捨てられ令嬢は屋台を使って町おこしをする。

しずもり

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ハドソン領 花街道(仮)編 ワトル村

子爵夫妻の事情 1

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「子爵様は奥様の友人の伴侶となった方にお会いしたことがあるのですか?」


色々とツッコミどころはあれど、まずは基本情報から確認しようとスコティッシュ子爵に尋ねてみた。


「いや、私が妻と結婚する前に結婚し遠方へと嫁いでいたので、私もクリスティーヌも会った事はないな」


何故、そのようなことを?というような表情で子爵が答えたけれど、逆に夫人も会った事がない事の方に私が驚いた。


「え?でもご友人の方が先に結婚されていたのなら、奥様はそのご友人の結婚式に招待されていたのではないのですか?」


「そこは妻の友人の嫁ぎ先と家の事情があったらしい。妻もその友人もサガーミ領の出身なのだが、嫁ぎ先がサルーキ領のボルゾイという町で、馬車で一ヶ月は掛かる場所だ。

妻とその友人は幼馴染で大変仲良くしていたのだが、相手が平民であり、結婚式も互いの家族のみで執り行うという事で式には出席していなかったんだ。

そして私と妻の結婚式も、距離的なこととその友人が妊娠中であったので招待する事が出来なかった。
そういうわけで妻とその友人は結婚後は手紙のやり取りだけで、もう十年ほど会っていない」

じゅ、十年も会っていないのかぁ~。
いや、確かに何年も会っていなくても友人は友人だろうし、それが親友や幼馴染だっていうなら強い絆で結ばれているとかなんだと思う。

だけど、十年も会っていなくて、しかも面識のない友人の夫からの手紙。その内容が金貨百枚という大金を借してくれ、という。

それって簡単に信じられるものなの!?


「あのぅ~、その手紙は本当に奥様の友人の夫さんからだったのですか?」


失礼かもしれないけど、そこははっきりと聞かないといけないよね?
その手紙が本物だと信じられる何かがあっての事だよね?


「ああ、もしかしてその手紙が偽物だと疑っているのかい?
確かに金貨百枚は大金だからね。そう思うのも分かるよ。

だがマイケル、妻の友人の夫の名だが、最初の手紙で妻の友人の特徴も書かれていた上に、彼が経営している商会の名や住所も書かれていた。

それにアターミで一番と有名な宿に宿泊していると書かれていたし、実際に送り主の住所にも部屋番号とともに記入されていた。しかもアターミの商業ギルド経由で届いた手紙だ。疑いようもないだろう?」


え?それだけで?

そう思ってしまうのは、商業ギルドが必ずしも不正をしないとは限らないことを身をもって経験しているからかな?
何しろ商業ギルドのトップが指示を出して、私を誘拐しようとしたからね。

それにまた気になるキーワードが・・・。

最初の手紙って、何それ。
明日をも知れない命だという重病人がいるのに、何度も手紙のやり取りをしてたってこと?
いや、最初の手紙であっさりと信用しちゃうのも問題があるけどさ。

「最初の手紙ということは、何度か手紙のやり取りがあって信用されたという事でしょうか?」

アシュトンさんの言葉で、やっぱり疑問に思ったのは私だけではないのだと分かる。


「そうだな。妻はすぐにでも金を届けに行きたいようだったが、マイケルの手紙では商業ギルドの方へと振り込んでくれ、と書いてあったんだ。

確かに振り込みをした方が先方にはすぐに届く。だが、妻が『ミーティアに一目会いたい。直接、お金をもって行く』と言ってきかなかったのだ。

きっとミーティアは見知らぬ土地で病に罹って心細い想いをしているだろう、と。

だが、マイケルの手紙には子爵様とご夫人に手間をかけさすのは申し訳ない。自分も妻の側を離れられないので、アターミの商業ギルドの方には旅行に付き添っていた世話係の使用人をよこすから大丈夫だ、と書かれていた」


・・・。

どうしよう?

聞けば聞くほど、あやしさ満載、ツッコミどころ満載の話なんだけど。

これ、俗にいう『オレオレ詐欺』みたいなものじゃない?



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ここまでお読みいただきありがとうございます。

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