雪山での一夜から始まるような、始まらないようなお話。

入海月子

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【オフィス編】

酔っぱらい①

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(あれ~? どうやってかえってきたんだっけ?)

 ポーッとしていると、いつの間にか現れた進藤がグラスを差し出してきた。

「ほら、夏希、水飲め」
「あれ? しんどー、どうしてうちにいるの?」
「バカ、ここは俺んちだ。っていうか、なにお持ち帰りされそうになってるんだよ!」

 不機嫌そうな進藤にバカとか言われて、ムッとする。

「おもちかえり? なにを? あ、あいす、まだたべてるとちゅうだったのに!」
「お前、まだ酔ってるな? 夏希は今後、飲酒禁止! どうしても呑みたかったら、ここで呑め」
「ここで?」

 言われて、周りを見回す。
 よく見たら、自分の部屋じゃない。

「あぁーーっ、ここ、しんどーの部屋じゃない!」
「だから、そう言っただろ」

 あきれたように言う進藤の顔を両手で挟んで引き寄せた。

「ダメじゃない! かのじょいるくせに、私とはいえ、おんなのこを連れこむなんて!」
「はあ?」
「だーかーらー、つきあってる子がいるのに、ちがうおんなのこをへやに入れたらダメってこと!」

 私はわかりやすく説教してやった。
 進藤は丸っこい目をさらに真ん丸にしている。
 まだわからないみたいだ。

「にぶいなー。わかんないかなあ? 私だったらカレのへやにおんなのこが来てたらイヤだわ。だから、かえるね」

 立ち上がろうとしたら、進藤が私の両肩に手を置いて、もう一度、座らせた。

「なによ?」

 ヤツを見上げると、見たこともない怖い顔をしていた。

「誰が誰と付き合ってるって?」

 すごく低い声で聞かれて、ビクッとする。
 
(なんかすごくおこってる?)

 進藤が暗い瞳で顔を近づけてきた。

「なあ、俺が誰と付き合ってるって?」
「よ、よしいさん」
「誰がそんなことを!?」
「みんな言ってるよ? それにこないだおもちかえりしたんでしょ?」
「はあ? 誰を?」
「よしいさんを」
「……ふっざけんなよっ!」

 突如、進藤が怒鳴り、びっくりする。
 それだけじゃなく、進藤がソファーを叩いたから、驚いて、身をすくめた。

「お前、俺をそんなヤツだと思ってたのか! ほいほい女を乗り換えるヤツだと? それに、お前……俺が吉井さんと付き合ってもなんとも思ってないんだな」

 クソッとまた進藤がソファーを殴った。
 彼がなにをそんなに怒っているのか、わからない。

「お前はやっぱり身体だけだったんだな。あんなに好きだって言ったのに。くそっ、お前は酔うと誰でもいいのかよっ! 俺が欲しかった言葉を簡単に立石さんに言いやがって!」
「たていしさん?」

 なんでそこで立石さんが出てくるのかわからない。
 わかるのは、進藤がとても傷ついた顔をしてること。
 なにか私がやらかしてしまったということ。
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