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第一章 ― 優 ―
綺麗な寝顔①
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週末、中学校のときの友達と遊んだり、河原に写真を撮りに行ったりした。
道路に自転車を停めて、土手に下りていく。
河原の桜並木は花が完全に散っちゃって、葉っぱはまだ出揃っていないという中途半端な状態で、あまり撮る気にならなかったけど、春のふんわりとした陽射しが川にキラキラ反射して綺麗だった。
青空もくっきり青ではなく、なんだかぽやぽやしているこの時期の空が好きで、私はパシャパシャと写真を撮った。
菜の花も満開で、鮮やかな黄色と緑色のコントラストが目にまぶしい。
そういえば、お弁当に菜の花のおひたしを入れたら、『菜の花って食べられるんだな』と驚いていた遥斗先輩をふいに思い出す。
ふふっ、苦味のせいか、そんなに気に入ってなかったけどね。
(明日のお弁当の具はなんにしようかなぁ)
あの重箱弁当が頭をよぎる。
今週の調査の結果、遥斗先輩は甘い卵焼きが好きらしい。でも、唐揚げは甘酢あんより醤油味が好みで、ブリの照り焼きが気に入ったようだ。
感想を求めたから、いつもお弁当箱を取りに行くと、ボソッと「うまかった。ありがとう」と言ってくれるようになって、一つだけ気に入った具を告げてくれるようになった。
大して上手じゃないお弁当の中から一生懸命お気に入りを見つけてくれているようで、ちょっと申し訳ないような、うれしいような気持ちになる。
新しい食材を入れて反応を見たい気もするし、好きなものを入れてあげたい気もする。
土日と空いたから、好きなもの尽くしにしてあげようかな。
と言っても、まだまだ遥斗先輩のことは知らないことだらけだった。
あの噂も本当なのか、確かめていない。っていうか、確かめられないよ……。
日が傾いて肌寒くなってきたので、ひとり撮影会は終わって、家に帰った。
翌朝、写真同好会の部室に行く。
「おはよーごさいます!」
元気に挨拶すると、めずらしく遥斗先輩は座って絵を描いていた。
私をチラッと見て、挨拶するように頷いた。
なんだかいつもに増して気怠げだった。
「お弁当ですよー。今日は遥斗先輩の好きなものと新作を入れましたよ!」
「あぁ、ありがとう」
先輩は、手に持っていたクロッキー帳を置いて、お弁当を受け取る。
クロッキー帳にはこの教室の風景が精密に描かれていた。鉛筆で書いているとは思えないリアルな質感。
「うわぁ、すごいうまい!」
先輩は言われ慣れているのか無表情のままで、お弁当を横に置くと、また鉛筆を持った。
「それじゃあ、また放課後に来ますね!」
私は自分の教室に向かった。
道路に自転車を停めて、土手に下りていく。
河原の桜並木は花が完全に散っちゃって、葉っぱはまだ出揃っていないという中途半端な状態で、あまり撮る気にならなかったけど、春のふんわりとした陽射しが川にキラキラ反射して綺麗だった。
青空もくっきり青ではなく、なんだかぽやぽやしているこの時期の空が好きで、私はパシャパシャと写真を撮った。
菜の花も満開で、鮮やかな黄色と緑色のコントラストが目にまぶしい。
そういえば、お弁当に菜の花のおひたしを入れたら、『菜の花って食べられるんだな』と驚いていた遥斗先輩をふいに思い出す。
ふふっ、苦味のせいか、そんなに気に入ってなかったけどね。
(明日のお弁当の具はなんにしようかなぁ)
あの重箱弁当が頭をよぎる。
今週の調査の結果、遥斗先輩は甘い卵焼きが好きらしい。でも、唐揚げは甘酢あんより醤油味が好みで、ブリの照り焼きが気に入ったようだ。
感想を求めたから、いつもお弁当箱を取りに行くと、ボソッと「うまかった。ありがとう」と言ってくれるようになって、一つだけ気に入った具を告げてくれるようになった。
大して上手じゃないお弁当の中から一生懸命お気に入りを見つけてくれているようで、ちょっと申し訳ないような、うれしいような気持ちになる。
新しい食材を入れて反応を見たい気もするし、好きなものを入れてあげたい気もする。
土日と空いたから、好きなもの尽くしにしてあげようかな。
と言っても、まだまだ遥斗先輩のことは知らないことだらけだった。
あの噂も本当なのか、確かめていない。っていうか、確かめられないよ……。
日が傾いて肌寒くなってきたので、ひとり撮影会は終わって、家に帰った。
翌朝、写真同好会の部室に行く。
「おはよーごさいます!」
元気に挨拶すると、めずらしく遥斗先輩は座って絵を描いていた。
私をチラッと見て、挨拶するように頷いた。
なんだかいつもに増して気怠げだった。
「お弁当ですよー。今日は遥斗先輩の好きなものと新作を入れましたよ!」
「あぁ、ありがとう」
先輩は、手に持っていたクロッキー帳を置いて、お弁当を受け取る。
クロッキー帳にはこの教室の風景が精密に描かれていた。鉛筆で書いているとは思えないリアルな質感。
「うわぁ、すごいうまい!」
先輩は言われ慣れているのか無表情のままで、お弁当を横に置くと、また鉛筆を持った。
「それじゃあ、また放課後に来ますね!」
私は自分の教室に向かった。
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