仮面症のノベル

ナヒジキ

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第3話 死神に魅入られた10人の子供達

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第3話 死神に魅入られた10人の子供達
初めは12年前のことだった
祖母からの勧めで俺は子供達だけで行く旅行に行くことになった
当時4歳だった俺達はバスに乗って旅行していた
俺等は10人で共に同じ年の子達だった
10人共知り合いはいなく、全員別の県や国から来た子だった
最初は不安だったが旅行のレクレーションで俺等は共に仲良くなっていった
大人は旅行関係者と運転手が3人いた
4泊5日の旅行で最終日、高速に乗って俺等の住んでいる県に戻ろうとした時事故にあった
車は横転して後ろに乗っていた俺等はガラスや中にあったものの下敷きになった
いきなりの事で何が起こったか幼い俺等に分かる筈もなかった
ただ痛みと恐怖だけがそこにあっただけは覚えている
救急車やレスキュー隊が到着して俺等は助かったが大人3人と俺達10人の内の一人が亡くなり、残った俺達も大怪我を負って病院に運ばれた。
そして各地いろんな場所から来た子供達は元の場所に帰っていった
それが12年前の事故の話、そこから3年前の事件に関係されていく
4年前くらいに父の念願だったカフェ開店によって俺は祖父祖母の住む街に戻ってきた
中学校はここの近くの学校に行くことになって少し緊張していた
また友達ができるか、馴染めるかどうか、期待と不安を膨らませていた
この頃の俺はまだ人と接するのに躊躇してなかった、いや元々そういう性格だった
地元の小学校上がりじゃない俺には入学当時から多くの友達が出来た
その中でも最初に話しかけてきてくれたのが
「君見ない顔だけど転校生?」
「あぁこの前来たばっかなんだよね」
そこから遼、八代、暦。女子では彩、未来、恵美とも仲良くなっていった
睦美はちょくちょく家族と共に一緒になる機会が多く同じ中学に行こうと思ったのもそれが原因だ
俺等は常にいつでも時間さえあれば会って楽しく学校生活をしていた
休みの日も誰かの家に行ったり、カラオケやどこかに遊びに行ったりした
全員あんな運命、起こるなんて思っていなかった
そう、中学2年の修学旅行の時までは・・・・・

「ほら、写真写真!!」
「はいはい待って」
中学の一大イベント、修学旅行
俺等の学校では沖縄に行くことになっていた
やっぱり8人共一緒に行動していた
ちょうど4対4なので少しはぐれるとカップルに間違われることもあった
そして8人一緒だったので取り残されるのも一緒だった
「全く確認せず行きやがって」
「待ってろ、いまホテルの人がシャトルバスで迎えに来るらしいから」
「まぁ気長に待ちますか」
少し時間が経った時に小型バスで迎えに来てくれた
俺等は後ろに乗り込んでしばらくは自由な時間ができた
すると八代がふと話しだした、それが始まりだった
「そういえば昔、俺バスに乗っていて事故にあったんだ」
「なんだよそれ自慢することかよ」
「でもバスの事故って珍しいですね」
「そういえば、俺も昔バスの事故に遭ったって聞いたな?」
「私も実は・・・」
そこから違和感が車内に立ち込めてきた
「その事故って旅行会社のツアーだった、暦は?」
「俺もツアーのものだった、そしてこんなシャトルバスだった」
「おいおい、どういうことだ!?」
「分かんねぇよ」
「もしかして、もしかしてだけどその旅行の名前って―――――」
言われた瞬間全員が言葉を失った
それはもう全員がその場にいたという証拠になっている
「確か事故の原因って――――」
その言葉が最後だった
何かによって左前車輪がパンクしてコンパスの様にガードレールに俺達のいる後部座席部分が衝突する
そして思い出す昔の事、昔のこんな事を思っていたな
事故によって俺等は近くの総合病院に運ばれた
八代と未来と暦以外は外傷が酷く手術することなった
俺が目覚めるとベットの上だった
一瞬なんでこんな所にいるか分からなかったがフラッシュバックによって思い出す
あの事故
それによって加わった衝撃
そして何よりもその現象・・・・・
「うわあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
散乱した、いや今でもそう考えれば逃げ出したくなる程怖かった
面白い話だろ?
偶然事故にあった奴等が集まり
偶然また仲良くなり
偶然他の奴等に取り残され
偶然同じ様なバスに乗せられ
偶然昔の事を思い出させられ
偶然全く同じ原因で事故に遭う
偶然怪我の大きさも位置も全員同じだ
この世にはただ一つだけ人が作り出せないものがある、それは『偶然』だ
人が関わればそれは必ず『必然』になってしまう
なら人はどう思うかわかるだろ?
俺等は『殺される運命』だっていう事になる
そして人との関わりが怖くなった
いつ、どこで、だれに、どうなるか分かったものじゃない
気が付くと病室には窓以外何もなかった
何かあればそれで殺される可能性があった
極限状態、そんな事があって何も信じられないほど精神が追い詰められていた
そして気がつくとやっぱり全員同じ部屋に集まっていた、これは必然だ
獣を警戒するように全員背中合わせで座り込んだ
「知っているか?って言ってもつなし達は覚えてないよな、小6で亡くなった誠もあのメンバーだった」
「亡くなった?どうしてだ?」
「よく分からない族に捕まってそのままなにかやらされ、その罪に耐え切れずな・・・」
「私達は死ぬ運命なのかな?」
「なんだよそれ・・・俺等は死ぬために生かされているのかよ!ただの遊び道具みたいに・・・」
泣きそうになるのを必死に堪えている遼の顔、それは今でも覚えている
俺等がいくら考えた所で神様が何を思っているかなんて分かるはずもない
気がつけば3日間もこうして座り込んだままだった
その間に食事もせず、トイレも室内のもので済ませていた
多分俺以外にもこのまま餓死して死ぬのだと思っていた奴がいたと思う
だがそれは一人の人物の登場によってガラリと変わった

「なんとか全員生きているみたいだな」
いきなりドアを開けて入ってきたのは担任の先生、苗字は杉山という
「なんですか?」
「いいや、少しな」
そう言って俺等の方に歩き出す
力がなくなっていたからなのか本当に信頼していたからなのか、俺等全員は警戒することなく迎え入れた
だがすぐに期待を裏切られる
左頬にバチンと一発ビンタを入れられる、それは男子だけじゃなく女子にも入った
瞬間的に怒りが湧いてくる
そしてどこからそんな力が出たか分からないほどの強さで杉山先生を掴み壁に叩きつけた
「何するんですか!」
「辛気臭い顔してんなよ、今すぐ死ぬじゃないし」
「聞いたんですか?」
「あぁ全部な、それで見たらなんだよ。今にも死になそうになっていやがる」
「先生には、俺等の気持ちなんて分からないんですよ!」
運命的に死が決められている、分かりきっているとそれは恐怖しか思いつかなくなる
どんな人でも普通に死ぬ、そもそも死ぬこと自体が怖い
掴んでいた手は恐怖と力のなさで揺れている
そしてそこから形勢逆転されて俺が壁に叩きつけられる
何も食べていなかったのが裏目に出た
「お前は死にたいのか?」
「俺は生きたいですよ、でもいつ死ぬか分からないんじゃあ周りに迷惑がかかる」
俺等を運んでくれたホテル運転手
その人は軽傷で済んだが、昔みたいに全員死んでしまうんじゃないかと思うと怖い
「なら生きればいいじゃないか」
「簡単に言いますね」
「あぁ簡単に言うぞ、でも分かりきっているのなら簡単に終わらせるんじゃない。抗うんだな」
「抗う?何から・・・」
「そうだな、この運命を決めた神にかな?」
もし死にそうになったら生きようと抗え、その運命を決めた神を殺してでも生きようとする位な
「抗う・・・」
「お前は生きたいんじゃないのか?ちゃんと血だって流れているんだ、心臓だって動いているんだ。そこでゾンビ見たく怖がっていても何も出来ないだろ?」
生きるために死を抗う、それが俺が教わった先生の言葉
「でも周りは?」
「もしそうなったら助けるために頑張れ、頑張って頑張って頑張って、それでも駄目なら諦めるしかないな」
「諦めろって・・・」
「でもなんとか成る事は出来る筈だ、それに頑張って最善を尽くしたのなら文句はないはずだ」
「そうですね・・・」
「なら早く出てこいよ、傷だって完治した訳じゃないからな。来る時に備えるために体は大切にしておけよ」
そう言い残して先生は俺を開放して戻っていった
俺等はそこから先生が言った通りそれぞれ元の病室に戻り、傷を治す為に安静にしていた
そして2ヶ月程で退院してまた学校生活に戻った
確かに運命は怖かったが今怖がっていても日々怖くなるだけだった
戻ってからもいつも通り他の友達共仲良くしていた
だけど卒業間際、いきなり運命はまた俺等の前に現れた
杉山先生が事故で重体になって病院に運ばれた
その話が信じられなくて俺等は病院に走りこんだ
皮肉な話だった
運命を否定した人が俺等の運命が確実なものだと証明してしまった
運命の恐怖がまた襲い卒業と同時に俺以外に奴等は海外に行ってしまった

「それを気に全員人との関わりを極力なくしちまったんだよな」
空を見上げて少し楽しくそしてかなり悲しそうに話し終えた
「・・・そうか、何でだか分かった気がする」
「これで分かっただろ?まぁ俺に近づいていたらいつ死ぬか分からないと来たものだ」
「そうか・・・でも俺はこのまま友達続けていく気だぞ?」
「死にたいのかよ?」
「いやただお前、いやつなしを含めた全員だな一人にしたら勝手に死んでいきそうな気がする」
言っている事は合っている、誰もいなければ誰も死なず一人で済む
もしかしたらそういうことを言いたかったのかもしれないなあの人は・・・
何か一つでも心残りがあれば人は生きようとする
それを全て無くした人はあの時の俺等みたいな奴の事なんだろうな
「ありがとう」
「感謝言われる筋合いはないよ」
「そうだな、そろそろ戻るか。チャイムも鳴るし」
教室に戻ると真っ先に鈴村さんが反応して駆け寄って来た
「どうしたんですか?」
「あっ、いやなんでもないよ。それよりつなし達はどこ行っていたの?」
「昼食をしてきただけですよ」
「そう、それならいいけど・・・」
「やっぱり敬語に戻るんだな」
「「!?」」
吉野の発言により佐々森さんも一緒に寄ってくる
「えっ、いや・・・まぁそれはだな・・・」
「えっ?つなしって吉野との話の時タメ語なの?」
「今日はそういう気分で」
「いきなり性格が変った様にな」
「屋上で何があったの?何つなしって好感度上げるとタメ語になる設定なの?」
「少し屋上で思い出話を言っていただけですよ」
「思い出話、もしかして昨日話していた3年前の―――」
「いやその話じゃないよ」
「あぁその話じゃないです」
へい、とハイタッチを決める
つなしは仲良くなるとハイタッチをよくする
「ありがとう」
「いいや、大したことじゃねぇよ」
屋上から教室に戻るまでの間、少し話し合っていた
この事は女子2人には話さないでおこうと
信頼しているわけじゃなく危険に晒そうとしている訳でもない
ただ女子には少し重いと思うからだ
話は事は俺等の胸の中にしまっておく
「ほら授業始まりますよ」
「何か隠されている気がする」
こういう直感は鋭い
授業中も少し睨みつけられながら勉強していく
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