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第三章 

お前のおかげだ③

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「うーんと、一生懸命絵を売るから?」
「そうだな。まぁ、正解だ」

 叔父さんはまた先輩を見て、説明を続けた。

「うちの手数料は50%だ。ネット販売の手数料は10~20%だから、実入りでいったら、そっちの方が遥かに儲かる」
「でも、画商は額装から企画展示、告知PR、販売窓口、トラブル対策と幅広く支援してくれるんですよね?」
「ほう、そこまで調べてたんだね。それは感心だ。そう、僕たち画商は絵を売るためにあらゆる手を尽くす。さらに付け加えると、画家の価値を上げる活動もする」
「だから、お話を聞いてみたいと思ったんです」

 叔父さんと対等のやり取りをする先輩がすごく大人に見えた。
 高校を出たら、すごく遠いところに行ってしまうんじゃないかと不安を覚えるくらい。

「まぁ、難しい話は、またあとにして、絵を見せてくれるかい?」
「はい、こちらに主だったものを用意しています」

 壁際に叔父さんを案内して、絵を見せる。
 並べきれないので、重ねて置いてあるものもあったけど、叔父さんは一個一個丁寧に見ていった。

「驚いたね。とても高校生レベルとは思えない。これだったら十分売り物になるね」

 叔父さんは唸り声をあげて感心していた。
 よかった! 写真と現物は印象が違うから、ちょっとドキドキだったんだ。
 自分のことのように誇らしい。

「これをみんな独学で?」
「いえ、もともとは父に手ほどきを受けました。父は売れない画家だったんです」
「画材はなにを使ってる?」
「これです。父が『画材は質を落とすな。色が褪せる』と口酸っぱく言っていたので」
「それは正解だな。これで安心して売れる」
 
 叔父さんの言葉に私は目を輝かせた。

「ってことは、叔父さん、売ってくれるの!?」
「あぁ、遥斗くんと条件が折り合えばね」
「やったぁ」

 思わず先輩に抱きつく。
 それをなだめるように引き剥がしながら、先輩も微笑んでくれた。

「あれ、あの絵は?」

 叔父さんが離れたところに飾ってある絵を指差した。

「あぁ、あれは父の絵です」
「見せてもらっていいかい?」
「もちろん」

 叔父さんはその絵を取り上げて、まじまじと眺めた。特にサインのところを注視すると、「君のお父さんの名前を聞いていいか?」と尋ねた。

「はい。ハロルド・マーシャルです」
「やっぱり! 君のお父さんは売れない画家なんかじゃない。寡作だが、国際的に人気のある画家だよ。この絵だったら、通常価格で200万、オークションならもっといい値がつくだろう」

 …………びっくり!

 先輩も初耳だったようで、驚いていた。
 
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