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第一章 ― 優 ―

綺麗な寝顔③

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 次の日、部室に行くと、いつも通り、遥斗先輩が絵を描いていたから、ほっとする。
 やっぱり体調悪いわけじゃなかったんだ。

「おはようございます」
「あぁ、おはよう」
 
 めずらしく遥斗先輩がまともに挨拶してくれたけど、なんだか気まずげな顔をしている。

「?」

 私が首を傾げると、遥斗先輩はそっぽを向いてつぶやいた。

「……昨日は寝てて悪かったな。ハンバーグうまかった」

 あぁ、なるほど! 寝顔を見られて気まずかったんだ。
 そうよね。寝顔って人に見られるの恥ずかしいもんね。
 寝顔さえも綺麗だったけどね。

 それでも律儀に感想を言ってくれるのがうれしい。

「ハンバーグ、気に入ってもらえてよかった! ちょっと自信あったんです。また作りますね!」

 遥斗先輩は横を向きながら軽く頷いた。

「今日は打って変わって、しらすご飯です。カルシウム取ってくださいね」
「ありがとう」
 
 真顔に戻った先輩にお弁当箱を渡すと、私は自分の教室に向かった。



 お昼に机をくっつけて、さやちゃんと菜摘ちゃんとお弁当を食べていると、菜摘ちゃんがふと私のお弁当を覗き込んだ。

「もしかして、最近自分で作ったお弁当なの?」
「そうだよ。どうしてわかったの?」
「だって、なんか優っぽい詰め方だもん」

 菜摘ちゃんが笑う。

「優っぽいってどんな詰め方よ!」
「あぁ、なるほど、わかる気がする」

 さやちゃんも笑って言った。

「えー、お母さんのとなにが違うの?」

 そりゃあ、詰め方が下手だけど、そんなにわかる?
 私はしげしげと自分のお弁当を見つめる。

「うーんとね、なんだか大雑把なんだよね」
「そうだね。一個一個が大きくて塊で入ってて、なんというか男の子のお弁当みたい」
「遥斗先輩のお弁当の残りを詰めてるから、男の子っぽいのかな?」
「違う違う、詰め方!」
「彩りとか考えてないでしょ? あと飾りとか」
「遥斗先輩に渡してるお弁当もそんな感じなんだ?」

 さやちゃんと菜摘ちゃんは顔を見合わせてプッと笑う。

「「優っぽい! 色気ない!」」

 私は口を尖らせて言った。

「もーなによ! 別に色気なくてもいいじゃん。そんな関係でもないし」
「でも、せっかく男子にお弁当作っているんだから、もうちょい女子力あがってもいいんじゃない?」
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