【 完 結 】言祝ぎの聖女

しずもり

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聖女ラヴィーナ 2

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空が白み始める頃、ツィオーニでは祭祀『言祝ぎの儀』は静謐な空気を漂わせた中、厳かに始まろうとしていた。

 祭壇には聖女たちが一年掛けて祈りを捧げ育てた言祝ぎ草の鉢が置かれている。
祭壇の対面には、一列目に王族が、二列目に主だった高位貴族の当主とその伴侶が、そして三列目には大臣たちが座っていた。

祭壇の左右の席には招待された隣国シーヴァとハヌマン帝国の王子たちとその側近及び外交官たちが、一様に難しい顔をして並び座っている。

ツィオーニ国の王太子とグラン公爵家の連盟で送られて来た『言祝ぎの儀』への招待状は、あまりに不躾なものだったからだ。

 今日の言祝ぎの儀の招待状が送られて来たのはたった一週間前だ。ツィオーニ以外の六つの国全てに送られた招待状は、宛先も婚姻していない王子宛であり、それは婚約者の有無に係らず、だった。
それもラヴィーナが知る限りの、彼女好みの容姿の王子に限定されていた。

 ラヴィーナの思惑が透けて見えるどころか、ハッキリと分かる招待状に、受け取った者たちの中にはその場で破り捨てた者もいたほどだ。
見せる価値なし、と王子の手元には届いていない招待状も数知れず。

そう、ラヴィーナは正に手当たり次第、思うままに招待した。相手の手元に、いつ届くのか?など気にせずに。

ツィオーニ国の言祝ぎの儀には、今まで他国の者が参列した例はない。

どこの国でも新年には言祝ぎの儀に似たような新年を祝う行事を行なっている。それは同じく祭祀であったり、式典であったり。
つまりはどこの国の王族でも新年は忙しく過ごしているのだ。

その上、言祝ぎの儀は新年明けて直ぐの祭祀だ。参列するには一番近い隣国シーヴァでも、ツィオーニを訪問するのに二日は掛かる。

『お互いに自国の行事を優先しましょう』というのが、暗黙のルールのようになっている事をラヴィーナは知らないし、知っていたとしてもやる事は変わらなかっただろう。


 今回、シーヴァの王族、と言っても五男だが、辛うじて婚約者の居なかった第五王子や独身の側近たちが参列しているのは単なる外交上の義理でしかない。
ツィオーニから最も遠い筈のハヌマン帝国の第四皇子とその側近、外交官たちが何故参列出来ているのかといえば、偶然シーヴァを訪問していたからである。

シーヴァには、ツィオーニのグラン公爵家の息のかかった外交官が直接招待状を持って訪問していた。ラヴィーナ好みの顔でいえば、シーヴァの第五王子が一番のお気に入りだったからだ。

そこに偶然にもラヴィーナの二番目に気に入っていたハヌマン帝国の第四皇子が滞在していたのだ。誘わない手はない。


シーヴァを訪れた外交官はラヴィーナの又従兄弟であり、ラヴィーナの性格も男の好みもよく熟知していた。そしてこの機を逃したら、公爵家のコネで手に入れた自身の外交官の地位が危うくなるだろう事も。

だから外交官は非常識である事も重々承知しながら、拝みに拝み倒し、とっておきの外交カードをチラつかせ、彼らの言祝ぎの儀への参列を実現させた。

彼らからの責めるような視線を今も感じながら気付かぬフリをして、外交官の男もまた、言祝ぎの儀に参列していた。公爵家からの外務大臣就任への後押しがあることを、期待に胸を膨らませて。


思っていたよりも国外からの参列者は少なかったわ。でも選定の儀を行うのが遅かった所為よね。


 儀式が始まる前に彼らと挨拶を交わしたラヴィーナは、それでもお気に入りの王子たちが来てくれた事に気を良くしていた。彼らのラヴィーナ見る瞳が冷めた色をしていた事に気付きもしないで。

 第四、第五と、彼らの王族としての地位は母国ではそう高くはない。だがラヴィーナが婚約者となれば話は違ってくる。何しろツィオーニの王妃になることを望まれた程のラヴィーナが妻となるのだから、夫となる男の価値も高まる筈だ。

ラヴィーナはそう信じて疑いもしない。
現実のラヴィーナへの評価が、他国では悪評しかないことにラヴィーナは気付いていないからだ。


ラヴィーナの所為で、儀式の始まる時間よりも遅れて始まった言祝ぎの儀は、今までの儀式とは全く違うものとなっていた。
例年と同じなのは祭壇に用意された言祝ぎ草だけ。

それもラヴィーナにとっては、彼女を目立たせるでしかなかった。


 本来、言祝ぎの聖女は白の衣裳を身に纏うが、祭壇の前に立ったラヴィーナの衣裳は赤色だった。それは言祝ぎの聖女の衣裳というよりは、夜会で着るドレスそのもの。当然のように、一目で高価な物と見てとれる宝飾品も身に付けている。


これには言祝ぎの儀に参列した事のある貴族や大臣たちも戸惑いを隠せない。王太子ヴァイスの両親、国王と王妃両陛下たちも表情に出さずとも、胸の内は怒りで一杯になっていた。


 突然の王太子むすこの暴走に思うところが無かった訳ではない。だが即に起きてしまった出来事を、既にミーシェを国外追放してしまった後ではどうしようもない。
グラン公爵家が狙って何かを企んでいる可能性もあるが、実際に仕出かしたのはヴァイスである。

故に王家は渋々だが、ラヴィーナのを受け入れる事にした。彼女が聖女であるということに、些か疑問に思うところもあるが、所詮は行事の一つだと割り切った。

 例年通りに言祝ぎの儀を行い、ツィオーニまで態々足を運んでくれたシーヴァとハヌマン帝国の王子とその関係者たちを丁重にもてなしてお帰り頂こう。

国王はそう考えた。

思考がやや現実逃避気味であった事には気付かずに。現実逃避すら出来ない未来が待っているとは夢にも思わず、呑気にどうもてなすべきかと頭を悩ませていた。




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ここまでお読み下さりありがとうございます。

話が長くなってしまったので二話に分ける事にしました。

のに!

後半をウッカリ消去してましたぁ(泣)

もしかしたら最終話は今日中に投稿出来ないかも知れません。(間に合わなかったら済みません)
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