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第二章 ― 遥斗 ―

誤算②

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 そんなときだった。真奈美が変な話を持ちかけてきたのは。

「お願い! なんでもするから彼氏のふりして!」

 手を合わせ、頼み込んでくる真奈美に俺は「食料をくれるなら」と答えてしまった。
 半分やけになっていた。
 パアッと顔を輝かせた真奈美は、仕出し屋の娘だから、毎日お弁当を用意できると言う。

 女たちに迷惑かけられているんだから、女からもらってもいいかと俺は頷いた。

 結果は散々だった。
 
 なんとも思っていない女に、甘い雰囲気を作れるはずもなく、あっさり偽造がバレた。
 さらに傷ついた真奈美は「抱いてくれ」とすがってきて、またバイトを首になって自暴自棄になっていた俺は抱いた。

 それからは墜ちる一方で、真奈美とのことを噂にされて、俺の元を訪れる女がぽつぽつ現れた。俺はそのとき必要なものと引き換えに見境なく抱いた。

 相手なんていちいち覚えていなかった。
 
 そのうち今度はクラスメートに執着された。

 『私のことが好きなんでしょ? なのになんで他の子の相手をするの?』と罵られ、記憶にすらない相手だったからそのまま伝えたら、目の前でリストカットされた。
 
 ……もう、なんなんだよっ!

 幸い、目撃者が多く、俺がなにもしていないと証言してくれたので、お咎めはなかった。
 彼女も本気で自殺しようとしたわけではなかったようで、傷は浅かった。それどころか、散々騒いでいたくせに、翌日も普通に学校に通ってくる神経に、吐き気がした。

 あとで真奈美から、今に始まったことではなく、何度か同じことを繰り返している子だと聞いたが、もうあの教室に行ける気がしなかった。
 実際、教室に向かおうとすると、気持ちが悪くなり吐いた。

 俺は写真部の部室に引きこもるようになった。
 


 心配した郁人先生が来てくれたが、もうダメだった。
 勉強はここでするし、テストは受けて、一定以上の成績を取るから、どうかここにいさせてくれと涙ながらに頼んだ。

 郁人先生はしぶしぶ理事長に談判してくれて、なんとかここで過ごすことが認められた。
 まさかそんな主張が通るとは自分でも思わず、郁人先生から告げられたときには目を見開いた。思わず、涙がこぼれた。

 どうやら理事長にひどく同情されているらしい。
 会社経営をしていて多忙なため、ほとんど学校にいないので、理事長にまだ会ったことさえなかったが、心からの感謝の手紙をしたため、郁人先生に託した。



 そんな状態で二年生になった。
 あいつに出会ったのはそんなときだった。
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