全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子

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第三章 

お前のおかげだ④

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「先輩の絵の才能はお父さん譲りだったんですね」
「手ほどきしてもらえたのもよかったね」
「はい……。なんの活動もしていなかったようなのに」
「そうだね。ハロルド・マーシャルはある時を境に活動を停止している。日本にいたことも知らなかったよ。この絵も未発表作品じゃないかな」

 なにがあったのか、先輩も知らないようだった。

「君は実にPRするネタをたくさん持っているね。ハロルド・マーシャルの息子と言うのも発表していいか?」
「事実ですから、問題ありません」
「最初に容姿のことを聞いたが、それは最終手段で、君は高校生ということで表に出ない方がいいな。アピールよりトラブルの方が多くなりそうだし。君の覚悟を聞いておきたかっただけなんだ」
「それは有り難いです」

 それを聞いて私もホッとした。
 どう考えてもトラブルの予感しかない。

「それじゃあ、具体的な話をしようか」

 三人が座って話を始めたので、私は邪魔にならないようにコーヒーを淹れたあとは離れて座った。



 大人たちが帰ったあと、おもむろに遥斗先輩に抱きしめられた。
 先輩からこうしてくれるのはめずらしい。

「どうしたんですか?」

 抱き返しながら、聞いてみる。

「優、ありがとう」

 お礼を言われて、「たまたま叔父さんが画商だっただけで……」と言うと、「違うんだ」と手に力を込められた。

「………俺はつい最近まで目の前のことで精一杯で将来のことなんかとても考えられなかった。それがお前のおかげで、未来のことが考えられるようになり、ネットを知って、絵の販売という可能性を知って、画家という道があることを知った。全部、お前のおかげなんだ」

 湿った声で言われて、私も泣きそうになる。
 役に立ててたようでよかった。

「でも、私は自分がやりたかったことをやっただけですよ? 暴走もしたし」

 私が言うと、先輩は顔を私の肩につけたまま「確かにいつも振り回されてるな」と笑った。

「それでも、ありがとう」

 これまでのことを思い、未来に思いを馳せながら、私たちはしばらく互いを抱きしめ合った。


 
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