離したくない、離して欲しくない

mahiro

文字の大きさ
2 / 25

その2

しおりを挟む
茶髪にネコ毛のような柔らかそうな髪、涼しげな瞳に整った目鼻立ち。
白いTシャツに黒のパンツを履いたその人は、高校の頃に好きだった先輩によく似ていた。
身長が高く、何頭身あるだと問いたくなるような顔の小ささは健在のようだ。


「あれ、何でお前がここに居んの?」


その人物は俺を見るなり、一瞬目を見開くもすぐにいつものポーカーフェイスに戻ってしまった。
この反応からするに、似てる、ではなく本人のようだ。
そういえば、昨日の朝に女の子たちが話していた有名人の名前って『逞生』という名前だった。


「ここが俺の働いてる職場だからっすよ、大里先輩」


大里逞生。
それがこの人の名前だ。
まさか有名人になっていたなんて知らなかった。
この人は俺が高校の頃に好きだった同じ高校の先輩で、この人が卒業するまで、いやしてからもずっと片思いしていた人だ。
男性からも女性からもモテていたこの人は、学生時代特別な人を作ることはしなかった。
周りには誰か特別な人を作るよりも仲の良い友達と遊んでいる方が楽しいと言っていたらしいが、本音は分からない。


「そう。遅くまでお疲れさん、まだ帰れねぇの?」


昔と変わらず話しかけてくるこの人に、俺も昔のように返答したいが、疲れすぎてテンションを上げられない。
昔なら『先輩もお疲れ様です!久しぶりっすね!オレはまだ仕事っすよ!』とか元気よく答えていたのだろうけど。


「まだ仕事がたんまり残ってて……それより、先輩はどうしてここに?」


「仕事だよ。ここの会議室で撮影があってな」


「こんな時間までですか?」


「そ。なかなか上手く撮れなくてさ。一人で没頭してたらいつの間にか誰もいなくなっちゃったってわけよ」


撮影って何の撮影だろうと思って、先輩の手元を見てみれば一眼レフのカメラを持っていた。
もしかして、それで何かを撮影していたのだろうか。
でも一体何を。
会議室なんてテーブルと椅子しかないけど。



「何を撮っていたんすか?」


単純に興味で問えば、先輩は人差し指を口元へ持っていき笑った。


「秘密」


「そうっすか……」


まぁ、そう簡単に情報を漏らすわけには行かないもんな。


「それよりさ、俺帰りたいんだけど何処から出りゃ良いの?」


「案内しますよ」


俺が席を立ち、ポケットから鍵を取り出すと先輩は首を横に振った。


「いや、お前が帰るときに一緒に出るから良いわ」


「え、それじゃああと4時間は帰れないっすよ」


「そんな時間まで残ってんのかよ、お前」


「はい」


何をそんなに驚いているんだか、と思いながらドアに向かえばその後を先輩がついてきた。
やっぱり扉が開いたときの香りは先輩からしたものだったか。
高校の頃もこんな風な香りだったのかもしれないけど、こんなに気にしたことはなかったのかも。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした

たっこ
BL
【加筆修正済】  7話完結の短編です。  中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。  二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。 「優、迎えに来たぞ」  でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。  

あなたが好きでした

オゾン層
BL
 私はあなたが好きでした。  ずっとずっと前から、あなたのことをお慕いしておりました。  これからもずっと、このままだと、その時の私は信じて止まなかったのです。

美澄の顔には抗えない。

米奏よぞら
BL
スパダリ美形攻め×流され面食い受け 高校時代に一目惚れした相手と勢いで付き合ったはいいものの、徐々に相手の熱が冷めていっていることに限界を感じた主人公のお話です。 ※なろう、カクヨムでも掲載中です。

闇を照らす愛

モカ
BL
いつも満たされていなかった。僕の中身は空っぽだ。 与えられていないから、与えることもできなくて。結局いつまで経っても満たされないまま。 どれほど渇望しても手に入らないから、手に入れることを諦めた。 抜け殻のままでも生きていけてしまう。…こんな意味のない人生は、早く終わらないかなぁ。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

記憶の代償

槇村焔
BL
「あんたの乱れた姿がみたい」 ーダウト。 彼はとても、俺に似ている。だから、真実の言葉なんて口にできない。 そうわかっていたのに、俺は彼に抱かれてしまった。 だから、記憶がなくなったのは、その代償かもしれない。 昔書いていた記憶の代償の完結・リメイクバージョンです。 いつか完結させねばと思い、今回執筆しました。 こちらの作品は2020年BLOVEコンテストに応募した作品です

君の恋人

risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。 伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。 もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。 不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。

花いちもんめ

月夜野レオン
BL
樹は小さい頃から涼が好きだった。でも涼は、花いちもんめでは真っ先に指名される人気者で、自分は最後まで指名されない不人気者。 ある事件から対人恐怖症になってしまい、遠くから涼をそっと見つめるだけの日々。 大学生になりバイトを始めたカフェで夏樹はアルファの男にしつこく付きまとわれる。 涼がアメリカに婚約者と渡ると聞き、絶望しているところに男が大学にまで押しかけてくる。 「孕めないオメガでいいですか?」に続く、オメガバース第二弾です。

処理中です...