65 / 65
65
しおりを挟む
「アシル」
「何だ」
いつもよりも顔の赤いアシルの横顔を見ながら、ライトは思った。
迷うくらいなら言ってしまえと。
「俺もアシルのこと、好きだぞ。勿論、恋愛的な意味で!」
「はぁ?!」
それていた顔が正面に戻され、信じられないとアシルは目を見開いていた。
「お前、それ本当か」
「おう?嘘なんて言ってないぞ?」
疑うのかと首を傾けながらアシルに訪ねれば、首を横に振られた後に一回り大きな胸の中にライトは閉じ込められた。
爽やかな香りに包まれ、目を閉じればライトと同じくらい心臓が鳴り響いているのが聞こえてくる。
その音が何故か落ち着き、聞き耳を立てるようにそこへ顔をくっつけた。
「………兄弟揃って同じ道を辿ることになったな」
「ホントだな!何だか仲間になったみたいで嬉しい」
今まで自分と同じ様な仲間がいなかっただけに、ライトは喜び口角を上に上げた。
そんなライトの背中を撫でながらアシルは天井を見上げた。
アシルにとって、これまでの人生、ライトのーーー時期当主のためのものであったと言っても過言ではない。
その為だけに努力し、その為だけに存在していた。
ライトが逃亡したときなど、捨てられたのではないかと錯覚に陥ったものだ。
優秀だと言われ続けた己から敗けを認めて逃げるならまだしも、そうではない形で逃げられたのは初めてだった。
見つけて、時期当主として戻ってきたときのライトは何処か物静かで、自己主張も少なく表情も乏しく見えた。
他人に興味など一切示さないのに、警戒心だけは強く側にいる人物全てを警戒しているようだった。
それは常に側にいるアシルだって例外ではなく、ライトにとっては警戒すべき人物であった。
それから暫くたった頃だっただろうか。
少しずつではあるが、ライトの表情が和らいできているように見えた。
それは僅か過ぎて他の人物には気付かれないと思うが、四六時中側にいるアシルには分かった。
それから更にときが経過した頃には、明るく受け答えをするように変化していた。
まだ完全ではないけれど、ライトにとってここは安らげる場であるのだと思ってくれるようになったのではと安心していた。
が、アシルが嫌々お見合いの手紙やらを持っていったあの日から逆戻りしてしまったわけだが。
結局のところ、こうして両思いとなり、メイソンやイザヤ同様恋人同士になるなんざ、誰も予想していなかっただろうが、これもひとつのつながりなのだろう。
奇跡ともいえるほど、長生きしたライトとイザヤは永遠を共にする者たちとともにこれからも生き抜いていく。
おわり
ここまでお付き合いいただきました皆様へ、深く感謝申し上げます。
拙い文章に関わらずお付き合いいただき、感謝の言葉しかございません。
また次回作も作成を予定しておりますので、そちらの方でもお付き合いいただけますと光栄にございます。
この度もありがとうございました。
今後ともよろしくお願いいたします。
「何だ」
いつもよりも顔の赤いアシルの横顔を見ながら、ライトは思った。
迷うくらいなら言ってしまえと。
「俺もアシルのこと、好きだぞ。勿論、恋愛的な意味で!」
「はぁ?!」
それていた顔が正面に戻され、信じられないとアシルは目を見開いていた。
「お前、それ本当か」
「おう?嘘なんて言ってないぞ?」
疑うのかと首を傾けながらアシルに訪ねれば、首を横に振られた後に一回り大きな胸の中にライトは閉じ込められた。
爽やかな香りに包まれ、目を閉じればライトと同じくらい心臓が鳴り響いているのが聞こえてくる。
その音が何故か落ち着き、聞き耳を立てるようにそこへ顔をくっつけた。
「………兄弟揃って同じ道を辿ることになったな」
「ホントだな!何だか仲間になったみたいで嬉しい」
今まで自分と同じ様な仲間がいなかっただけに、ライトは喜び口角を上に上げた。
そんなライトの背中を撫でながらアシルは天井を見上げた。
アシルにとって、これまでの人生、ライトのーーー時期当主のためのものであったと言っても過言ではない。
その為だけに努力し、その為だけに存在していた。
ライトが逃亡したときなど、捨てられたのではないかと錯覚に陥ったものだ。
優秀だと言われ続けた己から敗けを認めて逃げるならまだしも、そうではない形で逃げられたのは初めてだった。
見つけて、時期当主として戻ってきたときのライトは何処か物静かで、自己主張も少なく表情も乏しく見えた。
他人に興味など一切示さないのに、警戒心だけは強く側にいる人物全てを警戒しているようだった。
それは常に側にいるアシルだって例外ではなく、ライトにとっては警戒すべき人物であった。
それから暫くたった頃だっただろうか。
少しずつではあるが、ライトの表情が和らいできているように見えた。
それは僅か過ぎて他の人物には気付かれないと思うが、四六時中側にいるアシルには分かった。
それから更にときが経過した頃には、明るく受け答えをするように変化していた。
まだ完全ではないけれど、ライトにとってここは安らげる場であるのだと思ってくれるようになったのではと安心していた。
が、アシルが嫌々お見合いの手紙やらを持っていったあの日から逆戻りしてしまったわけだが。
結局のところ、こうして両思いとなり、メイソンやイザヤ同様恋人同士になるなんざ、誰も予想していなかっただろうが、これもひとつのつながりなのだろう。
奇跡ともいえるほど、長生きしたライトとイザヤは永遠を共にする者たちとともにこれからも生き抜いていく。
おわり
ここまでお付き合いいただきました皆様へ、深く感謝申し上げます。
拙い文章に関わらずお付き合いいただき、感謝の言葉しかございません。
また次回作も作成を予定しておりますので、そちらの方でもお付き合いいただけますと光栄にございます。
この度もありがとうございました。
今後ともよろしくお願いいたします。
63
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
天使の声と魔女の呪い
狼蝶
BL
長年王家を支えてきたホワイトローズ公爵家の三男、リリー=ホワイトローズは社交界で“氷のプリンセス”と呼ばれており、悪役令息的存在とされていた。それは誰が相手でも口を開かず冷たい視線を向けるだけで、側にはいつも二人の兄が護るように寄り添っていることから付けられた名だった。
ある日、ホワイトローズ家とライバル関係にあるブロッサム家の令嬢、フラウリーゼ=ブロッサムに心寄せる青年、アランがリリーに対し苛立ちながら学園内を歩いていると、偶然リリーが喋る場に遭遇してしまう。
『も、もぉやら・・・・・・』
『っ!!?』
果たして、リリーが隠していた彼の秘密とは――!?
悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。
みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。
男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。
メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。
奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。
pixivでは既に最終回まで投稿しています。
偽物勇者は愛を乞う
きっせつ
BL
ある日。異世界から本物の勇者が召喚された。
六年間、左目を失いながらも勇者として戦い続けたニルは偽物の烙印を押され、勇者パーティから追い出されてしまう。
偽物勇者として逃げるように人里離れた森の奥の小屋で隠遁生活をし始めたニル。悲嘆に暮れる…事はなく、勇者の重圧から解放された彼は没落人生を楽しもうとして居た矢先、何故か勇者パーティとして今も戦っている筈の騎士が彼の前に現れて……。
第十王子は天然侍従には敵わない。
きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」
学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。
ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね
ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」
オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。
しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。
その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。
「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」
卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。
見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……?
追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様
悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません
月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない?
☆表紙絵
AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる