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この世界に来てからすぐにフランさんと出会い、この世界のことや能力について教えて貰った。
あるとき、何がきっかけか思い出せないが、俺がポロっと、言うつもりなんてなかったのに過去にあったことをフランさんに漏らしたことがある。
誰にも漏らしたことのないそれは一度漏れてしまえば止める術がなく、気が付けば全て吐き終えていた。
フランさんは何を言うわけでもなく、ただ黙って話を聞いてくれ、話し合えたときには俺の頭を撫でてくれていた。
「…………キヨっていう能力者を知っているか」
俺の話を全て聞いたフランさんはいきなりそう訊ねてきた。
そのときの俺はフランさんしかこの世界で知っている人はおらず、キヨさんのこともムシューニさんのことも知らなかった。
「いえ、知らないです」
「そうか。今のアレシアの話を聞くにキヨという能力者とアレシアの先輩ってのが似てるかもしれない」
「え」
そのときはそんな馬鹿なぁと思っていたのだが、フランさんに連れられムシューニさんの所へ集められたとき自分の目を疑った。
先輩が、失ったと思った先輩が目の前にいると錯覚するほどそっくりなキヨさんがそこにいたのだ。
一瞬、息が、心臓が止まったかと思った。
思わず先輩?と訊ねたくなるが、俺を見て首を傾けるキヨさんにあ、この人はあの人ではないのだと実感した。
「…………アレシア、行くぞ」
足を止めた俺の手をフランさんが掴み、室内へと連れて行かれた。
それがなければきっと………。
俺はその場から逃げ出していたかもしれない。
あるとき、何がきっかけか思い出せないが、俺がポロっと、言うつもりなんてなかったのに過去にあったことをフランさんに漏らしたことがある。
誰にも漏らしたことのないそれは一度漏れてしまえば止める術がなく、気が付けば全て吐き終えていた。
フランさんは何を言うわけでもなく、ただ黙って話を聞いてくれ、話し合えたときには俺の頭を撫でてくれていた。
「…………キヨっていう能力者を知っているか」
俺の話を全て聞いたフランさんはいきなりそう訊ねてきた。
そのときの俺はフランさんしかこの世界で知っている人はおらず、キヨさんのこともムシューニさんのことも知らなかった。
「いえ、知らないです」
「そうか。今のアレシアの話を聞くにキヨという能力者とアレシアの先輩ってのが似てるかもしれない」
「え」
そのときはそんな馬鹿なぁと思っていたのだが、フランさんに連れられムシューニさんの所へ集められたとき自分の目を疑った。
先輩が、失ったと思った先輩が目の前にいると錯覚するほどそっくりなキヨさんがそこにいたのだ。
一瞬、息が、心臓が止まったかと思った。
思わず先輩?と訊ねたくなるが、俺を見て首を傾けるキヨさんにあ、この人はあの人ではないのだと実感した。
「…………アレシア、行くぞ」
足を止めた俺の手をフランさんが掴み、室内へと連れて行かれた。
それがなければきっと………。
俺はその場から逃げ出していたかもしれない。
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