捨てられ令嬢は屋台を使って町おこしをする。

しずもり

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ハドソン領 花街道(仮)編 ワトル村

 匂いは気にならない?

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「うぉっ!本当にこりゃ美味い!」

「見た時には何だこれ?とは思ったが、ビンスが力説するだけあって美味いっ!」

「いやいや、こっちのオークドン?とかいうのも美味いぞ」


翌日、コリンさんたちに宣言した通り、ケンネルさんたちのいる現場でお昼の提供をしている。

雰囲気も大事なので、休憩室に屋台を出してオーク丼を提供しているのだけど・・・。

「はい、ジョーさん。オークドンが出来たよ!」

昨夜、一緒に食べる気まんまんだったリッキー君も当然のように来ている。来ているんだけど、来てくれて助かった。

オーク丼をお皿に入れて、皆に渡すお手伝いをしてくれているからだ。

『美味しい物を無料タダで食べさせて貰うならコレぐらいお手伝いしないとね!』

と、いう事だそうだ。

でも本当に助かった。お昼休憩になったと同時に、もの凄い勢いで屋台に群がって来た作業員とビンスさんたちを私とクリスの二人だけでは対応しきれなかったと思う。

どうやらお昼休憩になるまでの時間、仕事前や小休憩の時にビンスさんやペーターさんたち、昨夜のメンバーがお昼に私が料理を作って持って来ると話していたらしい。

「へぇ~、これがペーターさんが言ってたギョーザっていう食べ物かぁ」

「本当、初めて見るが美味い!確かにエールが飲みたくなるなぁ」


今日、私が此処で料理を披露する目的は、コリンさんたちに作って貰いたいどんぶりお皿を、実際にどんな風に使おうとしているのかを知ってもらう、だったんだけどな。

どんぶりだったら麺類でも良かったんだけれど、お蕎麦よりはやっぱり肉だよね。力仕事でお腹空いているだろうし。

それにオーク丼だったら、宿屋を出発する前に作っておけば、後は温めてよそって出すだけ、と気楽に考えていたのだけど。

昨夜、帰り際に懇願されてしまったんだよねぇ、ペーターさんたちに。

『明日の昼もギョーザが食べたいんだっ!!』

って。

餃子を気に入ってくれるのは嬉しいけど、昼から?それも仕事の合間にギョーザ?
しかもペーターさんたちは、さっきまでがっつりと餃子を食べていたよね?

そんなような事をオブラートに包んで言ってみたけれど、兎に角、すぐにでもまた食べたかったらしい。

あの場にいた全員が餃子を食べまくっていたから、は気にならなかったんだろうね。というか、気付いてない?

『良いじゃないか。現場の人たちにも味見をしてもらった方が良いだろう?』

単に自分が食べたいだけのようなクリスの援護射撃を受けて、ビンスさんたちが期待に目を輝かせて私を見てくるので結局引き受ける事になったのだ。

しかし、ペーターさんたちは昨夜、家族たちにについて指摘されなかったんだろうか。


まぁ、引き受けたからにはやるしかない。
餃子の皮は前に作ったのがあったから、何とかなるかな?と思ったし、クリスにも手伝わせる!と決めたからね。


今朝、私たち以外の宿泊客が居なかったので、宿屋の厨房を借りて作ろうとしたらリッキー君とナタリーさんも手伝いを申し出てくれた。

リッキー君にはボア肉をミンチにする作業を、私とナタリーさんはキャベツとニラを切る作業をして、クリスは餡を包む作業から参戦。それとアシュトンさんも。

そういう訳で、オーク丼だけじゃなく、餃子も全員がおかわりしても大丈夫なくらい用意したんだけど完売御礼?

無料タダだけど。

オーク丼の反応も良かったけど、ギョーザの人気は凄かった。

人気は凄かったけど・・・休憩室にニラとニンニクの匂いが充満している。
そこに餃子のタレの匂いも混ざって、休憩室は" THE 餃子!"な状態。

オーク丼も新鮮なお肉を使ってるし、醤油とみりんと砂糖の混ざった牛丼のタレの良い匂いが漂っていてもおかしくないのに、餃子の匂いに押し負けてる。

えぇ~。この状況、流石に気にならない?
それとも皆一緒だから気付いてない?


「いやぁ~、こんな美味しい食べ物を初めて食べたぜ」

「ははは。オークドンもギョーザも食べ過ぎて昼から動けるかな」

「確かにな!でもだなぁ~」

「ははは。腹一杯なのに、まだ食べたくなる匂いだよな」

「そうだ、そうだ!すぎて、この部屋から出たくねぇ~」


・・・。

そっか。そうなんだ。

皆、ちゃんと匂いについては認識してたんだ。

うん。だよね、確かに。

でもその、部屋の中だけじゃなくて、自分の口の中にも充満しているからね。




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