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第二章 ― 遥斗 ―
まだ子どもだった①
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昼頃、水彩に使っていたバケツの水を変えようとして、服にかけてしまった。
慌てて脱いで着替えているとき、ノックと共にドアが開いた。優だった。
「わわっ、ごめんなさい!」
慌ててドアを閉めた。
シャツを着てからドアを開ける。
「なんか用か?」
「た、体操服を忘れちゃって……。あ、あった」
机の影に隠れていた布袋を拾い上げ、優はペコリと頭を下げた。
「し、失礼しました……」
「お前、ノックと同時に開けるの止めろよ」
「……気をつけます。じゃあ、またあとで」
「あぁ」
慌ただしく優は部屋を出ていった。
午後、弁当を食べて、しばらくして、郁人先生のところに行ってみた。
そういえば、歴史教官室を訪れたことは数えるほどしかない。それだけ郁人先生が俺のところに来てくれていたということだ。
トントンとノックすると、「開いているよ」と応答があって、ドアを開く。
俺を見て、先生はびっくりしていた。
「お、おぅ、遥斗。めずらしいな。なにかあったのか?」
なんだか後ろめたいような焦ったような表情をしていた。
そんなに俺がここに来るのがめずらしいか? めずらしいな。
「郁人先生にお願いがあって、調理室を使わせてもらえないかと思って」
「はっ? 調理室?」
想定外の言葉だったらしく、先生は聞き返した。
「そうです。自炊できたら、もっと節約できるかなと思って」
それを聞くと、先生はあきらかに眉を下げ、罪悪感に駆られたような顔をした。
「そのことだけど、コンクールに出品するのにかなり金がかかるらしいな。俺も理事長もそんなこと知らなくて、気軽にコンクールで賞を取れなんて言って、すまなかった」
「え?」
今さらそんなことを言われるとは思わなかったので、目を瞬かせる。
「だから、理事長に掛け合って、コンクールに出す費用を出してもらおうかと思ってな」
「そんな! これ以上は申し訳ないです!」
その申し出は非常に有難いが、今でも十分特別対応をしてもらっている。これ以上誰かの負担を増やすのは嫌だった。
首を振る俺の肩を叩いて、郁人先生はなだめるように言った。
「遥斗、お前は頑張りすぎだ。本当は周りの大人がするべきことまで引き受けて……。もう少し頼ってもいいんだぞ?」
「郁人先生には十分よくしてもらっています。なんの義理もないのに」
「いや、大人には子どもを守る義務がある。俺はもっと積極的に関わるべきだった。わるかったな」
そんなことを言われて、瞼が熱くなる。
最近、涙腺が緩すぎる。
ぐっと瞳に力を込めると、なにも言えなくなった。
出品に関わる費用がなくなれば、調理室を使わせてもらえれば、バイト代だけで十分生活ができる。
「………本当にいいんですか?」
「俺は理事長を口説くだけだしな」
にやっと笑って、郁人先生は俺の頭をなでた。
突然の子ども扱いに戸惑う。
慌てて脱いで着替えているとき、ノックと共にドアが開いた。優だった。
「わわっ、ごめんなさい!」
慌ててドアを閉めた。
シャツを着てからドアを開ける。
「なんか用か?」
「た、体操服を忘れちゃって……。あ、あった」
机の影に隠れていた布袋を拾い上げ、優はペコリと頭を下げた。
「し、失礼しました……」
「お前、ノックと同時に開けるの止めろよ」
「……気をつけます。じゃあ、またあとで」
「あぁ」
慌ただしく優は部屋を出ていった。
午後、弁当を食べて、しばらくして、郁人先生のところに行ってみた。
そういえば、歴史教官室を訪れたことは数えるほどしかない。それだけ郁人先生が俺のところに来てくれていたということだ。
トントンとノックすると、「開いているよ」と応答があって、ドアを開く。
俺を見て、先生はびっくりしていた。
「お、おぅ、遥斗。めずらしいな。なにかあったのか?」
なんだか後ろめたいような焦ったような表情をしていた。
そんなに俺がここに来るのがめずらしいか? めずらしいな。
「郁人先生にお願いがあって、調理室を使わせてもらえないかと思って」
「はっ? 調理室?」
想定外の言葉だったらしく、先生は聞き返した。
「そうです。自炊できたら、もっと節約できるかなと思って」
それを聞くと、先生はあきらかに眉を下げ、罪悪感に駆られたような顔をした。
「そのことだけど、コンクールに出品するのにかなり金がかかるらしいな。俺も理事長もそんなこと知らなくて、気軽にコンクールで賞を取れなんて言って、すまなかった」
「え?」
今さらそんなことを言われるとは思わなかったので、目を瞬かせる。
「だから、理事長に掛け合って、コンクールに出す費用を出してもらおうかと思ってな」
「そんな! これ以上は申し訳ないです!」
その申し出は非常に有難いが、今でも十分特別対応をしてもらっている。これ以上誰かの負担を増やすのは嫌だった。
首を振る俺の肩を叩いて、郁人先生はなだめるように言った。
「遥斗、お前は頑張りすぎだ。本当は周りの大人がするべきことまで引き受けて……。もう少し頼ってもいいんだぞ?」
「郁人先生には十分よくしてもらっています。なんの義理もないのに」
「いや、大人には子どもを守る義務がある。俺はもっと積極的に関わるべきだった。わるかったな」
そんなことを言われて、瞼が熱くなる。
最近、涙腺が緩すぎる。
ぐっと瞳に力を込めると、なにも言えなくなった。
出品に関わる費用がなくなれば、調理室を使わせてもらえれば、バイト代だけで十分生活ができる。
「………本当にいいんですか?」
「俺は理事長を口説くだけだしな」
にやっと笑って、郁人先生は俺の頭をなでた。
突然の子ども扱いに戸惑う。
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