元虐げられた公爵令嬢は好きに生きている。

しずもり

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レンとリアの旅 〜過去編〜

リア、怒る

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「レンの嘘つき!!」

「ちょっ、ま・・・」

アメリアはそう言うと、レンの目の前で部屋の扉を大きな音を立てて閉めた。


アメリアは今、非常に怒っている。
現代風に若者言葉で言うと、『激おこ』な状態といえる。

だが、アメリアは前世の記憶持ちではあるが、そこそこ長生きしていたので若者言葉など知らない。なので現在のアメリアの状態を本人が言葉で表すなら『怒り心頭』と言ったところだろうか。


さて、何故、アメリアがこのように怒っているのかといえば・・・。


ダンジョンに行こう!


レンのその言葉がと怒っているのだ。

いや、確かにレンからしてみれば、リアに堂々と告白してきたレインと、今はまだ告白された事に気づいていないリアを物理的に引き離す為の、咄嗟に口から出てきた言葉だった。


だが、決して嘘をついた訳でも、嘘を吐こうと思った訳でもない。
ただ、隣国ラクスにあるそのダンジョンが数年前から立ち入り禁止になっている事をうっかりと忘れていただけなのだ。


ティモテ王国から乗り合い馬車で二週間かけて、ダンジョンのある街ダフに到着する頃になって、ようやくレンは『あれ?ダフのダンジョンは確か・・・』と思い出した次第である。

この時点でレンは『もしかしたら・・・』と、リアに言うべきだったのだ。だがレンは考えた。

乗り合い馬車に他の乗客が乗っている状態で、その話を持ち出すのは危険だ、と。

この二週間。アメリアは大層浮かれていた。

『こんなに上機嫌なリアは初めてだ。可愛いな』

レンから見てもアメリアが浮かれているのが分かるほど、アメリアはダンジョンに行くことを楽しみにしていた。

 元々、アメリアはディバイン公爵家実家を出たら色々な国を旅してみたいと、思っていたのだ。

最初は、ほとぼりが冷めるまで隣国で冒険者になって資金を稼げれば、程度の気持ちだった。

だが冒険者という職業は意外と楽しかった。

だって冒険者ギルドに貼られた依頼書は、誰かが困っているから出したもの。
魔物退治は害獣駆除だ。

そう考えると、これは立派な人助けというものではないだろうか?

人助けが出来てお金も稼げる。

これぞやり甲斐のある職業ではないか。


普通は人助けをしたことを誇りたいのなら、無報酬でやるべきでは?

などと誰かに言われたとしてもアメリアが動じることはないだろう。


だって、愛があってもお金が無ければ生きてはいけないでしょう?


アメリアは人生経験は豊富なのである。前世での話だが。


どんなに綺麗事を言ったって、生きていくにはお金が必要であることは事実である。いや、真実である。

そう思っていたアメリアだが、同時に" ダンジョン "という未知なる世界に興味津々だったのだ。

 だって、ダンジョンとの中に入ったら、森があったり川や湖があったりするダンジョンもあるらしい。太陽のようなものまであるダンジョンもあるのだとか。
その上、色々な魔物がいるだけでなく、ダンジョン内で倒すと魔石だかドロップアイテム以外はダンジョンに吸収されるらしい。


何それ!面白そう!


 ディバイン公爵家の図書室で盗み読みした本や、出入りの業者に聞いた話はそう多くはなかったが、取り敢えず冒険者になろうかな。
アメリアがそう思うぐらいには以前からアメリアの興味を引いていたのがダンジョンという存在なのだ。


 アメリアとしては、ダンジョンに行くことを楽しみにしているのをレンには悟られないようにしているつもりだった。
だがレンだけでなく、乗り合い馬車に乗っている乗客全員が気づき、レンにダンジョンの話を何度もせがむアメリアの姿にほっこりしていたことをアメリアは知らない。

まぁ、それだけアメリアはダンジョンに行くことを楽しみにしていたわけだ。

 そんなアメリアに事実を告げるのはちょっと・・・いや、もの凄く勇気が要る。

それに真実を告げた瞬間に『じゃ、降りる』などと言って、いきなり馬車から降りてしまう可能性が大いにある。流石に馬車の中では暴れることはないだろうが。

一緒に旅をしているアメリアの事をよく知っているようで、まだまだ知らないことだらけだったレンは、この事で『保護者不要!』と言い出されるのではないか、と不安になっていた。

レンからしてみれば、こじつけともいうべき理由で強引にアメリアに付き添っているという自覚はある。
あるからこそ後ろめたくもあり、ダンジョンが立ち入り禁止になっている事に気付いても言い出しにくかったのだ。

それこそ、もしかしたらダンジョンへの立ち入りが再開されている可能性もある、と微かに希望を抱いていたわけだが、所詮希望はただの願望でしかない。


ダフの街に着いて、スキップをせんばかりに小走りで冒険者ギルドに向かうリアは可愛かった。
大変に可愛いらしいのだが、流石のレンも今は処刑台へと向かう罪人の気分であった。


『は!?うちんとこのダンジョンなんて、とっくの昔に立ち入り禁止になってますけど?冷やかしなら帰ってくれない?』


ギルドの受付嬢のなんて冷たい言い草なのか。


『あら?ご存知なかったのですか?ダンジョンは事情があり、只今立ち入り禁止中なんですよ?』

せめて受付嬢がこのぐらいの言い方をしてくれていれば、レンが嘘つき呼ばわりされる事はなかったのではないか?

レンはつい受付嬢に責任転嫁をしたくもなるが、それもただの八つ当たりに近いもの。

受付嬢からしたら、ダンジョンが立ち入り禁止になってから、ダフの街は冒険者の流出が著しくギルドの存続が危ぶまれるほどの危機感を誰もが持っていた。

 そこへ満面の笑みで『ダンジョンにはすぐに入る事が出来ますか?』なんて、冒険者には見えない美少女に言われたら腹も立つだろう。しかも良い男連れである。
そりゃあ、冷たい言い方になってしまうのも仕方がないだろう。

まぁ、受付嬢も色々とストレスを溜め込んでの八つ当たりだった可能性もあるが。


『今日は良い宿に泊まろうか?』、『この街は飯が美味しいらしい』などとレンがあれこれと話しかけても、ギルドを出てからずっとアメリアは無言だった。

フードを被っているので表情はよく見えないが怒っている事は確実である。

そうしてなんとか良さげな宿を見つけて二つ部屋を取り、隣り合わせの部屋まで来るとアメリアはレンの手からひったくるように部屋の鍵を取った。

そして冒頭の言葉を叫んで部屋に入ってしまったのである。



ーーーーーーーーーーーーーーー


ここまでお読みくださりありがとうございます。

「いいね」やエールでの応援もいつもありがとうございます。

更新が止まっていてすみませんでした。今話より投稿を再開しますが、予定では週一回程度の更新になると思います。
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