運命には間に合いますか?

入海月子

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私の気持ち

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 翌週は金曜日まで研修はなく普通に仕事をこなした。
 といっても三か月後にはスペインに行くので、主に引き継ぎ業務になる。
 毎日のように会って、毎晩電話をかけてきた守谷さんからは連絡はなくて、ついつい何度もスマホを確認してしまった。
 特に寝る前には鳴らないスマホに溜め息が漏れた。
(なびかないから、やっぱり嫌になっちゃったのかな)
 そう望んでいたというのに、彼のおやすみの声が聴けないともの足りなく感じるのは自分ながら勝手だと思う。
 でも、これは守谷さんの作戦かもしれないとも考えた。
 恋の駆け引き的なもので、押しまくったあとにこんなふうに引くと、あっさり釣れると思われているかもしれない。
 そういうのは好きではない。
 スペイン語の勉強をしていても、落ち込んだり憤ったりと気分は忙しかった。
 金曜日の研修は、建築家による都内の有名建築ツアーだった。
 大学教授でもある建築家が自分の設計したものを含め、解説しながら実際の建物を見て回るという贅沢なものだ。
 柴崎と一緒に解説を聞いたり質問したりと充実した時間だった。
 その間に守谷さんと洋館を見て回ったときのことが思い出され、こんな素敵な建物を彼に見せたい、一緒に見たいと考えている自分に気づいた。
(あぁ、だめだ。恋愛する余裕はないと言っていたのに、私……)
 研修が終わっても考え込んでいたら、柴崎が話しかけてきた。
「大橋、飯でも食って帰らないか?」
 同じ誘い文句でも守谷さんのときのようにときめかない。
 守谷さんと同じく好きだと言ってくれたのに。
「柴崎、ごめん。私、あなたの気持ちには答えられない」
 きっぱり言うと、彼は傷ついたようにまつ毛をふるわせ聞いてきた。
「やっぱり守谷さんが好きなのか?」
「……うん、そうみたい」
「そうか。もっと早く行動してたらなにか変わったかな?」
 柴崎が悲しげにつぶやくから、申し訳なくなって、首をかしげた。
 恋愛しないと思っていても、好きになるのは止められないし、自分でもままにならない。
 守谷さんに会う前に柴崎から告白されとしても、私がどういう反応をしていたか不確かだ。
 だから、私は素直に告げた。
「わからない」
「そっか」
「ごめんね」
 もう一度謝って、その場を離れた。

 ――私は守谷さんが好き。
 そう自覚してから、彼の声が聴きたくてたまらなくなった。
(私から電話してもいいかな?)
 いつも守谷さんからの電話だった。
 でも、今度は私から踏み出さないといけない気がした。もう遅いかもしれないけど。
 意を決してスマホを取り上げたとき、いきなり着信音がして、驚いて落としそうになった。
 相手は今頭の中で思い描いていた人だった。
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