全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子

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第一章 ― 優 ―

遥斗先輩の事情①

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 翌朝、「おはよー」と菜摘ちゃんに挨拶したら、笑われた。

「なに?」

 私が首を傾げたら、菜摘ちゃんはいたずらっぽく目をきらめかせて言った。

「遥斗先輩の誤解は解けたみたいだね」
「えぇー、なんでわかるのー?」

 驚いた私はマジマジと菜摘ちゃんを見つめた。
 
「優の顔を見たら一目瞭然よ」
「えー、そんなにわかりやすい?」
「うん、モロわかり」

 私は両頬を手で押さえた。
 そんなにわかるのかな?

「おはよー、なっちゃん、優」
「あっ、おはよー、さやちゃん」
「あれ、優、先輩と仲直りしたの?」

 顔を合わせるなり、さやちゃんからも言われて、菜摘ちゃんが爆笑していた。
 わかるらしい……。




 放課後、部室に行く。
 今日は17時半までと言われたから、お弁当箱を取ってくるだけで、あとはどこかで写真を撮っていようと思っていた。

「こんにちは」
「あぁ」

 いつもの遥斗先輩の頷くだけの挨拶。
 平常運転だわ。

「あっ、パステルを使っているんですね」
「あぁ、ネットで見たら、おもしろい使い方がいろいろ載っていたから試してみたくなった」
「ベースは水彩画なんですね」

 サーモンピンクがベースで、黄色、茜色、水色………いろんな色の混ざっている抽象画だったけど、淡い水彩に綺麗なパステルの色が重なって、心ときめく絵になっていた。

「これは朝焼けですか?」
「うん、まぁそうかな」

 初めて会ったときの空みたい。

「この絵、できたら欲しいな」

 気がつくとポロッと口から言葉が出ていた。
 部屋に飾りたいと思ったのだ。

「じゃあ、2000円」
「えー、お金取るんですか!?」
「なんでも売れるものは売るんだろ?」

 先輩がニヤリと笑った。
 そうは言ったけど、私からまで取らなくていいのに!
 払うけどさっ!

 お財布を出した私を見て、先輩は慌てて「冗談だ。お前から金なんてもらえるかよ」と止めた。
 
「うー、でも、払いますよ! お母さんからもお金を取っちゃったし」
「いらない」
「でも、人にお金を出させといて、自分は払わないのは……」
「お前からはいらない」
「でも……」
「あぁーーっ、じゃあ、プレゼントだ! 俺からもらったって言ったらいいだろ!」
「プレゼント……?」

 やけになったように先輩が言った。
 こんな先輩はめずらしい。

 プレゼント? 遥斗先輩から?

 やけにかわいい言葉に、じわじわ顔が赤くなる。
 先輩も言葉選びを間違えたと思ったのか、そっぽを向いたけど、耳が赤い。

「あ、ありがとうございます」
「別に、習作だ。礼を言われるようなもんじゃない」
「でも、ちゃんとサイン入れてくださいね。先輩が有名になったら高く売れるかもしれないし」
「売るんかよ」
「ふふっ、うそです。売りません。大事にします」
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