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【番外編】
理人⑧
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その週の金曜日、終業時間に資料を提出に来た葉月の腕を掴んで捕まえた。もう一度、葉月に確認したかったのだ。その結婚相手は本当に望む相手なのか、と。
「なぁ、葉月──」
俺が言いかけたとき、突然フロアがざわついた。
総務部長の後に続いて、社長が現れた。しかも、その後には一柳までいた。
「真宮部長、ちょっといいですか?」
硬い表情の総務部長が話しかけてきた。
でも、それに答える前に、にやついた一柳が言った。
「君に機密情報漏洩の疑いがあるんだよね」
「はあ?」
総務部長が慌てて制止するのもかまわず、一柳は俺が情報漏洩をしたと決めつけた。
なにを言っているんだと呆れるが、偽の証拠が固められているようだった。
(パーティーで意味深に言っていたのは、このことか)
だが、ちゃんと調べてもらえば、無実だってわかるだろう。
そう思っていたら、一柳と結託しているような社長は、調査は必要ないと宣う。
「あるでしょう! お父様、ちゃんと調査してください!」
そばで聞いていた葉月が叫んだ。
「葉月、お前は関係ない。黙ってろ」
「関係あります! 理人さんは私の婚約者ですから! それに理人さんがそんなことするはずありません」
きっぱり宣言する葉月に頼もしさを覚える。
(ん? 待てよ。婚約者?)
俺はまだ葉月の婚約者のままなのか?
問いただしたいが、残念ながら、今はそのタイミングではない。
渋面になった社長とは対照的に、一柳は薄ら笑いを浮かべた。
「葉月さん、それがする理由があるんですよ」
「ないね。金には困っていないし、意味がない」
俺が言うと、それを無視した一柳は葉月を憐れむように見た。
「葉月さん、あなたは騙されているんですよ。この男は潰れたマミヤ工業の御曹司で、その技術を水鳥川興産に盗まれたと逆恨みしてるんです。だから、あなたや会長に近づいて、水鳥川興産にダメージを与えるチャンスを窺っていたんです」
……俺の背景を知られていたとはね。
しかし、逆恨みだの、ダメージを与えるだの、笑止でしかない。
それでも、一柳の話に、葉月の顔がだんだんうつむいていく。
「確かに、俺の親父はマミヤ工業の社長だったし、そのことを調べてはいたが、ただの好奇心だ。今さら恨んじゃいないし、情報漏洩はしていない」
正直、こいつらにどう思われようとどうでもいい。ただ、葉月に誤解されるのは不本意だ。
俺は葉月に言い聞かすように告げた。
俺の言葉に、葉月はハッと顔を上げた。
目が合う。
ひたっと見つめる瞳は俺を疑うのではなく、信じたいと言っていた。
「私は騙されていません」
静かに、しかし、強い意志を見せて、葉月が言った。
それは、凛とした表情で、こんな時なのに、うつむいてばかりいた彼女が、こうして意思表明できるようになったのをうれしく思った。
「お父様、水野さんに調べてもらいましょう。彼の会社がうちのセキュリティシステムを担当したのでしょう?」
そう言って、葉月はすぐさま電話をかけた。
「なぁ、葉月──」
俺が言いかけたとき、突然フロアがざわついた。
総務部長の後に続いて、社長が現れた。しかも、その後には一柳までいた。
「真宮部長、ちょっといいですか?」
硬い表情の総務部長が話しかけてきた。
でも、それに答える前に、にやついた一柳が言った。
「君に機密情報漏洩の疑いがあるんだよね」
「はあ?」
総務部長が慌てて制止するのもかまわず、一柳は俺が情報漏洩をしたと決めつけた。
なにを言っているんだと呆れるが、偽の証拠が固められているようだった。
(パーティーで意味深に言っていたのは、このことか)
だが、ちゃんと調べてもらえば、無実だってわかるだろう。
そう思っていたら、一柳と結託しているような社長は、調査は必要ないと宣う。
「あるでしょう! お父様、ちゃんと調査してください!」
そばで聞いていた葉月が叫んだ。
「葉月、お前は関係ない。黙ってろ」
「関係あります! 理人さんは私の婚約者ですから! それに理人さんがそんなことするはずありません」
きっぱり宣言する葉月に頼もしさを覚える。
(ん? 待てよ。婚約者?)
俺はまだ葉月の婚約者のままなのか?
問いただしたいが、残念ながら、今はそのタイミングではない。
渋面になった社長とは対照的に、一柳は薄ら笑いを浮かべた。
「葉月さん、それがする理由があるんですよ」
「ないね。金には困っていないし、意味がない」
俺が言うと、それを無視した一柳は葉月を憐れむように見た。
「葉月さん、あなたは騙されているんですよ。この男は潰れたマミヤ工業の御曹司で、その技術を水鳥川興産に盗まれたと逆恨みしてるんです。だから、あなたや会長に近づいて、水鳥川興産にダメージを与えるチャンスを窺っていたんです」
……俺の背景を知られていたとはね。
しかし、逆恨みだの、ダメージを与えるだの、笑止でしかない。
それでも、一柳の話に、葉月の顔がだんだんうつむいていく。
「確かに、俺の親父はマミヤ工業の社長だったし、そのことを調べてはいたが、ただの好奇心だ。今さら恨んじゃいないし、情報漏洩はしていない」
正直、こいつらにどう思われようとどうでもいい。ただ、葉月に誤解されるのは不本意だ。
俺は葉月に言い聞かすように告げた。
俺の言葉に、葉月はハッと顔を上げた。
目が合う。
ひたっと見つめる瞳は俺を疑うのではなく、信じたいと言っていた。
「私は騙されていません」
静かに、しかし、強い意志を見せて、葉月が言った。
それは、凛とした表情で、こんな時なのに、うつむいてばかりいた彼女が、こうして意思表明できるようになったのをうれしく思った。
「お父様、水野さんに調べてもらいましょう。彼の会社がうちのセキュリティシステムを担当したのでしょう?」
そう言って、葉月はすぐさま電話をかけた。
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