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こんなのずるい④
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「宇沙ちゃん? 気に入らなかった?」
木佐さんが眉を寄せたので、慌てて表情を取り繕う。
せっかく用意してくれたのに、申し訳ないと思った。
「いいえ! びっくりしただけです。すごく綺麗でかわいいです。ありがとうございます」
そう言ったのに、木佐さんはなぜかためらう素振りで窺うように私を見つめた。
めずらしく自信なさげな顔をしている。
「あのさ~、あとに残るものもあるんだけど?」
「え?」
木佐さんは私の手を取ると、小さな箱を乗せた。
思わずしげしげと彼と箱を交互に見つめてしまう。
「優秀な俺は抜かりがないんです。ね、開けてみて」
笑って言った木佐さんの顔はいつもの余裕を取り戻していて、さっきの表情は気のせいかもと思った。
(そっか。さすが営業部のエース。こういう気づかいが売上トップを保つ秘訣なのね)
妙に納得して箱を開けると、ムーンストーンのペンダントが出てきた。
カボションカットのコロンと丸い形がかわいらしい。
「誕生石がガーネットだって知ってるんだけど、こっちのほうが宇沙ちゃんに似合うかなと思って」
(私を想って選んでくれたの?)
うれしくて、でも、疑わしくもあり、にっこり笑う木佐さんを見つめる。
「こんな高そうなものもらえません……」
「君がもらってくれなかったら、誰がもらってくれるんだよ」
「いくらでもほしがる人はいるでしょ?」
「これは君のために買ったのに。君がつけてくれないなら……仕方ない。俺がつけるよ」
木佐さんはペンダントを取り上げ、自分の首に巻きつけた。でも、鎖が足りなくて、喉に食い込んでいる。
「やだ、なにやってるんですか!?」
精悍な木佐さんの首にミスマッチなかわいいムーンストーンを見て、思わず吹き出した。
「ようやく笑ってくれたね。ほら、俺は付けられないから、宇沙ちゃんが付けて」
木佐さんが私の首もとに手を回し、ペンダントを付けてくれる。
私にはちょうどいい長さで、ムーンストーンはタートルネックの下にすんなり納まった。
「うん、やっぱり似合う」
満足げに木佐さんが目を細めた。
(あぁ、もうだめだ)
その笑顔を見ていると胸に重しが乗ってるように苦しくなって、視線を落とす。
(もうだめだ。これ以上は耐えられない……)
胸が痛くて苦しくて、この想いを開放したくなった。
私は意を決して顔を上げた。木佐さんの目を見て、口を開く。
「木佐さん、私……」
彼は優しい表情で聞いてくれている。
そんな目で見られると勇気がくじけそうになる。
でも、言わなきゃ。ちゃんとしたい。
「私、石原係長と別れたんです。だから……」
私は好きになってしまった人の顔を見つめた。
木佐さんは片眉を上げて驚きは示したけれど、私の言葉を待ってくれている。
「だから、この関係を終わりにしてください」
木佐さんが眉を寄せたので、慌てて表情を取り繕う。
せっかく用意してくれたのに、申し訳ないと思った。
「いいえ! びっくりしただけです。すごく綺麗でかわいいです。ありがとうございます」
そう言ったのに、木佐さんはなぜかためらう素振りで窺うように私を見つめた。
めずらしく自信なさげな顔をしている。
「あのさ~、あとに残るものもあるんだけど?」
「え?」
木佐さんは私の手を取ると、小さな箱を乗せた。
思わずしげしげと彼と箱を交互に見つめてしまう。
「優秀な俺は抜かりがないんです。ね、開けてみて」
笑って言った木佐さんの顔はいつもの余裕を取り戻していて、さっきの表情は気のせいかもと思った。
(そっか。さすが営業部のエース。こういう気づかいが売上トップを保つ秘訣なのね)
妙に納得して箱を開けると、ムーンストーンのペンダントが出てきた。
カボションカットのコロンと丸い形がかわいらしい。
「誕生石がガーネットだって知ってるんだけど、こっちのほうが宇沙ちゃんに似合うかなと思って」
(私を想って選んでくれたの?)
うれしくて、でも、疑わしくもあり、にっこり笑う木佐さんを見つめる。
「こんな高そうなものもらえません……」
「君がもらってくれなかったら、誰がもらってくれるんだよ」
「いくらでもほしがる人はいるでしょ?」
「これは君のために買ったのに。君がつけてくれないなら……仕方ない。俺がつけるよ」
木佐さんはペンダントを取り上げ、自分の首に巻きつけた。でも、鎖が足りなくて、喉に食い込んでいる。
「やだ、なにやってるんですか!?」
精悍な木佐さんの首にミスマッチなかわいいムーンストーンを見て、思わず吹き出した。
「ようやく笑ってくれたね。ほら、俺は付けられないから、宇沙ちゃんが付けて」
木佐さんが私の首もとに手を回し、ペンダントを付けてくれる。
私にはちょうどいい長さで、ムーンストーンはタートルネックの下にすんなり納まった。
「うん、やっぱり似合う」
満足げに木佐さんが目を細めた。
(あぁ、もうだめだ)
その笑顔を見ていると胸に重しが乗ってるように苦しくなって、視線を落とす。
(もうだめだ。これ以上は耐えられない……)
胸が痛くて苦しくて、この想いを開放したくなった。
私は意を決して顔を上げた。木佐さんの目を見て、口を開く。
「木佐さん、私……」
彼は優しい表情で聞いてくれている。
そんな目で見られると勇気がくじけそうになる。
でも、言わなきゃ。ちゃんとしたい。
「私、石原係長と別れたんです。だから……」
私は好きになってしまった人の顔を見つめた。
木佐さんは片眉を上げて驚きは示したけれど、私の言葉を待ってくれている。
「だから、この関係を終わりにしてください」
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