全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子

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第二章 ― 遥斗 ―

新しい世界①

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 昼の弁当を食べ、履歴書を持って、おにぎり屋に面接に行く。
 あっさり採用になり、明日から来てほしいと言われる。
 もちろん、俺には異存はない。
 職場はおばちゃんばかりで、しかも、大きなマスクをして接客するらしく、俺にとっては気が楽だ。

 バイトがあっさり決まって、ほっとする。
 しかも、昼に余ったからと、おにぎりや唐揚げをお土産にくれた。
 晩飯が浮いた。


 今日はいい日だ。
 空も快晴で、心地よい風に目を細める。
 すべてがうまく行きそうな、そんな錯覚をしてしまう。

 そうだ、月曜日に郁人先生に調理室を使わせ もらえないか、相談しよう。自炊できたら、もっと食費をセーブできる。せめて冷蔵庫だけでも使えたら助かる。

 優の弁当は来週で終わりだ。
 そろそろ計画を考えないといけない。

 なにに出展して、いくらかかるのか?
 バイトを週2入れたら、食費にどれだけ使えるのか?
 コンクールをパソコンで調べてみよう。ネットはなんでも載っていて便利だな。



 学校に戻ると、俺はパソコンでいろいろ調べた。
 中には作品の写真をメールで送るだけでエントリーできるものもあった。それだとそもそも出品料もいらない。今まで見落としていたものも多い。これまでは図書館に毎月入る雑誌で見ていたが、パソコンもメールも使えるようにしてくれたことを優に感謝する。

 ついでに、絵の技法や綺麗な景色なんかを見てみた。
 情報の奔流に目眩がする。
 自分が今までどれだけ狭い世界で生きてきたか実感した。





「おはようございます!」
「おはよう」

 翌朝、優は大荷物を持ってやってきた。花束まで持っている。
 見ていると花を活けたり、また食事の準備をしているようだ。
 俺は顔を顰めた。
 そんなことしなくていいと言ったのに。

「先輩、朝ごはんは食べました? 食べたとしてももう一回食べましょう!」

 そんな俺のことなど気にせず、明るく優が言うので、俺は苦笑した。

 用意されたものを無碍にすることもないか。

 ウェットティッシュを渡され、手を拭くと、椅子に座った。

「いただきまーす」
「……いただきます」

 おにぎりを食べていると、ニコニコと眺められているのに気がついて、頬が熱くなる。

「そんなに見られていたら食べにくい」と文句を言うと、優は慌てて自分のおにぎりにかぶりついた。

「あー、梅干しだった。おかかがよかったのに」
「自分の好きじゃないものを入れたのか?」
「だって、おにぎりには梅干しは一個ぐらい入ってないと……。様式美ってやつ?」
「なんだそれ」

 ちょうど2個目にかぶりついたおにぎりがおかかだったから、優のものと取り替える。
 俺はなんでもいい。
 一口齧る。
 いや、梅干しも悪くない。


「そういえば、バイトの面接はどうだったんですか?」
「あぁ、採用になって、今日の昼前から行く」
「よかったですねー!」

 弾んだ声を上げる優。
 こうして誰かとしゃべりながら朝食を取るなんて、父さんが生きていたとき以来だ。
 胸がほんのり温かくなる。
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