような態度は如何なものか、と部屋の外で控えていた護衛たちは憤っているが、アレクシスの関心はメイドたちが放り投げていった赤い布切れの方だ。

ハンカチか布袋か?

手に取って広げたアレクシスはが何かに気付いて、謁見の間での聖女との対面の時以来の衝撃を受けた。


「こ、これはっ!」


元々、自分には用のない物だが知識としては知っていた物。多分、用途は同じ筈だ。
だが知っていた物とは全く違う形と作り、そして生地の柔らかさにふと聖女サーヤが言っていた言葉を思い出す。

『この世界の服に慣れていないかも、、、。』


これは確かにこの世界の物とは違う。" 見て良し、触り心地良し "のを愛用していたならば、この国に来てさぞかし困っていた事だろう。
だが、そのを流石にカイウスには相談出来ずにいたのだな。


ならばこの私が彼女の憂いを払おうじゃないか。
この世界の技術でこれほどの物が作れるとは思えないが、それでもたった一人でこの世界に召喚されてしまった彼女に少しでも笑顔でいて欲しい。

出来れば彼女の心に寄り添い傍で支えたいが、どうやら彼女は私には関心が無いようだ。
それならせめて彼女が戻って来たら少しでも不便を感じずに済むように彼女の役に立つ事をしよう。


アレクシスは決意するとその赤い布切れをそっと内ポケットに仕舞い込んだ。




そして約一年後、" 穢れ "を祓い各地の神殿を巡りながら" 瘴気溜まりの地 "の封印に成功したカイウス一行が王都に帰還した。

しかし、そこに居るべき筈の聖女サーヤは居なかった。


意気揚々と" 穢れを祓う旅 "の成功を報告するカイウスは、聖女サーヤの不在の理由と魔術師二名の死を国王両陛下や大臣たちが揃った謁見の間で報告した。


聖女サーヤが旅に出てすぐに魔術師たちを脅して元の世界へと戻った?

ガイナード公爵令嬢が聖女の代わりを務め、" 穢れ "を祓い、" 瘴気溜まりの地 "を封印しただと?

カイウスの報告はどれも信じ難い内容だった。

ガイナード公爵令嬢は確かに光魔法を持ち、一応は神殿に属していた。だがしかし、今まで" 穢れ "の討伐には赴いた事はなく、そもそもが光魔法もそれ程強い力を持っていた訳では無かった筈だ。


カイウスの言葉を俄には信じられないのは国王両陛下や大臣たちの表情を見ても分かる。
しかし聖女サーヤがその場に居ないのは確かだった。そして残念ながら聖女の為人ひととなりをよく知る者もこの場に居ない。

一番よく知っているであろうカイウスが、と言い、同行していた魔術師たちも護衛騎士たちも口を揃えて" その通り "と言っているのだ。


後日、各神殿に問い合わせてみれば、確かにガイナード公爵令嬢が聖女代理として神殿を訪れており、各地の浄化もしっかりと行われている、と報告が上がってくる。


それに合わせて王城内では聖女サーヤの悪評が広がっていった。そうなると居ない聖女を擁護する者はいない。


カイウス一行が王都に戻る寸前で王城内ではがあった。
だがそれ以上にカイウスによって報告された使の話の方が重要で、その事件については謎なまま捨て置かれた。


結局、聖女サーヤが居ないのは事実であり、" 穢れを祓う旅 "が成功したのもまた事実。


ではこの功績は誰のモノ?


カイウスの報告に疑問が残りはしたが、証人も多数いる事で事実と受け止められ、ガイナード公爵令嬢は旅の功績により聖女に認定される事となった。

そしてガイナード公爵令嬢が聖女と認定された事でカイウスは、旅の褒賞として彼女との婚姻を望んだ。


長年、この国の憂いとなっていた" 穢れを祓う旅 "を成功させたのが、カイウスとガイナード公爵令嬢だというならば褒賞を与ねばならない。
元々、二人は想い合っている恋人同士である。


流石に国王陛下も認めざるを得なかった。


そうして最初から予定されていたかのように、半年という短い時間でありながら、ガイナード公爵令嬢の聖女認定の公表とカイウスとの結婚式が行われる事が決まった。


第二王子のカイウスが" 穢れを祓う旅 "を成功させ、その成功の立役者であり" 聖女 "となったガイナード公爵令嬢と婚姻が決まると、王城内では" 第二王子が次代の国王となるべきでは?"という言葉が王城内の一部で囁かれ始める。


その声はアレクシスの耳にも届いてはいたが、アレクシスの心は元の世界へと還ってしまった聖女サーヤの事で一杯だった。


カイウスの言うように本当に還ってしまったのだろうか?

もう二度と会う事は叶わないのだろうか?


アレクシスが遅い初恋に心の折り合いがつかないまま、カイウスとガイナード公爵令嬢の結婚式の日を迎える。


そうして祝いの席でのカイウスの気まぐれで、アレクシスは元の世界で十年を過ごした紗夜と再会する事となった。



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