全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子

文字の大きさ
75 / 171
第二章 ― 遥斗 ―

日常の崩壊②

しおりを挟む
 なんとかその腕から抜け出ようともがいたけど、全然ダメで、揉み合っているうちに押し倒された。

「ハル! どこに行こうとしてるの! 行かないで!」
「母さん、遥斗だよ! 父さんじゃない!」

 俺に馬乗りになって、父さんの名を呼ぶ母の目は尋常じゃなかった。その目は俺を見ておらず、何度言っても俺の声も聞こえていないようだった。それどころか、俺を抑え込んでキスしようとした。

「やめてくれ!」

 思いきり突き飛ばして、どうにか母から逃れた。
 でも、すぐ母は足にすがりついてきて、ズボンを引きずり下ろそうとした。

「やめろ!」

 嫌悪感に犯されて、俺は母を乱暴に振りほどいた。

 逃げなくては!

 そう思うが、母の部屋と自分が寝起きしているリビングしかない家の中には逃げ場はない。
 俺は靴をつっかけて、外に走り出た。
 脇目も振らず走り続けて、気がつくと、公園に来ていた。
 母が追ってくる様子はない。
 安堵して、そこのベンチに座り込んだ。

 真夏の公園は、夜になってもじっとりと蒸し暑く、嫌な汗が背筋を伝わって流れ落ちた。

 母さんは酔っていたんだ。だから、父さんと区別がつかなかったんだ。ただ、それだけだ。
 きっと酔いが醒めたら、笑い話になることだ。
 そう思うものの、家に帰る気がせず、その夜はとうとうそこで過ごした。

 
 朝になり、恐る恐る家に帰ってみた。
 母の姿はない。
 でも、靴はあるから、部屋で寝ているのだろう。
 眠たくて仕方がなかったけど、母がいる家で寝る気は起こらず、学校の荷物を持つと再び家を出た。

 ずいぶん早い時間だったが、中学校へ行くと、門は開いていた。
 教室に行き、自分の席に座ると、突っ伏して寝た。
 爆睡していたようで、「久住くん、久住くん」と隣の女子に肩を揺すぶられて目を覚ました。

 そして、悪夢はその日だけで終わらなかった。
 昼間の母は比較的大丈夫だったが、お酒が入るとダメみたいで、寝ているところを何度も襲われかけた。
 もう夜は家にいられなくなった。

 俺は母から仕事に出かけていくと、仮眠を取って、母が帰宅する前に家を出て、コンビニに行ったり公園に行ったりして、時間をつぶした。
 公園でスケッチブックに絵を描いていると、たまにジロジロ見られて、その度に場所を移した。

 そんなことをしていると、当然、学校では眠くて仕方ないし、補導もされる。
 警察に聞かれても母の連絡先は言いたくなかったので、黙っていたら、担任の和田先生が呼ばれた。
 どうやら通報した人が俺の通う中学を知っていたらしい。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません

竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる

釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。 他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。 そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。 三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。 新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。   この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

カオルとカオリ

廣瀬純七
青春
一つの体に男女の双子の魂が混在する高校生の中田薫と中田香織の意外と壮大な話です。

処理中です...