107 / 171
第二章 ― 遥斗 ―
もうやめた③
しおりを挟む
17時半になる前に彼女はやってきた。
「これ……」とカップ麺のたくさん入った紙袋を差し出す。
「あぁ、ありがとう」
それを受け取って隅に置くと、彼女を壁際のマットのところに誘導した。
彼女はぎこちなく制服を脱いでいった。
下着姿になった彼女の手を引き、座らせる。
そっと押し倒すと、ギュッと目をつぶって、身体を固くした。
その胸に手を伸ばそうとするが、どうしても手が動かない。
ダメだ………できない。
彼女の腕を引っ張って起こした。
キョトンとしている彼女に俺は頭を下げた。
「ごめん、やっぱりできない。俺が言うのもなんだが、こういうのは好きなやつとやってくれ」
ハッとした彼女の瞳がみるみる潤んでくる。
「……私に魅力がないから?」
「いや、そうじゃない。俺の方の問題だ。本当にすまない」
もう一度、頭を下げて謝る。
「……いいんです。私もいざとなったら、ちょっとどうしようと思ってて。やっぱりそうですよね。こんなのおかしいですよね……」
彼女は涙を流していたが、しばらくするとなにか吹っ切れたように微笑んだ。
そして、いきなり立ち上がり、さっさと制服を着ると立ち去ろうとした。
慌てて「これ返す」と紙袋を差し出すと、「あげます。迷惑料に」と笑った。
「迷惑をかけたのは俺だ」と言うのに、彼女は構わず去っていった。
心が軽くなった。
もう、できない。こんなこと。
これからのことは見込みは立っていない。優が言うようには絵は売れないだろう。
でも、止めると決めた。すると、全身が開放感で軽くなった。
こんなに嫌だったんだな、俺。
真奈美にも謝ろう。もう弁当はいらない。
昨日、調理室のことを郁人先生に相談するのを忘れていたけど、明日こそお願いしよう。
こないだ調べたコンクール情報を活用すれば出費も抑えられるだろう。
完成間際の絵が目に入る。
優……やっぱりお前は希望の光だ。
俺に道を教えてくれる。
その日は久しぶりに安眠できた。
翌朝、眠そうな優がやってきた。
「おはよーございます……」
「おはよう。めずらしくテンション低いな」
「昨日、なぜか寝つけなくて、ちょっと寝不足なんです」
俺と反対で眠れなかったようだ。
「いつも快眠してそうなイメージだけどな。朝から無駄に元気いっぱいで」
そう言うと優はムッとして、言い返そうと口を開いたけど、ため息をついてやめた。
こんなに元気がない優は見たことがない。
「お前、大丈夫か……?」
心配になって、そばに行き、彼女の額に手を当てた。熱はなさそうだ。
「熱ではないか……。疲れてるなら、弁当休んでもいいんだぞ? お前がポットを持ってきてくれたから非常食も食べられるようになったし」
昨日思いがけずもらってしまったカップ麺の山を指差す。
「だ、大丈夫です! お弁当はちゃんと作ります! あと、1ヵ月じゃ、先輩にモデルしてもらう時間が足りなかったから、延長しますから!」
言うだけ言って、優は弁当箱を押しつて、部屋を飛び出した。
「あ、おいっ」
延長するってなんだよ。
もうそんなことしなくていいって言ったのに。
相変わらず、優に気を遣われている俺は不甲斐ない。
「これ……」とカップ麺のたくさん入った紙袋を差し出す。
「あぁ、ありがとう」
それを受け取って隅に置くと、彼女を壁際のマットのところに誘導した。
彼女はぎこちなく制服を脱いでいった。
下着姿になった彼女の手を引き、座らせる。
そっと押し倒すと、ギュッと目をつぶって、身体を固くした。
その胸に手を伸ばそうとするが、どうしても手が動かない。
ダメだ………できない。
彼女の腕を引っ張って起こした。
キョトンとしている彼女に俺は頭を下げた。
「ごめん、やっぱりできない。俺が言うのもなんだが、こういうのは好きなやつとやってくれ」
ハッとした彼女の瞳がみるみる潤んでくる。
「……私に魅力がないから?」
「いや、そうじゃない。俺の方の問題だ。本当にすまない」
もう一度、頭を下げて謝る。
「……いいんです。私もいざとなったら、ちょっとどうしようと思ってて。やっぱりそうですよね。こんなのおかしいですよね……」
彼女は涙を流していたが、しばらくするとなにか吹っ切れたように微笑んだ。
そして、いきなり立ち上がり、さっさと制服を着ると立ち去ろうとした。
慌てて「これ返す」と紙袋を差し出すと、「あげます。迷惑料に」と笑った。
「迷惑をかけたのは俺だ」と言うのに、彼女は構わず去っていった。
心が軽くなった。
もう、できない。こんなこと。
これからのことは見込みは立っていない。優が言うようには絵は売れないだろう。
でも、止めると決めた。すると、全身が開放感で軽くなった。
こんなに嫌だったんだな、俺。
真奈美にも謝ろう。もう弁当はいらない。
昨日、調理室のことを郁人先生に相談するのを忘れていたけど、明日こそお願いしよう。
こないだ調べたコンクール情報を活用すれば出費も抑えられるだろう。
完成間際の絵が目に入る。
優……やっぱりお前は希望の光だ。
俺に道を教えてくれる。
その日は久しぶりに安眠できた。
翌朝、眠そうな優がやってきた。
「おはよーございます……」
「おはよう。めずらしくテンション低いな」
「昨日、なぜか寝つけなくて、ちょっと寝不足なんです」
俺と反対で眠れなかったようだ。
「いつも快眠してそうなイメージだけどな。朝から無駄に元気いっぱいで」
そう言うと優はムッとして、言い返そうと口を開いたけど、ため息をついてやめた。
こんなに元気がない優は見たことがない。
「お前、大丈夫か……?」
心配になって、そばに行き、彼女の額に手を当てた。熱はなさそうだ。
「熱ではないか……。疲れてるなら、弁当休んでもいいんだぞ? お前がポットを持ってきてくれたから非常食も食べられるようになったし」
昨日思いがけずもらってしまったカップ麺の山を指差す。
「だ、大丈夫です! お弁当はちゃんと作ります! あと、1ヵ月じゃ、先輩にモデルしてもらう時間が足りなかったから、延長しますから!」
言うだけ言って、優は弁当箱を押しつて、部屋を飛び出した。
「あ、おいっ」
延長するってなんだよ。
もうそんなことしなくていいって言ったのに。
相変わらず、優に気を遣われている俺は不甲斐ない。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
先輩から恋人のふりをして欲しいと頼まれた件 ~明らかにふりではないけど毎日が最高に楽しい~
桜井正宗
青春
“恋人のふり”をして欲しい。
高校二年の愁(しゅう)は、先輩の『柚』からそう頼まれた。
見知らずの後輩である自分になぜと思った。
でも、ふりならいいかと快諾する。
すると、明らかに恋人のような毎日が始まっていった。
春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる
釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。
他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。
そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。
三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。
新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。
昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件
マサタカ
青春
俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。
あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。
そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。
「久しぶりですね、兄さん」
義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。
ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。
「矯正します」
「それがなにか関係あります? 今のあなたと」
冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。
今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人?
ノベルアッププラスでも公開。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる