離したくない、離して欲しくない

mahiro

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その13

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先輩の有能さに浸りながら、サイドテーブルにノートパソコンを広げ仕事をしていたら珍しくこんな遅い時間にメールが届いた。


『久しぶりだな、笠原。
もしかしなくてもお前の家に大里行っただろ。
御愁傷様、めんどくさいことに巻き込まれないように気を付けろよ。
もう遅いかもしれないけどな。
仕方ねぇから愚痴は聞いてから、何かあったら連絡しろ。 望月』


久しぶりに望月先輩からメール届いたことに感動しながら返答を考えた。


『望月先輩、お久しぶりです。
先輩の読み通り大里先輩は俺の家にいます。
何か起きたら連絡させて貰いますので、その際はお願いしますよ』


と返答した所で、先輩が風呂から上がってきたのだが、ダサい筈のTシャツがお洒落に見えるのは何故だろう。
髪もまだ乾ききっておらず、額に流れる汗が演出に見え水も滴る良い男、というタイトルの写真が出てもおかしくない容姿の良さに同じ男の俺が同じ状態になっても誰も購入しないし、シャツのダサさに望月先輩辺りから『ないわぁ』とか言われそうだ。


「何、まだ寝てねぇの?もしかして腹減った?」


「まだ仕事残ってるんで、それやってから寝る予定っす。夕食は仕事しながら食べたんで大丈夫です。先輩こそもしかして腹減りました?」


「いや、俺も打合せしながら食べてきたから腹減ってねぇな」


よっこいしょ、とベッドに腰掛け、肩にかけていたタオルで頭を拭いている先輩を背にして、ノートパソコンで仕事を始めた。
あれ、もしかした寝るのにパソコンの明かりが邪魔か?


「先輩、ベッド使って眠ってください。俺はまだ暫く仕事してから床で寝ますんで」


パソコンの向きを逆にしようとした所で、先輩に止められた。


「ベッドはありがたく借りるが、パソコンの向きはそのままで良い。気にせず仕事して早く寝ろよ」


ポンポンっと頭を軽く叩かれた。
きっと、ここで先輩が断れば譲り合いが発生して時間が削られることが分かっているから、借りることをすんなり受け入れてくれたんだよな、きっと。
自分のことで精一杯の筈なのにここまで気を遣えるとか、流石だな。
これが俺と先輩の差だと思う。
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