【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!

しずもり

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ハッキリさせることにしました

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「えっ・・・」


「はぁっ!?お前が一緒にいただとっ?そんな嘘を申すな!」


 私の言葉に顔色を悪くして言葉を失くしたルナティア嬢とは反対に、顔を真っ赤にして大声を出すレオンハルト殿下に、私は『さて、どうしたものか』と頬に手をあてて小首を傾げる。


実は一発でレオンハルト殿下のを正す方法はあるのです。


けれどその方法が問題だわ。

出来るならば、それは最後まで切りたく無い切り札カードでもあるのよね。


だけど、国王陛下父親に甘やかされて少しばかり残念に仕上がってしまったとはいえ、八歳の記憶力ってもう少しマシじゃない?


自分でも八歳の時だ、と年齢と場所は覚えているのに、私が同伴をしていた事も記憶に残っていなければ、あんなに沢山のお付きの者が側近くに居た事も覚えていないなんてあり得るのかしら?


屋台で食べ物を買う度にお金を支払っていたのは、幼少の頃より殿下に仕えていた侍従だった筈よ?


大体、を連れて来たのは私だし、貴方が私を誘ったのすら覚えていないってどういう事なの?


まぁ、覚えていればにはなって無かったのですけれど。


「・・・殿下、お忍びとはいえ、我が国の第一王子が街に出るのですよ?

関係各所への許可を取る手続きから、当日の護衛人数に誰が同伴するのかまで、全ての記録が王宮に残るようになっています。

当然、同伴者のリストには私の名前も残されている筈ですわ。これはお調べになれば直ぐにでも事実だと証明される事です。

そして私はその時の事を詳細に覚えておりますので、殿下の初恋の相手がルナティア嬢では無い、とハッキリと断言出来ますわ」


本当にねぇ。ずっと初恋の人を想っていたのなら、あの時の外出記録を調べれば直ぐに分かった事じゃない?


まさか王族が外出する際の手続きがある事すら知らなかったのかしら?


いくら彼女ルーナに髪色などが似ていたからと言って、相手の言葉のみで事実かどうかの確認もしないなんて迂闊すぎるわ。


「そっ、そんな事、いや、私はお前の事など全く覚えていないぞ!

仮にもしお前も同伴していたとして、私がお前の事を覚えていなかったようにお前がルナティアの事を忘れているだけかも知れないだろう?」


「そ、そそそ、そうです!私もレオン様と一緒にいられる事が嬉しくて、マリエッタ様の事など視界に入っていなかっただけですわ」



・・・・自分が忘れていたのだからも忘れているだけ、と?

ルナティア嬢も便乗して、随分と私に対して不敬な発言をしていらっしゃいますわね。


私の言葉を聞いてなお、まだ嘘を突き通そうとする図太い神経は見習いたい気もしますわね。



けれど・・・。


 国王陛下並びに王族の方々に頼まれたとはいえ、この様な態度を取られ続けると、何だかもう面倒臭くて、色々とどうでもいい気がしてきましたわ。


面倒過ぎて、手っ取り早く解決したくなってきてしまったのは仕方のない事ですよね?


 この状況でも殿下はルナティア嬢の言葉を信じ、私の言葉には耳を貸さないのは、それだけ初恋の人を一途に想い続けていたという事なのでしょう。


それが相手に届かない想いだったとしても、出会った日から何年も想っていたのですから。


 だからこそ、きっかけを作った私にも責任があると罪悪感を感じてもいました。


 でもレオンハルト殿下に対する感情は無だったとしても、蔑ろにされた日々を思えば、殿下の初恋など私にはどうでもいい事に思えてきましたわね。

ですけれど、長引かせて殿下の処分が重いものになったとしたら国王陛下が嘆きますわね。



ここは一つ、ハッキリさせてしまいましょうか。


私は口元を隠していた扇子をピシリと閉じると目の前の二人にニッコリと微笑んだ。

私の様子に二人とその後ろの側近候補取り巻きたちも一瞬たじろいだけれど気にしない。

あぁ、そういえば自称王家の影ことサントス君はいつの間にか退場していますわね。
に連れて行かれたのでは無い事を祈っておきますわ。


「レオンハルト殿下、最初に私の事を『スキル無し』と呼びましたが、それは間違いです。

実は私もスキル持ちなのですよ」


私の唐突な言葉に、途端に会場中がザワザワザワと騒がしくなる。

それはそうでしょう。公爵家自らも私を『スキル無し』だと認めていたのですもの。
今更何を言っているのか?とお思いになる方々も多くいらっしゃるでしょうね。


 『第一王子の婚約者はスキル無し』というのは有名な話でしたし、だからこそ私を婚約者の座から引きずり下そうとする貴族たちや陰で蔑み嘲笑する令息令嬢もうんざりするほどいましたものね。

正直、それも本当に鬱陶しくて仕方がなかったですわ。


 だってなりたくて第一王子の婚約者になった訳ではありませんのよ?
それなのに学園で聞こえよがしに悪口や嫌味を言ってくる令嬢方の相手をするのも地味にストレスだったのよ。


 王妃様や王族の方々は、私がスキル判定を受けた翌日に、国王陛下が独断で王命を出してまでレオンハルト殿下と婚約させた裏にはと感じ取っていらっしゃったようで、いつも殿下の非礼を詫びてくれていました。


 それでも肝心のレオンハルト殿下がねぇ。
初恋の少女に夢中になり過ぎた挙句に、勘違いを利用されて性悪女に騙されるなんて、流石に呆れを通り越して怒りも湧かなかったですわ。


「はっ!?いきなり何を言い出すのだ、お前は!

お前が神殿で『スキル無し』と判定されたのは周知の事実では無いか。

しかも生活魔法しか使えない役立たずなのは学園の皆が知るところだ。

それをお前は公爵家の力を使って、魔法の実技の授業を不正に免除させているのだろうが!」


あ~、まだ言いますか。
そこまで言っちゃいますか。


 私のことは嫌いでも、物事を見極める目と考える頭は持っていて欲しかった。
この国の第一王子で多少は頼りなくても、やがて王太子となり国王となる筈だった人なのだから。


 残念王子が更に愚かな王子にまで成り下がってしまった今、果たしてを前にしてもルナティア嬢を選ぶのかしら?

それとも・・・。


「私が授かったスキルは特殊スキルだった為、秘匿扱いとなっていたのです。

 希少スキルは国への報告が必要ですが、私の場合は更に特殊なスキル故に、国への報告も限定され、王家では国王陛下しか知らぬスキルなのです」


そう言って国王陛下へと視線を向ければ、もう全てを諦めてしまったのか?陛下は鎮痛な面持ちでゆっくりと頷いただけでした。


「なっ、父上、本当のことなのですかっ!?

マリエッタが特殊スキル持ちだと何故、私に教えてくれなかったのです!

教えてくれたなら、愛せずとも『スキル無し』と蔑む事まではしなかったのに・・・」


・・・・殿下はブレませんわね。

 いや、別に愛されたいとは思ってはいませんけれど、息子の為にと父親が王命を使ってまで結んだ縁談相手に、ここまで配慮出来ない人はそうはいないのでは?


「・・・・そういう誓約だったのですよ、レオンハルト殿下。

あぁ、娘が特殊スキルを使というのならば、私もスキルを使う必要がありますね。

 娘がスキル判定を受けた時、その場に立ち会った者、国へと報告する際に携わった者、報告を受けた者全てに私が誓約魔法を掛けたのですよ。

実は私も希少スキル持ちでしてね。マリエッタのスキルを秘匿する事は、彼女を守る為にだったのです」


お父様が素晴らしい、いえ、恐ろしい笑顔を浮かべながら私の肩に手を置きました。


「はっ、誓約魔法をかけるだと?魔道具も使わずに人が誓約魔法をかける事が出来るなど聞いた事もないぞ!

娘可愛さに適当な事を抜かすな」


殿下がそう言ってしまうのも理解出来ます。

 この国に誓約魔法というモノは存在するけれど、それは魔道具を使用して作られた特殊な用紙を用いて行われるものだからです。
正確に言えば、誓約魔法が掛けられている用紙を使用した誓約書、という事になります。

「ですが、私は使のですよ、誓約魔法を。
だからこそ希少スキルであり、国へと報告されているスキルの一つなのです」


そう、お父様のスキルもとても希少なスキルだ。なんと言ってもーー。


「だがルーデンブルグ公爵、貴方は希少スキル持ちであっても『スキル無し』などと公表していないだろう。

ならばマリエッタを『スキル無し』と偽る必要だって無かったのではないか」


「殿下、人の話を聞いています?

私のスキルは希少スキルであって特殊スキルでは無いのですよ。

マリエッタは特殊スキルだけでなく属性も希少なのです。

そして極めて特殊なスキル故に、一つの魔法しか使う事が出来ないのです」


 レオンハルト殿下の態度にそろそろ我慢の限界が近づいているのか?お父様は態とらしく大きなため息を吐いてから、呆れた口調のままで言いました。お父様も物分かりの悪い殿下に苛立ちを抑えられなくなっているようです。

その気持ち、よぉ~く分かりますわ。


「フンッ。マリエッタ、そんなに勿体つけるのなら、今ここでその特殊スキルとやらを使ってみせればよかろう。

そうすれば『スキル無し』などという不名誉な言葉で蔑まれる事も無くなるのではないか」


レオンハルト殿下は振り上げた拳をもうどうして良いのか分からなくなっている状態なのかしら?

それとも私がルナティア嬢を殿下の初恋の人では無い、と言った事に苛立って我を忘れているのかも知れないわね。


まぁ、どちらでも良いですわ。
私は殿下に言われなくても、もう特殊スキルを使うと決めたのですから。


「レオンハルト殿下、私がここで特殊スキルを使えば、私が『スキル無し』では無い事の証明になるだけでなく、貴方の初恋の人がルナティア嬢ではない事の証明にもなります。

それでも宜しいのですね?」


 殿下の隣で青褪めているルナティア嬢は、私が言ったお忍びの記録が残っている発言で、己の嘘がバレてしまう事を恐れているのかも知れない。

けれどまだ謝罪も弁明もしないという事は、彼女を初恋の人と信じて疑わないレオンハルト殿下の態度に一縷の望みを懸けているのかしら。


「お前の特殊スキルとやらがどんなものでも、ルナティアがあの時の少女だと私が断言している。そしてルナティアもそれを認めているのだ。間違いなどある筈もない」


 レオンハルト殿下の言葉にルナティア嬢の肩がビクリと小さく動いた事に、睨みつけるように私を見ていた殿下は気付かなかったようですわ。


私は隣に立つお父様の顔を見上げると、お父様は大きく頷いて会場全体に届くように大きな声を出しました。


「今、この会場に居る全ての者に誓約を!

マリエッタ・ルーデンブルグ並びにテオドール・ルーデンブルグの所持スキルについて、そして今ここで起こる奇跡も含め、何人にも話す事を禁ずる!」



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