全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子

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第三章 

拒絶②

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 ううん、わかっているけど、頭が理解を拒否している。

 え? どういうこと?

 先輩を見つめたまま固まってなにも反応しない私を苛立たしそうに見て、遥斗先輩はイーゼルの絵を取り上げ、私に差し出した。
 思わず、受け取ってしまう。
 ピンク色が目に入る。

 あの絵? 違う。また別の絵だ。

「やるよ。約束したからな。あとで文句言われても困るし」

 表情を緩めないまま、淡々と言う。
 まるでやっかいばらいの餞別だというように。

 その綺麗な絵をぼんやりと見つめながら、なんとか反論を試みる。

「でも、部室だし、プリンターだって……」
「もう、放っておいてほしいんだ。お前を見ていると、自分がどんどん惨めに思えてくるんだよ! お前がここに来ると言うなら、俺は高校を辞めて出ていく」

 かぶされた先輩の言葉に息を呑む。

 明確な拒否。
 つけ入る隙もないほどの拒絶。
 そこまで言われて、ここに来ることはできない。
 先輩だって、私がそんなことできないって知っていて言っているのだろう。

 そこまでして来てほしくないんだ。
 私、いったいなにやっちゃったんだろう……。
 またやり過ぎたのかな?
 うざかったのかな?

 涙が滲んできたけど、懸命にこらえた。

「………わかりました。でも、せっかく作ったからお弁当は食べてください。お弁当箱は返さなくていいですから」

 お弁当箱を押しつけて、涙がこぼれる前に部屋を走り出た。

 ボロボロと涙が溢れ出てくる。

 どうして、どうして、どうして……?

 泣きながら教室に向かいかけて、ダメだ、こんな顔じゃ行けないと思う。
 今は誰にも会いたくない。
 近くの空き教室に入って座り込む。
 
 スマホで菜摘ちゃんに『今日は休むから先生に伝えといて』とメッセージを送るとすぐに『どうしたの? 大丈夫?』と返事が来る。
 『お腹痛くて』と返すと『お大事にね!』といたわられた。
 ごめんね、菜摘ちゃん。
 本当に痛いのはお腹じゃないの。

 ハラハラと涙が流れ続ける。

 おせっかい過ぎて嫌われることは今までもあった。わかってる。自分の性格は。だから、気をつけていたんだけどなぁ。

 持ってきた絵に目を向ける。

 昨日あれから描いたの?
 
 売れちゃった絵と同じ色彩を使っているのに、全然印象が違う。
 前の絵はなんだか幸せで明るい未来を感じた。
 この絵はもっと切実な感じ。左上に描かれた強い光に惹きつけられる。手を伸ばしても届かない光のよう。
 届かないのは遥斗先輩の心だ。ちょっとは近づいたと思ったのに、いきなり遠くに行ってしまって目眩がする。

「うっ………」

 膝を抱えてその上に顔をうずめる。
 涙が止まらない。
 胸が痛い。

 遥斗先輩に嫌われちゃった……!






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