捨てられ令嬢は屋台を使って町おこしをする。

しずもり

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南の街、イケアに向けて

襲われた馬車と冒険者デビュー

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 休憩時間が終わり、馬車が出発して1時間ほど経った頃の事だった。

日が傾き始めたのを感じながら馬車の揺れに眠気を覚え、少しウトウトとしていたその時、急に大きく馬車が揺れて止まった。


馬たちが何かを怖がっているのか、足踏みするような後退りしたいけれど出来ない、という感じで、4頭がそれぞれあちこちに逃げ出そうとしているかのような動きをしている。


ガッ、ガッ、と響く馬の蹄の音と、何とか馬を落ち着かせようと御者が必死に手綱を取り鞭をふるう音が聞こえてくる。


当然、座席に座っていた私たちの体もグラグラと揺れて、皆、思い思いに馬車のどこかに掴まって辺りを見渡している。


座席に座ったままだとサミュエル君が危険だ、と判断したミリアさんはサミュエル君を抱きしめながら床に座り込んだ。それを支えるように抱きしめているロイドさん。


それに倣うように怯えたお姉さんたちも、小さく悲鳴を上げながら3人でしがみついて床に蹲った。


するとクリスがマントを取り、御者台の方に体を向けて立ち上がった。そして前方を厳しい顔で見つめてハッとして目を大きく見開くと、乗客たちにだけ聞こえるように小声で言った。


「オークだ!オークが前方の馬車を襲っている!」


その言葉にお姉さんたちは更に悲鳴をあげたけど、クリスの『静かにっ!』の声に慌てて手で口を押さえていた。


姿勢を低くしながら馬車にしがみついていたけれど、クリスの言葉に前方見る。怯えて落ち着きなく動く馬たちの隙間から遠くに黒い塊のようなものが見えた。

微かに馬の鳴き声と何かを破壊しているような音。そして幾つかの動く物体が黒い塊を取り囲んでいた。



「ロイドさんっ、茶髪のアンタっ、馬を落ち着かせたいっ。協力してくれっ。」


クリスが馬車を下りて怯える馬に近寄っていく。繋がれた4頭の馬はバックが出来ないから、何とかして落ち着かせないとオークに気づかれてしまうからだ。


ロイドさんとインテリ風男性も馬車を下りて馬の方に近寄っていく。


私も立ちあがろうとした時、隣のメガネ美人さんがサッと立ち上がって馬車から下りる。


『私もっ、私も出来る事をしなくちゃ!』と、つられるように馬車を下りて馬の方に近づくと、速攻でクリスに怒鳴られた。


「ティアナっ!何しに来たっ。馬車に乗っていろ!」


確かに足手まといになるかも知れない。足はフルフルと小刻みに震えているし。だけど、少しだけ出来る様になった土魔法を試してみたかったんだよ。


「待って!試したい事があるの!」


私は馬の前まで出ると両膝をついて地面に手をついた。


魔法はイメージっ!壁!土の壁だ!


前方から私たちの馬車が見えなくなるぐらいの高さの壁で遮れば、馬もきっと少しは落ち着くはずだ。頑張れ、私っ!


自分で自分を応援する。魔力量は豊富なんだから、きっと転生チートも発揮される!そう信じるしかない。私は出来る子、出来る子!


目を瞑って必死に頭の中で土の壁をイメージする。ついでに自分で自分を鼓舞する。


地面についた手のひらに魔力を集める気持ちで力をこめていくと、急にグッと地面が動いた感覚がして体がグラりと揺れた、ような気がする。


周りの人の驚いた気配に顔を上げれば、高さ2メートルを超える土の壁が道幅いっぱいに出来ていた。


良かった、ちゃんと出来た、、、。




急に現れた土の壁に馬車の方から驚きの声が上がる。それでも今は気にしてなどいられない。


「クリスっ、前の、馬車っ、助けて!オーク、やっつけて!」


初めて使った大きな魔法に立ちあがろうとして、体がフラつく。何だか息も続かなくて言葉も切れ切れになる。


クリスの姿を探すと、既にクリスはウェストポーチに手をかけて、剣を取り出して走り出すところだった。


気づけばメガネ美人さんも、いつの間にか両手に短剣を持っていて、黒い馬車の方へと走り出していた。


えぇっ!忍者か、何か?



メガネ美人さんの後ろ姿を呆然と見ながら戸惑っていると、背後からポンっと肩を叩かれて振り返る。


「はっ?」


インテリ風の男性が『お疲れ様です。後は任せて下さい。』と微笑んで、やっぱり短剣を持って走り出している。


え、何で?


何だかあの男性、微笑んでいたけれど、目は暗殺者みたいな鋭い目つきになってたよ?


ハッ!もしかしてロイドさんも?


と、近くに居るハズのロイドさんを探すと


「いや、私は・・・。」


と困ったように小声で言われてしまった。


良かった、普通の人だった。

ロイドさんまで武器を持って前に行かれたらねぇ、なんかこの馬車に乗っている人たち、怖すぎない?


なんて思っていたら突然、馬車に乗っていたお姉さんたちの悲鳴が響き渡った。


慌てて声がする方を見ると、お姉さんが馬車の斜め後方の畑を見て固まっていた。つられて視線を後ろの畑の方に向けたら、猪みたいな獣が2頭、前方の黒い馬車を目指す様に突進してきている。


イヤイヤイヤっ、あれ、何?無理!あんなのに突っ込まれたら死ぬっ!


猪(仮)が凄い勢いで土埃を上げてそのまま黒い馬車の方向へ向かって、、、えっ!?まじかっ!


猪(仮)2頭は私たちの馬車の左側20メートルくらい先を、そのまま黒い馬車に向かって行くように見えていた。


なのにっ!今っ、進路を私たちの馬車に変更したみたいなんですけど!


土煙を高くあげてこっちに向かって来ているんですけどぉぉぉ~!!



あぁっ!折角落ち着いてきていた馬たちがぁ!


馬車私たちに真っ直ぐ向かって来る事にしたらしい猪(仮)が、私の姿を見つけて突進方向を少し軌道修正して向かって来ている気がするんですけどっ!しかも2頭ともっ!!


「ひぃぃっ!!こ、来ないでっ。来るなよ、来るなったら、、、あぁっ!これ、お約束なやつぅ~。」


もう、自分でも何を言っているのか、分からない。さっきの土魔法を使った影響でまだフラついて走れないんですけど。いや、走る事が出来ても無理だっ。逃げ切れる訳がない。


こういう時は何だっけ?眉間に、グーパンチ?・・・ダメだっ、腕のリーチが足りないよっ!

猪(仮)デカ過ぎ!成人の熊並みだよぉ~。


段々と近づいてくる2頭の猪(仮)個体差の区別がつきそうなぐらいになってきた。隠れる場所も逃げ切れる事も出来ないなら、ダメ元でやるしかないっ。と言うか、何もせずして死にたくないぃ!!


「風の刃!風の刃!風の刃!」


体はフラフラしているけれど、何とか足を踏ん張って、両手を猪(仮)に向けてひたすら風魔法を連呼する。


下手な鉄砲何ちゃら、で気付いたら2頭とも畑で転がっていた。ん?畑だったよね、目の前は。


あちこちで土が抉れて穴が空いている畑を、その場にへたり込んで見ていたら、オークを倒したらしいクリスが慌てて戻ってきた。


『大丈夫だったかっ!』と繰り返しながら私をぎゅうぎゅうと抱きしめていた。どうやら私はへたりこみながらブルブル震えていたらしい。




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