捨てられ令嬢は屋台を使って町おこしをする。

しずもり

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こうして私は追い出された。

そして私は家族と縁を切る。

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「え?言いたい事なんて何も無いわよ?」


いきなりクリスから話を振られて思わず間抜けな声で言ってしまったわ。クリスも予想外の返答に流石に呆気に取られたみたい。


そう言えば結局、私ったら殆ど喋っていなかったわね。茶番劇の舞台に上がりそびれちゃってたわ。上がりたくもなかったからいいけれど。


「だってここに居る人たちはもう垢の他人なのよ?垢の他人の言う事なんて心底どうでもいい。

過去にされてきた事だって家族との縁を切ると決心するには丁度よい事だったのよ。

だって普通は未練なく簡単に縁を断ち切る事は早々出来る事ではないもの。」



コレはティアナ今の私のまごう事なき本心だった。前のティアナだって搾取され続け虐げられる日々に思う事が無かった訳ではない。何度も親子の縁を切って平民になる事を考えてはいたのだ。


それでもそう出来なかったのは侯爵家の行く末を案じたからであり、母との思い出が残る屋敷を去る事に決心がつかなかったから。


そして例え虐げられていようとも血の繋がった父を見捨てる事は出来ない、と踏み留まっていたからだ。


それ程、血の繋がりは時に心強くもあり、時に厄介なモノでもあると思う。


でもその血の繋がりを先に一方的に捨て去ったのは父だ。アーノルドに言われたからとは言え、10歳の頃から必死に侯爵家の仕事をこなしてきたのは本当は侯爵家の為ではない。

父の為であり愛情欲しさからだ。結果的に失うばかりで父からは何も与えられる事はなかったけれど。


だからこそ今、何の躊躇いもなく親子の縁を切る事が出来る。血の繋がりがあるというだけの私たちには、家族として、親子としての思い出も情も何も無いのだ。


だったら血の繋がりに縋る事も大事に思う必要もないじゃないか。


今はもう、血の繋がりそれはこれからのティアナの人生には必要無いものだ。


「お父様、お義母様、そしてエミリー。今までありがとう。皆様、元気でお過ごし下さいませ。」


何に対しての感謝かは深く考えないよう、ただ決別の意味を込めて彼ら向かって礼を言った。そして



「今日から私は平民で家名を名乗る事もありません。干渉する事なく垢の他人として生きて行きましょう。」


『今後一切、私に関わるな』という意味を込めて言うと、ダイニングルームの入り口に向かって歩き出した。



「マジで面白いな、今のは。」


クリスは笑いながらそう言うと私の後ろを追ってきた。背後で呆気に取られていた元家族が何か喚いていたような気もするがもう関係ない。

私は自室に戻る事なく玄関に向かい、生まれてから18年間過ごした屋敷を後にした。

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