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第二章 ― 遥斗 ―
連休明け①
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月曜日、早くに目が覚めてしまって、仕方なく起きる。
着替えて、壁際のマットに座ってスケッチをしていたら、元気溌剌の優がやってきた。
「おはよーございます!」
「おはよう」
挨拶を返したが、優は俺を探してキョロキョロしたあと、見つけると、はっと目を見開いた。
慌てて駆け寄ってきて、俺のそばにしゃがむと泣きそうな顔をした。
俺はよっぽどひどい顔をしていたのだろう。見てわかるほどに。
「……遥斗先輩、連休はバイトって言ってませんでした?」
「初日にクビになった」
投げやりに言うと、優は目を瞬いた。
「え、どうして?」
「俺目当ての女同士でトラブルがあったんだ。もう何度も同じようなことがあるから、店としても限界だと言われて」
「そんな……! 遥斗先輩は悪くないじゃないですか!」
「店長も謝ってくれたけどな。まぁ、よくあることだ」
感情を消して言うと、優は自分のことのように怒ってくれる。
しかも、罪悪感を抱いてしまったようで、瞳を揺らした。
様子を見に来ればよかったなんて、思っているんだろう。
優がそんなことを思う必要はないのに。
お前は十分よくしてくれている。
「俺も油断していたのが悪い。いつもはもっと対策を立てていたのに」
そうなんだ。いつもだともうちょっとこうなった場合どうするかとか、考えていたはずなのに、余計なことで頭がいっぱいになっていた。
そういう意味ではお前のせいだ、優。
「先輩、お弁当です。食べてください」
優が差し出した弁当に目が吸い寄せられる。
「ありがとう」
お礼を言って受け取ると、さらに優はカラフルな紙袋を差し出してきた。
「あと、おみやげです。デザートに食べてくださいね」
デザートというからにはお菓子なんだろう。
お菓子は日持ちがするものが多くて助かる。
優はにっこり笑って「じゃあまた帰りに来ますね」と部屋を出ていった。
俺は震えそうになる手で弁当の蓋を取る。
まずは胃がびっくりしないように、おにぎりに手を伸ばす。
一口食べて、じっくり噛む。
「甘い……」
米がやけに甘く感じた。
次は豚の生姜焼き。
肉が食べたかった。
甘辛いタレがとても美味しい。おにぎりに合う。
俺は弁当を少しずつ食べた。
量はあまり食べられない。
胃が満たされると猛烈に眠くなった。
俺は食べては寝て食べては寝てを繰り返し、ようやく夕方に完食した。
栄養が行き渡ると身体のだるさは少し取れて、俺はいつもの場所で絵を描いて優を待つことにした。
あまり心配をかけたくないから。
さすがに、立っているのはしんどいから座りながらだが。
着替えて、壁際のマットに座ってスケッチをしていたら、元気溌剌の優がやってきた。
「おはよーございます!」
「おはよう」
挨拶を返したが、優は俺を探してキョロキョロしたあと、見つけると、はっと目を見開いた。
慌てて駆け寄ってきて、俺のそばにしゃがむと泣きそうな顔をした。
俺はよっぽどひどい顔をしていたのだろう。見てわかるほどに。
「……遥斗先輩、連休はバイトって言ってませんでした?」
「初日にクビになった」
投げやりに言うと、優は目を瞬いた。
「え、どうして?」
「俺目当ての女同士でトラブルがあったんだ。もう何度も同じようなことがあるから、店としても限界だと言われて」
「そんな……! 遥斗先輩は悪くないじゃないですか!」
「店長も謝ってくれたけどな。まぁ、よくあることだ」
感情を消して言うと、優は自分のことのように怒ってくれる。
しかも、罪悪感を抱いてしまったようで、瞳を揺らした。
様子を見に来ればよかったなんて、思っているんだろう。
優がそんなことを思う必要はないのに。
お前は十分よくしてくれている。
「俺も油断していたのが悪い。いつもはもっと対策を立てていたのに」
そうなんだ。いつもだともうちょっとこうなった場合どうするかとか、考えていたはずなのに、余計なことで頭がいっぱいになっていた。
そういう意味ではお前のせいだ、優。
「先輩、お弁当です。食べてください」
優が差し出した弁当に目が吸い寄せられる。
「ありがとう」
お礼を言って受け取ると、さらに優はカラフルな紙袋を差し出してきた。
「あと、おみやげです。デザートに食べてくださいね」
デザートというからにはお菓子なんだろう。
お菓子は日持ちがするものが多くて助かる。
優はにっこり笑って「じゃあまた帰りに来ますね」と部屋を出ていった。
俺は震えそうになる手で弁当の蓋を取る。
まずは胃がびっくりしないように、おにぎりに手を伸ばす。
一口食べて、じっくり噛む。
「甘い……」
米がやけに甘く感じた。
次は豚の生姜焼き。
肉が食べたかった。
甘辛いタレがとても美味しい。おにぎりに合う。
俺は弁当を少しずつ食べた。
量はあまり食べられない。
胃が満たされると猛烈に眠くなった。
俺は食べては寝て食べては寝てを繰り返し、ようやく夕方に完食した。
栄養が行き渡ると身体のだるさは少し取れて、俺はいつもの場所で絵を描いて優を待つことにした。
あまり心配をかけたくないから。
さすがに、立っているのはしんどいから座りながらだが。
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