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第二章 ― 遥斗 ―
日常の崩壊④
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「惜しいなぁ。もうちょっと早かったら奨学金申請できたのに。でも、特待生は狙えるわ。考えてみない?」
「でも、俺はあの家を出たいんです」
「そっか。全寮制で特待生狙うとか? でも、大概バイト禁止だから、お母さんの援助がないと生活費に困るわよね」
母は顔を合わせているからお金をくれるけど、定期的に仕送りをくれることはないだろう。たぶん、俺がいなけりゃいないで存在を忘れる。
それでも、俺の銀行口座にはある程度の金額が入っている。父が開設してくれた口座で、そこに今まで取った賞金を入れているからだ。
「生活費なら絵画コンクールの賞金がそれなりにあります」
「遥斗は賞金をもらうほど、絵がうまいのか?」
郁人先生が口を挟んできた。
「そうなのよ。学校代表で出品するものがなんらかの賞を取っていて、すごいのよ。あっ、そうだ。あなたの叔父さんってそういう受賞歴が好きじゃなかった?」
「好きだなぁ。学校案内にズラズラと書きたいらしい」
「あなたの高校なんて、どうかしら?」
「うーん、叔父さんに聞いてみるかなぁ」
驚いたことに、郁人先生の叔父さんは出来たばかりの高校の理事長をしているそうだ。
さらに驚いたのは、郁人先生がその叔父さんに俺の状況を話したら、絵画コンクールの賞を取ることを前提に、授業料免除の特待生にして、学校に住んでもいいと言っているらしい。
「叔父さんはちょっと変わっているからなぁ」
これには郁人先生もびっくりしたらしく、俺に伝えながら、こんなのありかと苦笑していた。
こんな都合のいいことがあるなんて、と俺も呆然とした。
とりあえず、そこを目指すことにして、俺は絵を描き溜めた。
あと5ヶ月の辛抱だと思えば、冬の寒空の下、空いているネットカフェが見つからずさまようことがあっても我慢できた。
見込みが甘いとは思わずに。
「でも、俺はあの家を出たいんです」
「そっか。全寮制で特待生狙うとか? でも、大概バイト禁止だから、お母さんの援助がないと生活費に困るわよね」
母は顔を合わせているからお金をくれるけど、定期的に仕送りをくれることはないだろう。たぶん、俺がいなけりゃいないで存在を忘れる。
それでも、俺の銀行口座にはある程度の金額が入っている。父が開設してくれた口座で、そこに今まで取った賞金を入れているからだ。
「生活費なら絵画コンクールの賞金がそれなりにあります」
「遥斗は賞金をもらうほど、絵がうまいのか?」
郁人先生が口を挟んできた。
「そうなのよ。学校代表で出品するものがなんらかの賞を取っていて、すごいのよ。あっ、そうだ。あなたの叔父さんってそういう受賞歴が好きじゃなかった?」
「好きだなぁ。学校案内にズラズラと書きたいらしい」
「あなたの高校なんて、どうかしら?」
「うーん、叔父さんに聞いてみるかなぁ」
驚いたことに、郁人先生の叔父さんは出来たばかりの高校の理事長をしているそうだ。
さらに驚いたのは、郁人先生がその叔父さんに俺の状況を話したら、絵画コンクールの賞を取ることを前提に、授業料免除の特待生にして、学校に住んでもいいと言っているらしい。
「叔父さんはちょっと変わっているからなぁ」
これには郁人先生もびっくりしたらしく、俺に伝えながら、こんなのありかと苦笑していた。
こんな都合のいいことがあるなんて、と俺も呆然とした。
とりあえず、そこを目指すことにして、俺は絵を描き溜めた。
あと5ヶ月の辛抱だと思えば、冬の寒空の下、空いているネットカフェが見つからずさまようことがあっても我慢できた。
見込みが甘いとは思わずに。
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