全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子

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第一章 ― 優 ―

遥斗先輩の事情③

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 真奈美先輩は、校庭を通り、裏門を出る。
 学校から出るとは思っていなかったので、「あのー」と真奈美先輩に問いかけると、先輩はすぐ前の大きな倉庫みたいなところを指差し、「あそこ、家なの」と言った。

 倉庫の前の駐車場にはトラックが並び、出たり入ったりしている。

 そうか、真奈美先輩のお家は仕出し弁当屋さんだって言っていたな。

 倉庫の横の小さなドアを開けると階段になっていて、そこを登っていく。
 二階は居住スペースになっているようで、真奈美先輩は無言でドアを開け、リビングに通してくれた。

「今の時間は誰もいないの。リンゴジュースしかないけど」

 ダイニングテーブルの前に座らされて、ジュースを出してもらう。
 真奈美先輩も向かい側に座って、両手でブリッジを作って、その上に顎を乗せた。

「私ね、高校デビューだったの」

 唐突に話し出した真奈美先輩の意図がわからず、はぁと頷いた。

「高校に入ってすぐ告られて、有頂天になって付き合った人がいたの。1年も付き合ったのよ? 処女も捧げて、尽くして、わかったのは二股かけられてたってこと。しかも、私の方が遊びだった……。バカみたいよね?」

 初恋もまだなお子さまな私にはどう返していいかわからず、首を横に振った。

「私、悔しくて悔しくて、なにを思ったのか、その頃、超美形だって騒がれてた遥斗に彼氏のフリを頼んだの。遥斗はちょうどその頃いろいろ困っている時期だったみたいで、食事と引き換えに引き受けてくれた。それが始まり」

 それを聞いて、真奈美先輩がここに連れてきた意味がようやくわかった。
 遥斗先輩のことを話してくれているんだ。

「その頃、私はやけになっていたし、傷ついていたし、自信をなくしていた。それで、遥斗に抱いてって頼んだの」

 ひゅっと息を呑む音が聴こえた。私が立てた音だった。
 こないだの喘ぎ声が頭の中で蘇る。
 私は頭を振った。
 
 そんな私の様子を見つめながらも、お構いなく真奈美先輩は話を続けた。

「遥斗は妙に律儀で、食べ物をもらっているから逆らえなかったんでしょうね。嫌嫌、本当に嫌嫌、私を抱いてくれたわ。それが元カレにバレて、おもしろおかしく言いふらされたの。遥斗は食べ物をあげると抱いてくれるんだと」

 貼り付けたような笑みを浮かべて真奈美先輩は淡々と語る。
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