カランコエの咲く所で

mahiro

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村には上層部の人でもあまり知られていない場所に地下牢がある。
頑丈な鉄格子で囲まれた牢屋の前には整った顔を微塵も動かさずに中を見つめるゲルハルト先輩の姿があった。
両腕と足を組みながら、ただ無表情に奥を見つめる姿からは何を考えているのか全く読むことが出来ない。


「………お疲れ、ヨーゼフは?」


一瞥もせずに声をかけてくるあたり、足音で私が誰だか分かったようだ。


「私の空間で特訓中です」


「そ。相変わらず過保護なことで」


「自分でもそう思います」


ゲルハルト先輩の横に立ち、牢の中を見てみれば椅子に座ったまま動かない私の姿をした誰かとヨーゼフに似た誰かがいた。
目は何処か遠くを見つめているようにも見えるが、どうやら視線が定まっていないようにも見える。
本人の意思とは関係なく、強制的に脳から情報を絞り出しているのだから、身体は脱け殻のような状態に近いのだろう。
空いている口からは涎が垂れ、私にそっくりな顔が間抜けずらをしているのはどうにかならないのかと思う。
ヨーゼフに限っては顔は似ているかもしれないが、もっと引き締まった顔をしているしこんな間抜けな顔など見たことがない。


「顔が怖いことになってるぞ、エクベルト」


「先輩だって自分とイヴさんによく似た人物を作られてアホ面さらしていたら腹も立つでしょ」


チラッと私を見たかと思えば、また牢屋の中へと視線を戻したゲルハルト先輩は眉を僅かに動かした。


「……そうだね。俺と同じ顔が二人も居たら嫌だな」


イヴさんのことはノーコメントということか。
つい最近まで、観察対象であったイヴ君も偽者だと思っていたから答えにくいのだろうか。


「イヴさんは今どうされているのですか?」


「ジョゼに任せてきた。これが終わったら俺も合流する予定だよ」


これと指差したのは牢屋の中で、ゲルハルト先輩は疲れたように溜め息を吐いた。


「はぁ、疲れた」


「お疲れ様です。結局、彼らの目的はイヴさんだったんですか?」


「イヴもそうだけど、ヨーゼフも関係しているみたいだし、魔法も関係してるみたいでね」


「ヨーゼフも?」


思わず顔をしかめれば、ゲルハルト先輩は私の様子に呆れながらも頷いた。


「そ。その他の理由もあるみたいでそれは今調べてる所」


「…………もしかして、その理由の中にノラン一族が全員亡くなっていることも関係していたりするのでしょうか」

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