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第一章 ― 優 ―
遥斗先輩の事情②
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私は自分の部屋にこの絵が飾られている様を想像して、にっこり微笑んだ。
そんなやり取りをしていると、遥斗先輩がちらっと時計を見た。
あぁ、今日は17時半から用事があるんだったね。
「あ、じゃあ、これで帰りますね」
私が言うと、遥斗先輩はあきらかにほっとした顔で頷いた。
なにがあるんだろう?
気になったものの、聞いてほしくなさそうだから、詮索せずに荷物を持って、部屋を出た。
まだ、明るいから、部活している風景でも撮るかなぁ。
校庭に出て、野球部やサッカー部が練習をしている風景をパシャパシャ撮る。
遠くに森さんを見つける。
望遠で球を投げるところを撮った。
筋肉質だけど、スラッとしていて、真剣な表情が男っぽい。
森さんってこうして見ると、結構カッコいいのね。
あ、こっちを向いた。
レンズ越しに目が合った気がした。
サッカーをしているところは動きが早くてなかなか追えない。うまくピントを合わせたりシャッタースピードを調整しないとまともな写真にならないなぁ。これはいい練習になるかな?
とりあえず、今日は惨敗だ……。
そんな風に撮影していると、部室に忘れ物をしてきたのに気づいた。
菜摘ちゃんにもらったお菓子の紙袋を忘れてきちゃったのだ。
まだギリギリ17時半になってないから、取りに行ってもいいよね?
私は急いで部室に向かった。
部室に近づくと、ドアの前に佇む女の子の影が見えた。大きな紙袋を持って、思いつめた表情をしている。
思わず、立ち止まる。
女の子は私には気づかないまま、深呼吸をすると、ドアを叩いた。
私には聞こえなかったけど、返事があったようで、彼女はドアを開けて入っていった。
遥斗先輩の用事って、これだったんだ……。
見てはいけないものを見てしまった気がして、私は立ち尽くしていた。
「あらら、今日はそういう日だったんだ」
後ろから華やかな声がした。
振り返ると、真奈美先輩だった。
「そういう日って……?」
「あら、知らないの? 遥斗の噂を?」
遥斗先輩の噂?
──女の子に貢がせて、その代わり……。
さやちゃんに聞いた噂を思い出す。
──女を食い散らかしてて……。
森さんに聞いた噂も。
もしかして……?
「知ってるようね」
真奈美先輩は同情するような苛立ったような表情で私を見ていた。
どうしてそんな目で見られるのかわからない。
「優ちゃん、ちょっと時間ある?」
「え? ええ」
私が頷くと、真奈美先輩は部室のドア横にお弁当の入った紙袋を置いたあと、「ついてきて」と背を向けた。
そんなやり取りをしていると、遥斗先輩がちらっと時計を見た。
あぁ、今日は17時半から用事があるんだったね。
「あ、じゃあ、これで帰りますね」
私が言うと、遥斗先輩はあきらかにほっとした顔で頷いた。
なにがあるんだろう?
気になったものの、聞いてほしくなさそうだから、詮索せずに荷物を持って、部屋を出た。
まだ、明るいから、部活している風景でも撮るかなぁ。
校庭に出て、野球部やサッカー部が練習をしている風景をパシャパシャ撮る。
遠くに森さんを見つける。
望遠で球を投げるところを撮った。
筋肉質だけど、スラッとしていて、真剣な表情が男っぽい。
森さんってこうして見ると、結構カッコいいのね。
あ、こっちを向いた。
レンズ越しに目が合った気がした。
サッカーをしているところは動きが早くてなかなか追えない。うまくピントを合わせたりシャッタースピードを調整しないとまともな写真にならないなぁ。これはいい練習になるかな?
とりあえず、今日は惨敗だ……。
そんな風に撮影していると、部室に忘れ物をしてきたのに気づいた。
菜摘ちゃんにもらったお菓子の紙袋を忘れてきちゃったのだ。
まだギリギリ17時半になってないから、取りに行ってもいいよね?
私は急いで部室に向かった。
部室に近づくと、ドアの前に佇む女の子の影が見えた。大きな紙袋を持って、思いつめた表情をしている。
思わず、立ち止まる。
女の子は私には気づかないまま、深呼吸をすると、ドアを叩いた。
私には聞こえなかったけど、返事があったようで、彼女はドアを開けて入っていった。
遥斗先輩の用事って、これだったんだ……。
見てはいけないものを見てしまった気がして、私は立ち尽くしていた。
「あらら、今日はそういう日だったんだ」
後ろから華やかな声がした。
振り返ると、真奈美先輩だった。
「そういう日って……?」
「あら、知らないの? 遥斗の噂を?」
遥斗先輩の噂?
──女の子に貢がせて、その代わり……。
さやちゃんに聞いた噂を思い出す。
──女を食い散らかしてて……。
森さんに聞いた噂も。
もしかして……?
「知ってるようね」
真奈美先輩は同情するような苛立ったような表情で私を見ていた。
どうしてそんな目で見られるのかわからない。
「優ちゃん、ちょっと時間ある?」
「え? ええ」
私が頷くと、真奈美先輩は部室のドア横にお弁当の入った紙袋を置いたあと、「ついてきて」と背を向けた。
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