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第一章 ― 優 ―

写真同好会④

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「失礼しまーす。和田先生はいらっしゃいますか?」

 私は職員室のドアを開けて、近くにいた先生に聞いてみる。勢いで来たけど、和田先生に教わっている教科はないから、どんな先生かわからなかったのだ。

「和田先生なら歴史教官室だよ」
「歴史教官室?」
「職員室を過ぎた奥にあるよ」
「ありがとうございます!」

 和田先生は歴史の先生だったんだ。
 教官室にいるってことはえらいのかな?
 私は教えられたところに行ってみた。

 歴史教官室と書かれたドアをノックする。

「どうぞ」

 中から若めの男の人の声が応えた。

「失礼します」

 ドアを開けて中に入ると、30歳くらいの男の先生がちょっと驚いた顔をしていた。教えたことのない生徒が突然訪ねてきたからだろう。

「私、1年2組の佐伯優です。突然ですが、写真同好会を作って、写真部の設備を使いたいんです! 和田先生、顧問になってもらえませんか?」
 
 ここに来る間に思いついたことを言ってみる。写真部は無理でも同好会なら作れるかも、そうしたら、堂々とあのパソコンとプリンターを使える。

「えーっと、写真部の部室は今…」

 戸惑った顔の和田先生が口を開いた。

「あぁ、部室は遥斗先輩に使ってもらってていいです。っていうか、遥斗先輩にも同好会に入ってもらおう!」

 いい考えかも! そしたらあの部屋を占拠しててもいいんじゃない?

「遥斗を知っているのか?」
「はい。昨日知り合いました。それで、部室でパソコンとプリンターを発見して、使わせてもらいたくて」
「それでここに来たのか」
「はい!」

 和田先生は考え込むように黙って、私をしげしげと見た。

「なるほどね……。同好会を作るには3人必要だぞ?」
「3人ぐらいだったら集められます! 集めたら顧問になってもらえます?」
「まぁなってもいいが、なんにもしないぞ? カメラの知識もないし」
「ないんですか? 写真部の顧問だったんですよね?」
「なり手がいなかったから割り当てられただけだ」

 和田先生は苦笑して言った。
 なんかぶっちゃけた先生だなぁ。

「大丈夫です。形さえ整えて、あのプリンターが使えたらいいんで」
「それだったら、申請書類を用意しておくから3人集まったら書きに来い」
「わかりました。ありがとうございます!」

 話が早い先生でよかった。
 私はぺこりとおじぎをして、部屋を出た。
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