優等生ですけど異世界召喚されました。

古井新一

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第1章 勉強よりもクエストへ

第一話 「落とし物は持ち主へ」

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    人はまず、声を忘れる。
         そして、顔、思い出という順番で忘れて行く。楽しい思い出も、辛い思い出も。
         記憶は修正されて行く。
         人間の脳は、そうつくられている。
        忘れてはいけない大切な思い出だとしても……。









ーー「どうも御親切に、ありがとうございます!」

     午前七時三十二分
     小鳥の囀りが心地良く聞こえる時間帯。
     学校に向かう一人の男子高校生の前を歩いていた、外ハネしている髪型が印象的な女子大生が道端で財布を落とした。桃色のリボンにおしゃれな模様の長財布。
     

     少年はその財布を落ち着いて拾い、その彼女に渡した。


   「いえいえ、当然の事をしたまでですよ。」


   高校生とは思えないほどに大人びた口調と穏やかな声に、彼女は忘我の表情を顔に浮かべた。


   「あの!  御礼をしたいのですが、時間ありますか?」

   「御礼なんて大丈夫ですよ!  そのお気持ちだけで嬉しいです!」

     「そうですか。 優しい方で助かりました!  本当にありがとうございました!」
 

    彼女は深くお辞儀をした。
   少年はクールな表情をしていたが、女性が振り向いた後には少年の顔に喜色が浮かんでいた。

     (以外と俺のタイプだなー。 身長は約百六十五センチ前後でスタイルいいし。)


   心の中では《チャラさ》が目立つが、彼はそれをおもてには出さなかった。
    感情は胸の内に秘めることが多い。
    これといって理由はない、只々そういう性格なのだ。
      その結果、

       「ケイタは真面目だね!」
        「えらいなケイタ!」
    
      と、いう言葉は飽きるほど言われた。学校の先生は特に言ってくる。

(まぁ、別にいいけど。)

     少年はポケットに親指を入れ、周囲に聞こえるか聞こえないかくらいの音量で鼻歌を歌いながら、学校に向かい始めた。ーー







    佐藤啓太   十六歳    B型

    成績優秀。ストレートな髪質に、平均より少し高めの身長。特徴といえば、黒髪全体に少し茶色がかっているところだ。
    生まれつきのものだから仕方がないと思っているが、少し気にはしている。

    女子からの告白も多いが、全て断ってしまい恋愛経験は未だにない。
   もちろん、この歳になるとそういう事には自然と興味が惹かれるものだった。性格は真面目だが、根っからのクールスケベだ。

     何度かチャンスはあったものの、過去に告白してきた女子の半分以上は正直あまり好みではない。人の良さそうな温和な顔つきだが、芯は氷のように冷たい。


  のんびりと学校に向かっていると、細くて薄暗い路地裏から白い光が見えた。

     「ん?」

    その光はテニスボールよりは一回り小さく、不気味な動きで浮遊していた。ケイタの目は釘付けになった。
    次の瞬間、その『球の様な?』光は勢いよく近づいてきた。

      「は⁉︎   マジかよ⁉︎」

    あまりに 突然な事で思わず口から溢れた。
    ケイタの頭上にくると次第にその光は強くなり、突然の眩しさに思わず目を閉じてしまった。


  



      
       「ざわざわ……」

    しばらくすると光は消え、先程より周囲が騒がしい事に違和感を感じた。視界がはっきりするとケイタは唖然とした。

    「えっと……どこ?」

     ケイタは突然の出来事に思わず苦笑いした。
     現代日本と掛け離れた技術の建築物に、賑やかな会話が聞こえてくる。ここが日本には思えないが、彼らは日本語を話していた。そして、何より驚いたのは周囲にいる人達だ。
     
      見渡す限り、鎧や中世風の衣装などの格好をしていている。側から見れば『制服』を着ていたケイタの方が怪しい者に見える。


     「 映画のセットか何かか?  それにしてもリアル過ぎる。建物の創りはレンガに石材舗装……。 機械類は一切見当たらないが、周りを見渡した限りだと発展途上ではなさそうだ。となると、それに代わるものが何かあるのか? ーー」 
       
     
       独り言を言っていた。
      自分なりに脳内の情報整理をしているものの、ケイタはこの状況をなんとなく楽しんでいた。

    「とりあえず、情報収集が先だな。 もしかすると面白いものが見れ……ん?」

    ケイタは異変を感じた。
    気がつくと周りからの好奇な視線を浴びていた。

     (おいおい!  これヤバくねーか?)

     一先ずこの場を離れるついでに街を探索し始めた。
      


          
      街をふらついていると唐突に、前方から少し高い男性の声が響いた。

           「可愛いねぇー!  君、俺らと遊ばない?」

           「怖がらなくていいからさぁー、ほら、少しだけ!」 
       
      そこにはケイタと同じくらいの歳の女の子と、その少女を誘惑的な目を向ける三人の男がいた。

      彼女は美少女だった。
      透き通るような青色の長い髪に、宝石のように輝いている瞳。幼さが少し目立つ顔立ちに、肌理の細かい白い肌。服は華やかというよりはシンプルだが、それが逆にその美しい美貌を引き立たせている。

     「おい、どうした?」
       
     どうやらその男達は彼女の返事を待っている様子だが、彼女の顔は無表情だった。
       少し間をおいて、ようやく彼女の口が開き始めた。すると、
     
      「ーーバカじゃないの?  」

    彼女から出たのはその一言だけだった。俺は冷や汗をかいた。彼女の言動には驚いたが、それよりもこの場の空気感は半端無くやばかった。男達は憮然たる表情をしていた。
     
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