元虐げられた公爵令嬢は好きに生きている。

しずもり

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レンとリアの旅 〜過去編〜

リアと告白 4

「えっ?」

「「「はぁっ!?」」」


アメリアの言葉に目をまんまるにして動きが止まるレインは分かるが、何故、ギルド内にいた冒険者たちがアメリアたちの会話に入ってくるのか?

「え、えっとアメリアさん。今のは・・・」


レインはアメリアよりも二つ年上だが、兄弟子であるアメリアに対していつもさん付けで呼ぶ。別に兄弟子、弟弟子だと言ったわけではないが、こういう礼儀正しいところもアメリアはレインを評価している点であった。


「ん?昨日、レンにそろそろ指導担当も終了だな、って言われてたでしょ?だから独り立ちする準備でで依頼を受けたかったんだよね?だけど一人じゃ心細いから兄弟子の私に付き合って欲しかったんだと思ったけど・・・違った?」

アメリアはレンの言葉からそう判断したのだが、どういう訳だかギルド内に居る者たちがアメリアの言葉にひどく注目しているような気がする。なんだか視線を集めている気もするし。

少しばかり自分の考えに自信がなくなってきて、最後はコテンと首を傾げながらレインに確認を取れば、初めて会った日のようにレインが置き物と化す。


あぁ、

アメリアの愛らしい表情にカッチコチに固まって思考が停止しているレインは別として、周囲に居た者たちはアメリアの『うん。いいよ』の意味をハッキリと理解した。


まぁ、そうだよなぁ~。
レインにゃ悪いが、どう見たって弟に対する姉、見ようによっちゃぁ息子の世話をする母親のような態度だったもんなぁ、リアちゃんは。

レインの方がアメリアよりも歳が上なのだが、アメリアの態度がそうさせるのか?それとも人懐っこい大型犬のような態度のレインに年長の威厳というものが感じられないのか?
年若い二人が仲良くしていても、分かりやすいレインがアメリアに惚れていると誰もが気付いていても、恋愛に発展する事はないと思ってた。だからこそアメリアの返事に皆が驚いた訳なのだが。


うん、そうか。リアちゃんは自分がレインの兄弟子だと思ってたんだぁ~。

レインの一世一代の告白は結果的に無かった事になっちまったが、取り敢えず良かった。
魔王レンの怒りは解けたよな?解けたはず。

レインの親代わりを自負していたトニーがレインのを喜んだ瞬間ーー。

「そうか!レイン、俺がもっとお前の気持ちを察してあげなきゃいけなかったんだな。俺がお前の指導担当者だったんだしな。

だがお前はもっと自信を持っていい。心配するな!お前はもう一人前の冒険者だ!」

レインの返事を待っていたアメリアの横にズイッと出てきたレンが大きな声でレインを励ましている。


流石は将来有望なレインだ。もうレンから一人前の言葉を貰っている。免許皆伝て言われたようなものだよねぇ。


羨ましい。が、兄弟子としてここは弟弟子を一番に祝福してあげる場面だろう。


「凄いね、レニー。レンにここまで言わせるなんて、レニーには本当に凄い才能があるって事だよ。お祝いに二人で依頼を受けっー」

未だレンに一人前と認められていないアメリアがさっきの話の続きをと言いかけた瞬間、横からレンの大きな手が伸びてきてアメリアの口をふさいだ。


「良しっ!今夜は男同士、お前と俺で飲み明かそう!
リア、お前は飲めないんだったな。大人しく部屋で待っていろよ」

リアは十六歳。この世界ではお酒を飲める歳なのだが、アメリアはその事実をまだ知らない。まだまだ知識の偏った世間知らずのアメリアは、前世と同じくお酒は二十歳から飲めるものだと思っている。

それでなくても目をつけられやすいアメリアを態々、危険な狼たち野郎どもばかりが居る夜の酒場へとレンが連れて行くはずがない。アメリアの無知を利用してレンがその事を訂正する事などないのだ。

レインだってまだ未成年のはずでは?

アメリアはそう思ったがそういえば、と思い出す。高校を卒業して就職する若者が多かった時代のアメリアの前世では、社会人になったらお酒は飲むもの。飲まされるもの。

歓迎会に送別会。昇進祝いに打ち上げと、兎に角、理由を付けては飲みに行った。というか行かされていたなぁ、と文字通り大昔の記憶が頭を過ぎる。

師匠レン弟子レインで、飲みに行こうというのも理解出来る。最初は乗り気ではなかったレンがレインの成長を喜び、一人前と認めたのだ。だから祝ってやりたいのだろう。


その夜、アメリアは快くレンを送り出し、自分はぐっすり寝た。レンがいつ帰って来たのかも気付かないほど熟睡していたアメリアは、翌朝、部屋の荷物をすっかり纏め、のレンに目を丸くする。


「お前の弟弟子のレインも一人前になったんだ。お前もそうなりたいんだろ?お前が早く一人前になれるように俺も協力する!

この街を出て馬車で二週間ぐらいかかる場所にダンジョンがあるのを知っているだろう?お前はまだダンジョン未経験だったよな。きっともっと強くなれるはずだ。今すぐに出発するぞ」

レンはお酒の匂いをプンプンさせているが、朝からハイテンションである。昨夜は二人で大いに盛り上がったのだろう。

随分と急な話だとは思うが、ダンジョンという言葉にアメリアも興味を持つ。

もしかしたらダンジョンを体験する事が一人前への近道なのだろうか?

レンのにすっかり乗せられて、アメリアはレインが『ダンジョンにはまだ行ったことがないです』と言っていたのを失念する。

挨拶する間も惜しい、とやる気マンマンのレンに急き立てられ、冒険者ギルドに寄る事もなくレンたちはダンジョンへと出発した。

レンが昨夜の内にトニーへは次の街へと出発する事を知らせ、宿屋の精算を済ませていた事も、もうこの街に戻って来る事はないことをアメリアは知らない。


そこそこ飲んで、酩酊状態になったレインに『もう俺がついていなくてもお前は大丈夫だ!お前が俺と同じS級冒険者になる事を俺は期待している』などと吹き込んでレインの意識を別に逸らすこともレンは怠らなかった。


レインがこれでリアのことを忘れられるのかどうかは分からない。失恋未遂でいつまでも引きずるよりも本人の為にもきっと良いはずだ。


レインは良い奴だ。リアに一目惚れしても、依頼を受けて一緒に行動している間はリアを口説く事も、好きという感情も少しも見せなかった。

レンの指導だって、厳しめの指導だったのだが、弱音を吐く事なく、真面目に取り組む姿勢にレンだって好感を持った。
レインは『冒険者になって手っ取り早く稼ぎたい』などと言う事もなければ思いもしていないだろう。

レンだってレインのことはそれなりに気に入っている。リアのことがなければ、だが。

リアがレインの告白に気付いたところで何も変わりはしないように思う。だがレインに過保護な冒険者たちが要らぬ世話を焼く可能性もある。レンに隠れてコソコソと。

まぁ、そんなのは阻止するし、後からでも協力者はシメるつもりだが、何よりもリアがレインを可愛がるのは面白くない。
リアにその気がないと分かっていても面白くないものは面白くないのだ。

だからこの機会を逃す訳にはいかない。


良しっ!次の街へと旅に出よう!!


こうしてレンの策略により二人はダンジョンを目指してこの街を出発をした。馬車で二週間かかるダンジョンのある街ダフがティモテ王国を出たところ、隣国ラクスにある事をアメリアは知らない。

レインたちに別れの挨拶が出来なかったのを悔やむアメリアに、『レインには手紙を出せばいい。アイツなら国を跨いで活躍する冒険者になるはずだ。また必ず会える』と説得されてしまう事もアメリアはまだ知らない。

そしてレンの言葉が本当になる事をレン自身も知らなかった。




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ここまでお読み下さりありがとうございます。

「いいね」やエールでの応援もいつもありがとうございます。


『リアと告白』というタイトルの割には恋愛要素ほぼ無しな話になってしまいました。
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