元虐げられた公爵令嬢は好きに生きている。

しずもり

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レンとリアの旅 〜過去編〜

リア、怒る 2

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 アメリアが閉じた扉の前でレンが途方に暮れている頃。

アメリアは?といえば、部屋に入るなり、ベッドを目指してダイブ。

速攻寝た。所謂、ふて寝というやつである。

レンに対して怒り心頭で。
だけどこれ以上一緒にいては、怒りに任せて罵詈雑言を浴びせてしまう。それは人として良くない。アメリアは、それを知っていた。

しかし、腹は立っているのである。何しろ、怒り心頭なので。

物に八つ当たりする性格たちでもなければ、酒を飲んで憂さを晴らす気も起こらない。今世ではまだお酒を飲んだ事はないから、その発想に至らなかっただけな気もするが。

だからふて寝することを選んだのである。まだ陽は沈んではいなかったが、布団を引っ被って寝ることにした。

まだ夜ではないし、怒りは継続中だったので眠ろうとしても無理かもしれない。
そうは思ったが、案外すぐに夢の中にもダイブしていたらしい。


もうすぐダンジョンに入れる!


そう思うと、昨夜は中々眠れなくて寝不足だったせいもあったのだろう。


どれぐらい経ったのかは分からないが、窓の外がとっぷりと暗くなった頃、アメリアは目が覚めた。


ぐぅ。
ぐぅぅうう~。


寝ていただけなのだが、お腹は空くものだ。それはお腹が空くぐらい時間が経ったということでもある。


アメリアは少し考えてベッドから起き上がると、ソファの上にぞんざいに放り投げてあった鞄を手に取った。

確か鞄の中にはパンと水袋があったはず。

 通常なら部屋を出て、宿屋の食堂にでも行きたいところだが、レンが待ち伏せしている可能性もある。まだまだアメリアの怒りは継続中なのでレンの顔など見たくはない。


そうして取り出した少し固めのパンをもしゃもしゃと、時折、水袋の水を飲んでひと息ついた。

それからしばらくの間、ぼぉっ、とソファに腰掛けて窓の外を眺めていると、気持ちが落ち着いてきた。


「それにしてもレンに対する態度は、ちょっと大人げなかったかなぁ」


誰に聞かせるでもなく、口から出てきた言葉にアメリアは心の中で引っかかるものを感じた。が何なのかは分からなかったけれど。

実のところ、アメリアはラクスに入国し、ダフの街に近付いてきた頃にレンの様子がおかしい事に気付いていた。

だって普段とは違って落ち着きがなくなって、ちらちらとアメリアの方を何度も見ていたのだから。

何か言いたいことがあるのなら、さっさと言えば良いのに。


アメリアとしてはそんな風に思っていたのだが、そうして冒険者ギルドに着いてみれば、ダンジョンは何年も前から立ち入り禁止になっていたと受付嬢が言うではないか!

アメリアが少々鈍くても流石に分かってしまう。

レンはを知っていたのだ、と。

だからこそアメリアは怒った。知っていて黙っていたのだから、レンはアメリアに嘘をついた、ということになる。


 レンとはまだ数ヶ月の付き合いで、最初こそ最悪な出会いではあったものの、レンの事は信用していた。

だからこそ、一緒に旅をする気にもなったのだ。いくらアメリアの指導担当者だったとしても、信用のおけない人と旅をする気になんてなるわけがない。

信用していたのになぁ。


 しかし、よく考えてみれば、宿屋に着くまでにレンの話を聞こうとしなかった自分の態度も良くなかったと気付いた。

『今日は良い宿に泊まろうか?』、『この街は飯が美味しいらしい』などと、アメリアの神経を逆撫でするような言葉ばかりがすぐ側から聞こえてきた。けれどレンは『すまん!悪かった。騙すつもりは・・・』、『宿に着いたらちゃんと説明するから』というような言葉も最初に言っていたような気もする。

だけどアメリアが聞く耳を持たず、無視を続けていたからレンは、アメリアの気を引くような言葉を口にしたのではないだろうか。


うわぁ~。これは駄目だ。

 ダンジョンが立ち入り禁止になっていたのは事実だが、レンの話を聞こうとしなかったのは良くない。だって、レンはアメリアに対して、何かを言おうとしていたじゃないか。


それに対してアメリアは、宿屋に着くまでの間、レンの言葉に一切耳を貸さなかった。そしてレンの手から鍵を引ったくるようにしてそのまま部屋に引き篭もったのだ。


私はなんて子どもっぽい真似をしてしまったのだろう。


そう思った途端にアメリアはふと気付いた。先ほどの心の中の引っかかりが何であったのか、を。


大人げない?

子どもっぽい真似?


アメリアはまだ16歳だ。
この世界では大人として扱われることもあるのだろうが、前世ではまだ子ども扱いされるような年齢だ。


それが8歳も年上のレン相手に、大人げない?子どもっぽい真似をした?


何を言っているのだ。事実、アメリアは大人未満の子どもだったじゃないか。


それを自覚した途端、またもアメリアは気付いてしまった。



あれ?私、もしかして実年齢に精神が引っ張られている!?



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ここまでお読み下さりありがとうございます。

「いいね」やエールでの応援もいつもありがとうございます。
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