全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子

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第二章 ― 遥斗 ―

日常の崩壊⑤

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 何度か話すうちに、俺の家庭事情について知った郁人先生に児童養護施設に入るという手もあるんだと提案された。
 それは性的虐待だし、それ以前に育児放棄に近いとも言われて。
 育児放棄は今さらだし、決定的なことをされた訳でもない俺は拒否した。
 郁人先生にはしゃべったが、それ以上この話題を他の人にしたくなかったし、なによりそうした施設では自由に絵が描けないと思ったから。

 年が明けてから、俺は描き溜めていた絵をいろんなコンクールに出品し始めた。
 誤算だったのが、出品料と送料だった。
 学校を通じて出していたコンクールは当然自己負担はなかった。
 しかし、大きなコンクールほど出品料が取られて、規定のサイズも大きかったので、送料が馬鹿高かった。持っていける範囲のところは手持ちで持ち込んだ。額装を求められるものもあって、それはさすがに見送るしかなかった。




「久住くん、推薦入試の合格通知が来たわよ! おめでとう!」

 1月下旬になり、和田先生に放課後残るように言われて、なんだろうと思ったら、にこやかにそう言われた。
 試験はできた感触があって、理事長もオッケーしているから、間違いはないとは思ってはいたけど、安堵で座り込みそうになった。

 あと2ヶ月であの家を出られる。

 入学書類はほぼ自分で書いて、出勤前の母に判子だけ押してもらった。その時間が一番まともだから。
 それでも、なにも見ないでポンポン押していく姿に危うさを感じた。
 その頃の母は自分でもヤバいと思っていたのか、俺をほとんど視界に入れないようにしていた。

 卒業する頃にはコンクールの結果がぽつぽつ届き始めた。佳作から大賞まであって、ほっとする。



 卒業後、郁人先生に案内されて、高校へ行った。

「ここを使っていいらしい」

 連れてこられたのは部室エリア。
 その一番奥の『写真部』とパネルが貼ってある部屋だった。

「叔父のこだわりで、ここを作ってみたものの、写真部員が集まらなかったそうだ。まぁ、今どき暗室なんて使わないよな」

 叔父さんはどこか抜けているんだよな、と郁人先生が苦笑する。

 このエリアはトイレはもちろん、シャワー室もあり、写真部の部室は暗室もあるので、寝室代わりに使えるだろうという配慮らしい。

 俺は寝起きができるなら、どこであろうと異存はなかった。しかも、冷暖完備で家よりも広く新しく快適そうだった。



 3月末に、和田先生夫妻に手伝ってもらって、俺はそこへ荷物を運んだ。
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