11 / 12
癒しの力
しおりを挟む
この国の唯一神である女神ルナリス様を不敬にも呼び止めたのはルナティア嬢だった。
先程まで青い顔をしてペタリと座り込んでいた彼女は、立ち上がって胸の当たりで祈るように手を組み瞳をウルウルとさせている。
「何を言っているのだ、あの阿婆擦れが。」
私の隣でお父様が小さく呟いているけれど概ね同意。阿婆擦れ、の表現は置いといて、いきなり女神様に向かって『聖女にしろ』発言はあり得ない。
「・・・・えーっと、ルナティアちゃん、、、よね?」
流石のルナリス様も戸惑い気味だ。
「きゃあっ。ルナリス様は私の事を知っていてくださったのですね。
やっぱりそれは私が特別だという事ですよね!」
この子はルナリス様の話を全く聞いていなかったのかしら?
この国の民全てがルナリス様の愛しい子だと仰っていたのに、どうしてそんなに自分の都合の良いように受け取れるの?
それにレオンハルト殿下が物凄い形相で貴女を見ていらしてよ?
もしかたらルナリス様の特別という言葉に反応しただけかも知れませんが。
「ん~、よく分からないけれど、ルナティアちゃんは聖女にはなれないわよ?」
「えぇっ!何でですかぁ?
女神様に頂いた私のスキルは癒しですよ。
それに回復魔法も使えます。
しかも見ての通り、私の髪と瞳はルナリス様にそっくり!!
これは絶対、聖女でしょう!」
ルナリス様が聖女にはなれない、と言い切っているのに、聖女だと言い募る彼女の神経の図太さにある意味尊敬してまうわよね。
あの精神力の強さは案外、陰謀渦巻く貴族社会で過ごすのに向いているかも知れないわ。
まぁ、彼女も第一王子の勘違いに便乗し彼らを騙し、こんな公の場で自分が王子の初恋の相手だと言い切ってしまったのだから、この後の事を考えたら崖っぷちよね。
その崖から落ちない為には、王族と同等の地位と権力を与えられるという聖女になる可能性に賭けるしかないのかしら?
「あのねっ、確かにルナティアちゃんはちょびっとだけ回復魔法を使えるけど、あなたの属性は水よ?覚えていないのかしら?」
ルナリス様が困った様な表情で首を傾げている。
「嘘っ!だって私のスキルは癒しだし皆が癒されるって言ってくれるものっ!
回復魔法だって使えるんだから絶対に聖女です!
もしかしたら女神の生まれ変わりかも!?」
いやいやいやっ!女神様、亡くなっていませんからっ!
今、あなたの目の前に立っていますから!
陛下っ!そろそろ兵士を呼んでこの子をここから連れ出して!
初恋に執着して人生踏み外しかけた貴方の息子が、そろそろ犯罪に手を染めそうな形相になっていますからぁ!!
本物の初恋の人に出会えてから、殿下のルナティア嬢を見る目がゴミ虫を見る目つきに変わっているような気がするのは気のせい、、、、ではない?
殿下の中では自分がルナティア嬢の女神と呼んでいた事も、記憶から消し去りたい過去の痛い過ちになっているのでしょうね。
「ふふふ、ルナティアちゃんて本当に面白~い。
あのね、ルナティアちゃんのスキルは癒しではあるけれど、あなたが考えている癒しではないの。
あなたの癒しの力は温泉と同じものよ。」
「はぁ~!?」
声に出したのはルナティア嬢だけだったけれど、心の中でそう言っていたのは私を含めここに居る者全員だったと思うわ。
今日一番の驚きを更新したんじゃないかしら?
だって癒し違い?
誰だって温泉と同じ癒しの力って何それ!って思うわよ。
神経が図太いと思われたルナティア嬢も流石に固まってしまっているわ。
「あのね。ホラッ、温泉に入ると癒される~ってなるじゃない?
あの頃、温泉にハマっていたんだけれど、でも温泉て山奥とかちょっと離れた場所にあったりして誰でもが行ける場所ではないでしょう?
だからそういう人の為にも温泉気分を味わって貰いたいなぁって思っちゃったのよねぇ。
あなたに触れられると体がポカポカして癒される人って居たんじゃないかしら?
それに温泉の効能って、腰痛とか体の疲れを取ったりとかの回復機能みたいなのがあるじゃない?
だから回復魔法もちょびっとだけ使えるのだと思うわ。
水属性でも回復系魔法が使えたりするからきっとあなたにも使えたのね。」
ルナリス様の発言に口をあんぐりと開けて固まっている取り巻きの姿が見えるけれど、ルナティア嬢に触れられて体がポカポカしたのを恋心と勘違いしてしまった、とか?
そんな馬鹿な!
そう思っていると、ヘナヘナと座り込む側近候補たちの姿が目に入る。
・・・いえ、本当に馬鹿だったみたいね。
癒しのスキルの正体が温泉だったなんて、この場で暴露されてしまったルナティア嬢には流石に同情致しますわ。
あらっ?でもまさかルナリス様のその日の気分でスキルを授けられていたのでは無いでしょうね?
そんな事を一瞬思ってしまった時にルナリス様と目が合った。
目が合ったのにスッと逸らされたのは、そう考えた事がルナリス様に気付かれたという事よね。
そして私ではなくルナリス様の方から目を逸らすという事は、、、、まさかっ!?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここまでお読み下さりありがとうございます!
そしてお気に入り登録とエールでの応援をありがとうございます。
お陰様でまだHOTランキング50位内を維持しております。
次話で完結となりますが、最終話は割とサラっとした終わりになっています。
それでは引き続き宜しくお願いします。
先程まで青い顔をしてペタリと座り込んでいた彼女は、立ち上がって胸の当たりで祈るように手を組み瞳をウルウルとさせている。
「何を言っているのだ、あの阿婆擦れが。」
私の隣でお父様が小さく呟いているけれど概ね同意。阿婆擦れ、の表現は置いといて、いきなり女神様に向かって『聖女にしろ』発言はあり得ない。
「・・・・えーっと、ルナティアちゃん、、、よね?」
流石のルナリス様も戸惑い気味だ。
「きゃあっ。ルナリス様は私の事を知っていてくださったのですね。
やっぱりそれは私が特別だという事ですよね!」
この子はルナリス様の話を全く聞いていなかったのかしら?
この国の民全てがルナリス様の愛しい子だと仰っていたのに、どうしてそんなに自分の都合の良いように受け取れるの?
それにレオンハルト殿下が物凄い形相で貴女を見ていらしてよ?
もしかたらルナリス様の特別という言葉に反応しただけかも知れませんが。
「ん~、よく分からないけれど、ルナティアちゃんは聖女にはなれないわよ?」
「えぇっ!何でですかぁ?
女神様に頂いた私のスキルは癒しですよ。
それに回復魔法も使えます。
しかも見ての通り、私の髪と瞳はルナリス様にそっくり!!
これは絶対、聖女でしょう!」
ルナリス様が聖女にはなれない、と言い切っているのに、聖女だと言い募る彼女の神経の図太さにある意味尊敬してまうわよね。
あの精神力の強さは案外、陰謀渦巻く貴族社会で過ごすのに向いているかも知れないわ。
まぁ、彼女も第一王子の勘違いに便乗し彼らを騙し、こんな公の場で自分が王子の初恋の相手だと言い切ってしまったのだから、この後の事を考えたら崖っぷちよね。
その崖から落ちない為には、王族と同等の地位と権力を与えられるという聖女になる可能性に賭けるしかないのかしら?
「あのねっ、確かにルナティアちゃんはちょびっとだけ回復魔法を使えるけど、あなたの属性は水よ?覚えていないのかしら?」
ルナリス様が困った様な表情で首を傾げている。
「嘘っ!だって私のスキルは癒しだし皆が癒されるって言ってくれるものっ!
回復魔法だって使えるんだから絶対に聖女です!
もしかしたら女神の生まれ変わりかも!?」
いやいやいやっ!女神様、亡くなっていませんからっ!
今、あなたの目の前に立っていますから!
陛下っ!そろそろ兵士を呼んでこの子をここから連れ出して!
初恋に執着して人生踏み外しかけた貴方の息子が、そろそろ犯罪に手を染めそうな形相になっていますからぁ!!
本物の初恋の人に出会えてから、殿下のルナティア嬢を見る目がゴミ虫を見る目つきに変わっているような気がするのは気のせい、、、、ではない?
殿下の中では自分がルナティア嬢の女神と呼んでいた事も、記憶から消し去りたい過去の痛い過ちになっているのでしょうね。
「ふふふ、ルナティアちゃんて本当に面白~い。
あのね、ルナティアちゃんのスキルは癒しではあるけれど、あなたが考えている癒しではないの。
あなたの癒しの力は温泉と同じものよ。」
「はぁ~!?」
声に出したのはルナティア嬢だけだったけれど、心の中でそう言っていたのは私を含めここに居る者全員だったと思うわ。
今日一番の驚きを更新したんじゃないかしら?
だって癒し違い?
誰だって温泉と同じ癒しの力って何それ!って思うわよ。
神経が図太いと思われたルナティア嬢も流石に固まってしまっているわ。
「あのね。ホラッ、温泉に入ると癒される~ってなるじゃない?
あの頃、温泉にハマっていたんだけれど、でも温泉て山奥とかちょっと離れた場所にあったりして誰でもが行ける場所ではないでしょう?
だからそういう人の為にも温泉気分を味わって貰いたいなぁって思っちゃったのよねぇ。
あなたに触れられると体がポカポカして癒される人って居たんじゃないかしら?
それに温泉の効能って、腰痛とか体の疲れを取ったりとかの回復機能みたいなのがあるじゃない?
だから回復魔法もちょびっとだけ使えるのだと思うわ。
水属性でも回復系魔法が使えたりするからきっとあなたにも使えたのね。」
ルナリス様の発言に口をあんぐりと開けて固まっている取り巻きの姿が見えるけれど、ルナティア嬢に触れられて体がポカポカしたのを恋心と勘違いしてしまった、とか?
そんな馬鹿な!
そう思っていると、ヘナヘナと座り込む側近候補たちの姿が目に入る。
・・・いえ、本当に馬鹿だったみたいね。
癒しのスキルの正体が温泉だったなんて、この場で暴露されてしまったルナティア嬢には流石に同情致しますわ。
あらっ?でもまさかルナリス様のその日の気分でスキルを授けられていたのでは無いでしょうね?
そんな事を一瞬思ってしまった時にルナリス様と目が合った。
目が合ったのにスッと逸らされたのは、そう考えた事がルナリス様に気付かれたという事よね。
そして私ではなくルナリス様の方から目を逸らすという事は、、、、まさかっ!?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここまでお読み下さりありがとうございます!
そしてお気に入り登録とエールでの応援をありがとうございます。
お陰様でまだHOTランキング50位内を維持しております。
次話で完結となりますが、最終話は割とサラっとした終わりになっています。
それでは引き続き宜しくお願いします。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
502
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる