全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子

文字の大きさ
64 / 171
第一章 ― 優 ―

胸が痛い④

しおりを挟む
「バイト代なんて軽く吹っ飛んじゃいます。たぶん、遥斗先輩は、食べ物をセーブして、お金を画材に回していたんだと思います」

 胸が苦しい。もちろん、その選択をしたのは先輩だけど、もうちょっと大人がちゃんと考えて見てくれていたらよかったのに。

 なんの考慮もしないで、ここにいたかったらコンクールで賞を獲れなんていう無責任な大人にまた怒りがこみあげる。

「……そんなにひどかったのか?」
「ひどいなんてもんじゃないです」

 また涙が溢れてくる。
 かわいそうという言葉はあまり使いたくない。それでも、あの状態に耐えて、平気な顔をしている先輩はかわいそうだった。
 少し落ち着いてきて、トーンを落とした。

「……和田先生にすべて責任を押しつけようというわけじゃないんです。でも、先生、こないだ遥斗先輩は交通費にも困るくらいお金がないって言っていましたよね? それを知っていたのに、どうしてこんなことになっちゃってるんですか?」 
「…………」

 和田先生が黙ってうなだれた。そんな先生に畳み掛ける。

「なにか、なにか先輩の助けになることはないのか、大人の観点から教えてほしいんです! 児童相談所とか保護施設とかは?」
 
 訴える私に、和田先生は悲しげな顔をした。

「それはここに入る前に遥斗が拒否した。虐待を証明するのが嫌だと。実際、難しい状況だったしな」

 虐待という言葉が出てきて、顔が強ばる。先輩……。

「俺も馬鹿な大人の一人だったな……。あいつの外見に騙されていた。いや、その方が楽だったから騙されたふりをして敢えて目を逸らしていたんだ。佐伯が言うように考えたらわかることだったのに……」

 和田先生は自嘲してつぶやいた。大人が、先生が、そんな顔をするとは思わなかった。先生だって、感情を持った人間なんだって、ハッと気づいた。

「女房が……遥斗の中学3年のときの担任だったんだ。あるときから、遥斗が家に帰らず、しばしば補導されるようになった。遥斗はただ公園でひたすらスケッチしていただけだったらしいが、深夜までそんなことをしていたら、そりゃ通報されるわな。警察に聞かれても母親を呼ばず、学校の名前しか言わないから、その都度、女房が駆り出された。そのうち、家に連れてくるようになったんだ。遥斗とはそのときからの付き合いなんだ」

 そこまで言って、和田先生は顔を歪めた。

「正直、迷惑だった……」

 その言葉にギュッと心臓を掴まれたような気がした。そんな……。

「前にお前に指摘されたように、嫉妬していたんだな。あんな綺麗な顔の男に女房が夢中になっているんだ」
「でも、それは……」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~

root-M
青春
高校一年生の三ツ瀬豪は、入学早々ぼっちになってしまい、昼休みは空き教室で一人寂しく弁当を食べる日々を過ごしていた。 そんなある日、豪の前に目を見張るほどの美人生徒が現れる。彼女は、生徒会長の巴あきら。豪のぼっちを察したあきらは、「一緒に昼食を食べよう」と豪を生徒会室へ誘う。 すると、あきらは豪の手作り弁当に強い興味を示し、卵焼きを食べたことで豪の料理にハマってしまう。一方の豪も、自分の料理を絶賛してもらえたことが嬉しくて仕方ない。 それから二人は、毎日生徒会室でお昼ご飯を食べながら、互いのことを語り合い、ゆっくり親交を深めていく。家庭の味に飢えているあきらは、豪の作るおかずを実に幸せそうに食べてくれるのだった。 やがて、あきらの要求はどんどん過激(?)になっていく。「わたしにもお弁当を作って欲しい」「お弁当以外の料理も食べてみたい」「ゴウくんのおうちに行ってもいい?」 美人生徒会長の頼み、断れるわけがない! でも、この生徒会、なにかちょっとおかしいような……。 ※時代設定は2018年頃。お米も卵も今よりずっと安価です。 ※他のサイトにも投稿しています。 イラスト:siroma様

【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません

竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

先輩から恋人のふりをして欲しいと頼まれた件 ~明らかにふりではないけど毎日が最高に楽しい~

桜井正宗
青春
“恋人のふり”をして欲しい。 高校二年の愁(しゅう)は、先輩の『柚』からそう頼まれた。 見知らずの後輩である自分になぜと思った。 でも、ふりならいいかと快諾する。 すると、明らかに恋人のような毎日が始まっていった。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

処理中です...