氷の魔術師(引きこもり)のはずなのに、溺愛されても困ります。

入海月子

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救援要請②

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「父上が? 早く言え!」

 師団長は怒鳴ると、伝令が差し出した伝書を奪い取る。
 伝書は、対になる魔方陣を描いた紙に特殊インクで指示を書き込み、送る側が魔力を込めると、受け取る側の紙に内容が浮き上がるという仕組みだ。
 そうやって遠隔地でも素早い意思の疎通が図れたが、その紙もインクも高価な割に使い捨てるしかなく、大きな魔力が必要となるので、こうした緊急事態にしか使われていなかった。
 師団長が伝書に目を通している隙に、サナリが伝令に迫る。
 聞き捨てならない地名だったからだ。
 
「アルザラス地方のどこなんですか!?」

 彼女の勢いに押されて、戸惑いながらも伝令が答える。

「ガルス地方との境の森に現れたそうだ」
 
 頭の中に地図を思い浮かべて、それならまだなにもない荒野の部分だとサナリはほっとする。
 でも、魔物の数も移動速度もわからないから、油断はできないと思い直す。

「魔物の数は? 近くの村……エデル村に到達するのはいつ頃になりそうなんですか?」
「それがかなりの数で、スタンピードと言ってもいいほどの数とスピードで暴走しているらしい。その村に関しては書いてなかったからわからない」

 それを聞いて、サナリは蒼白になる。
 伝令とのやり取りを聞いていた師団長はにやりと笑った。

「これは本格的にシーファの補給をしないとな」
「そんな! シーファを連れていくつもりですか!?」
「当たり前だ。お前も見ただろ? シーファがいないと大幅な戦力ダウンだ。スタンピードが起こってるとしたら、アルザラス地方を守り切れないかもしれないぞ? いいのか?」

 そう言われて、サナリは唇を噛んだ。
 いいわけないが、シーファに無理をさせるのも嫌だった。
 
「シーファも行くって言うさ。お前のためなら」

 意味ありげに目配せして師団長が言う。
 サナリもそう思うが、自分たちは師団長が勘繰っている関係ではないと視線を逸らした。
 彼女から伝令に視線を動かすと、魔術師団長は指示をした。

「父上にご指示通り明朝出発すると伝えてくれ。あと、皆に準備するように通達しろ」
「かしこまりました」

 伝令が駆けていく。
 それを見送って、師団長は改めてサナリに目を向けた。

「シーファのところに行く。テントはどこだ?」

 連れていきたくなかったが、仮にもここでの最高責任者である彼に逆らうことはできず、サナリはしぶしぶ自分たちのテントに案内した。それにシーファのテントの場所など、抵抗したとしても誰かに聞けばすぐわかることだ。
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