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イケアの街と面倒事
初めての屋台販売
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「だ、大丈夫?」
私は屋台の裏で、ぜーぜーと息をしている料理人見習いのトム君に声を掛けた。
朝9時ぐらいから始めた屋台販売は、最初は『何を売る気だ?』という様子見の人たちばかりだった。
それでもフライドポテト(細切りとくし型の両方)が出来上がって、辺りにいい匂いがたち始めると、食欲をそそられたらしい冒険者の人が購入してくれた。
その冒険者がオーバーアクション気味に『旨い!何だこれ!うまっ、もっとくれ』と、サクラですか?と、言いたくなるぐらい食べながら大声を出して感動してくれた。
それから気になった人がどんどん購入してくれて、口コミであっという間にフライドポテトの噂は市場周辺に広がっていったらしい。
そうしてお昼になる頃には、市場が開かれている広場には長蛇の列が出来てしまった。
調理はピレネー家の調理補助をしている料理人見習いさん2人にお願いした。
1人は邸で追加のじゃがいものカットをお願いして、持ってきてくれた時にトム君と交代する予定になっている。
『2人も借りていいのかしら?』と聞いたら、料理長に昼間はそんなにする事は無いし経験になるからと貸し出してくれた。
勿論、彼らには日当を渡す話はつけてある。ウチはブラック企業じゃ無いからね。
そしてアーニャさんにも商品やお金の受け渡しをする売り子さんをお願いした。連日アーニャさんを借りてしまっていて、申し訳ないと思ったけれど『ティアナさんの護衛も兼ねているから』とロイドさんには言われた。
私は呼び込み兼売り子で、行列が出来てからは周囲の屋台の迷惑にならないように、列の整理もしている。
フライドポテトは細切りも、くし形も同じ値段の1袋小銅貨3枚。拳大の大きさのじゃがいも1個半~2個分ぐらいの量。じゃがいもは大体10個で小銅貨2枚ぐらいらしい。油や塩などの調味料と人件費を考えると少し利益が出るぐらいかな。
フライドポテトを知ってもらう為の屋台販売なので『特別価格』だと、呼び込みでは言ってある。
だから、レシピを購入したお店の店頭販売価格は考慮していないし、そこはお店の自由裁量だ。
そしてフライドポテトの販売は3日間限定だと言う事と、近々、周辺のお店でも販売されるとも宣伝もしている。
4日目以降は、お菓子を販売する予定という話もつけ加えて。
揚げ物という調理の概念がない世界だったので、馴染みの食材のじゃがいもなのに、今まで食べた事のないフライドポテトという料理に、ひと口食べて目を丸くしている表情が見ていて楽しかった。
それに『美味しい!』と言って、食べた人たちが顔を綻ばせている姿はかなり嬉しかった。
お昼すぎにカットしたじゃがいもを、邸から運んできてくれた見習いさんのサムさんに交代して、屋台から少し離れた所で休んでいるトム君に声をかけたのが冒頭の言葉だ。
「な、何なんですかコレ?確かに美味しいです。美味しいですけど、この行列が全く途切れないんですけど!」
屋台から少し離れているのに、トム君が休んでいる場所の目の前にもフライドポテト待ちの列がある。
「うん、私もここまでとは、、、。初めて食べる物だからかなぁ。」
それと3日間限定、という言葉も後押ししたのかな?この世界でも限定って言葉には弱いんだね。
でもお店でも販売されるからお店の方に行ってもらいたいし、芋けんぴやポテトチップスも販売したいので仕方ない。
「え、あっ、いえいえいえ。ちょっと忙しくて、休む暇なくて、疲れて愚痴っただけですからっ。」
私の言葉に慌てたトム君だったけど、愚痴という時点で雇用主的にはダメじゃないかしら?
『忙しくて休む暇ない』という言葉はブラックな企業っぽいよね。
トム君はピレネー家に雇われて3年目で、実は私と同い年である。
野菜のカットなどの下準備とスープ鍋の火加減担当を主にやっているらしい。因みにサムさんは20歳になったばかりで下拵えと簡単な料理のフライパン係らしい。
「えっと、人多くてびっくりだし大変だけど、揚げる?だけしかしていないけど、俺が料理を作って、それを美味しそうに食べている人を目の前で見る事が出来てすげー嬉しいですから!
まだまだ見習いの分際なのに、客の前に立ててる、ってやりがいあるから!
こんな機会を貰えて感謝してる、いえ、しています。」
私が黙り込んだのを落ち込んでると思ったのか、トム君が慌てたように言ってくれた。
優しいな、トム君。それに嬉しい言葉をありがとう。屋台の経験がトム君のヤル気に繋がったなら私も嬉しいよ。
「ありがとう、トム君。この分だとじゃがいも足りなくなりそうだから、邸戻ったらじゃがいも100個切って持ってきてくれるかな?」
って言ったらトム君の顔が「うへぇ~。」って表情になっていた。
え、やっぱりブラック企業?
私は屋台の裏で、ぜーぜーと息をしている料理人見習いのトム君に声を掛けた。
朝9時ぐらいから始めた屋台販売は、最初は『何を売る気だ?』という様子見の人たちばかりだった。
それでもフライドポテト(細切りとくし型の両方)が出来上がって、辺りにいい匂いがたち始めると、食欲をそそられたらしい冒険者の人が購入してくれた。
その冒険者がオーバーアクション気味に『旨い!何だこれ!うまっ、もっとくれ』と、サクラですか?と、言いたくなるぐらい食べながら大声を出して感動してくれた。
それから気になった人がどんどん購入してくれて、口コミであっという間にフライドポテトの噂は市場周辺に広がっていったらしい。
そうしてお昼になる頃には、市場が開かれている広場には長蛇の列が出来てしまった。
調理はピレネー家の調理補助をしている料理人見習いさん2人にお願いした。
1人は邸で追加のじゃがいものカットをお願いして、持ってきてくれた時にトム君と交代する予定になっている。
『2人も借りていいのかしら?』と聞いたら、料理長に昼間はそんなにする事は無いし経験になるからと貸し出してくれた。
勿論、彼らには日当を渡す話はつけてある。ウチはブラック企業じゃ無いからね。
そしてアーニャさんにも商品やお金の受け渡しをする売り子さんをお願いした。連日アーニャさんを借りてしまっていて、申し訳ないと思ったけれど『ティアナさんの護衛も兼ねているから』とロイドさんには言われた。
私は呼び込み兼売り子で、行列が出来てからは周囲の屋台の迷惑にならないように、列の整理もしている。
フライドポテトは細切りも、くし形も同じ値段の1袋小銅貨3枚。拳大の大きさのじゃがいも1個半~2個分ぐらいの量。じゃがいもは大体10個で小銅貨2枚ぐらいらしい。油や塩などの調味料と人件費を考えると少し利益が出るぐらいかな。
フライドポテトを知ってもらう為の屋台販売なので『特別価格』だと、呼び込みでは言ってある。
だから、レシピを購入したお店の店頭販売価格は考慮していないし、そこはお店の自由裁量だ。
そしてフライドポテトの販売は3日間限定だと言う事と、近々、周辺のお店でも販売されるとも宣伝もしている。
4日目以降は、お菓子を販売する予定という話もつけ加えて。
揚げ物という調理の概念がない世界だったので、馴染みの食材のじゃがいもなのに、今まで食べた事のないフライドポテトという料理に、ひと口食べて目を丸くしている表情が見ていて楽しかった。
それに『美味しい!』と言って、食べた人たちが顔を綻ばせている姿はかなり嬉しかった。
お昼すぎにカットしたじゃがいもを、邸から運んできてくれた見習いさんのサムさんに交代して、屋台から少し離れた所で休んでいるトム君に声をかけたのが冒頭の言葉だ。
「な、何なんですかコレ?確かに美味しいです。美味しいですけど、この行列が全く途切れないんですけど!」
屋台から少し離れているのに、トム君が休んでいる場所の目の前にもフライドポテト待ちの列がある。
「うん、私もここまでとは、、、。初めて食べる物だからかなぁ。」
それと3日間限定、という言葉も後押ししたのかな?この世界でも限定って言葉には弱いんだね。
でもお店でも販売されるからお店の方に行ってもらいたいし、芋けんぴやポテトチップスも販売したいので仕方ない。
「え、あっ、いえいえいえ。ちょっと忙しくて、休む暇なくて、疲れて愚痴っただけですからっ。」
私の言葉に慌てたトム君だったけど、愚痴という時点で雇用主的にはダメじゃないかしら?
『忙しくて休む暇ない』という言葉はブラックな企業っぽいよね。
トム君はピレネー家に雇われて3年目で、実は私と同い年である。
野菜のカットなどの下準備とスープ鍋の火加減担当を主にやっているらしい。因みにサムさんは20歳になったばかりで下拵えと簡単な料理のフライパン係らしい。
「えっと、人多くてびっくりだし大変だけど、揚げる?だけしかしていないけど、俺が料理を作って、それを美味しそうに食べている人を目の前で見る事が出来てすげー嬉しいですから!
まだまだ見習いの分際なのに、客の前に立ててる、ってやりがいあるから!
こんな機会を貰えて感謝してる、いえ、しています。」
私が黙り込んだのを落ち込んでると思ったのか、トム君が慌てたように言ってくれた。
優しいな、トム君。それに嬉しい言葉をありがとう。屋台の経験がトム君のヤル気に繋がったなら私も嬉しいよ。
「ありがとう、トム君。この分だとじゃがいも足りなくなりそうだから、邸戻ったらじゃがいも100個切って持ってきてくれるかな?」
って言ったらトム君の顔が「うへぇ~。」って表情になっていた。
え、やっぱりブラック企業?
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