全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子

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第二章 ― 遥斗 ―

まっとうな存在①

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 その日、俺は屋上で朝焼けを描いていた。
 土曜の早朝なので、誰もいなくて、ガランとした空間はとても落ち着けた。
 何日か前から描いていたので、今日で描き終わりそうだった。


 朝の光は好きだ。
 暗い空に小さな光が現れて、みるみるうちに闇を明るさで染めていく。そこにはまるで希望しかないように思えた。

 ……実際の俺には、希望なんてなかったけど。

 昼飯を定期的に用意してくれていた沙也加が卒業して、俺は食うものにも困るようになっていた。

 バイトは相変わらず長く続かない。
 春休みの間、続けられて、まかないを食べられただけマシだった。
 学校が休みの日は真奈美のお弁当もないから。

 絵を描き続けて、コンクールに出し続けなくてはここを追い出されるという恐怖で、尽きかけている貯金をすべて使うことはできなかった。出品料を出せなくなると困るから。結果、食費を削ることになり、1日1、2食しか食べない日が続いていた。

 空腹を抑えながら、絵を描き続ける。
 幸せの色でしかないと思われるピンク色の洪水が空を染め上げ、視界を満たす。
 その幸せを少しでも取り込みたいと、筆を走らせた。


 そのときだった。

 カチャ 

 ドアが開く音がして、誰かが入ってきたようだった。
 俺はがっかりした。せっかくこの空間を独り占めできると思っていたのに。
 誰だか知らないが、先客がいるのを見て、立ち去ってくれないかな。
 そう思うが、立ち去る様子もなく、パシャパシャとシャッター音がする。

 正直、隠し撮りをされるのには慣れている。
 またか、という感想しかない。
 無視して、筆を進めていると、話しかけられた。

「あのー、すみません。突然ですが、写真のモデルになってもらえませんか?」

 女の声だった。
 モデルになってほしいと言われるのも慣れていた。

 チッ

 思わず舌打ちをしてしまう。
 でも、食料確保のチャンスかと思い直して、振り返らないまま答えた。

「昼飯をいっしゅ、いや、一ヶ月用意するならなってもいいぜ?」
「お昼ごはん?」

 思ったより幼い声にチラッと見やると、「うわぁ、綺麗な顔……」と言われた。

 声から想像した通り、少し幼い顔をしたショートカットの女の子だった。
 一年か?
 クリクリの大きな目を見開いて、俺をまじまじと見ている。
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