【短編集】纏う人たちの物語 ゼンタイに関わりたくなかったのに

ジャン・幸田

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居眠りした人にゼンタイを着せてやった!

前編

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 わたしの部屋は都心に近くにあるので友人がホテル代わりに使うことがしばしばある。だからビール缶を宿賃かわりに飛び込んでくる事が多い、本当に迷惑だわ。

 しかも部屋は昭和の雰囲気漂うなんて言ったらノスタルジーを醸し出すかもしれないけど、築七十年の恐ろしくボロいうえに四畳半と無茶苦茶狭かった! いくら貧乏で家財道具は小さなテレビとカラーボックスぐらいしかないといっても、大人二人が眠るのには狭くてしかたがなかった。

 そんなある日、友人の晴香が泥酔した状態でやってきた。彼女は来たときには前後不覚の状態だった。いくら明日が日曜日だといってもいい加減にしてもらいたいところだ。ここはホテルじゃないんだって、さもなければネットカフェもしくは漫画喫茶? まあ、どっちでもいいけど。

 彼女はそのまま眠りに落ちていったけど、わたしはというとイビキはうるさいわ酒臭いわで眠れそうに無かった。しかも彼女は暑いのか着ていたものを脱ぎ散らしていた。

 こんな無茶をする女なんだと呆れていたら、晴香のボディラインが美しい事に気が付いた!

 その時、わたしの心の中のもうひとりが悪魔のささやきをささやいでいた。この女が困るような事をしてやればいいんだと。

 そこである事をやってやろうとした。彼女にゼンタイを着せてやる事だ! わたしは秘密のアイテムを発動した。
 晴香にあってわたしにないもの、それは才色兼備だった。彼女は優秀だしプロポーションも良いし顔も良かった。対するわたしは将来を心配されるほどで、出っ歯のお笑い芸人みたいと・・・まあ愚痴をいうのは辞めとこう。虚しくなるだけだし・・・

 人がいつも食事をしているちゃぶ台に寄りかかって居眠りしている晴香を驚かしてやろうと思ったわたしは、まず晴香にゼンタイを着せるために裸にすることにした。女のわたしが脱がせるというのは痴女ということだろうけど。

 ゼンタイはハロウィーンかなんかの時にネットで購入するのを頼まれて買った残りを使うことにした。これならスマートな晴香にもピッタリだと思ったからだ。居眠りしている晴香を起こさないように、そっと横にしてから服を脱がし始めた。彼女は良いところのお嬢様と聞いたことがあったけど、それが本当なのかはどちらでもよかった。彼女の服はどれも高級品ばかりで、三つで税抜き980円のパンツを買っているわたしとは住む世界が違っていた。

 それにしても意識の無い人間の服を脱がすので本当に骨の折れる作業だった。四苦八苦しながらわたしはようやく晴香を一糸纏わぬ姿にしてしまった。

 このような状態なのに晴香は余程泥酔しているのか、気が付かないようだった。それにしても、晴香のハダカ、同性のわたしが見ても・・・腹が立つ! わたしみたいに彼氏いない暦が生きてきた年数と同じという身からすれば、この身体で何人の男を誘惑したのだろうか・・・

 そんなこんなを考えていたけど、これから彼女の魅力をゼンタイで隠しつくしてやろうというわけだ。

 目の前には晴香のハダカになった姿があった。本当に同性のわたしが見てもうらやましいというか、やきもちを焼くというか・・・綺麗だ!

 もし、わたしが男だったら犯してしまうところだろうけど、それって犯罪だ! 女同士がした場合は・・・まあ、法律に詳しい人でも聞いてみたらいい話だ、それは。

 ともかく、晴香は酒臭い息を吐きながら熟睡していた。これからわたしが弄ぼうとしていることを知らずに。ここでわたしのボロボロで古い携帯で写メを一枚記念に撮ってしまった。

 わたしは取って置きのゼンタイを箱の中から取り出してきた、サイズはMなので小さいかもしれなかったけど。とりあえず足の先からゼンタイを着せる事にした。

 晴香の身体をわたしの布団の上に置いてから、ゼンタイの背中のファスナーを下ろした。彼女はまだ意識が無いので柔らかい着せ替え人形みたいだったので、大変重たかった。

 そのとき晴香の引き締まった身体の肌の柔らかさにうっとりしてしまった。わたしは・・・いかん、いかん。それじゃあレズだといわれてしまう。とにかくサプライズで晴香を驚かすほうが先だ! それで先を急いだ。

 わたしが用意したゼンタイは何故か足先も指つきだった。そう親父が水虫対策用に履くようなヤツだった。晴香の小さな指を一本一本丁寧に入れていった。それにしても晴香の足の指は綺麗だったけど、すぐにそれもゼンタイに覆われていった。
 
 晴香は相変わらず爆睡しているけど、なんとかしてゼンタイを着せてやった。しかも真っ赤なゼンタイを! こんな格好では外は絶対歩けそうになかったけど。

 「晴香、あんた眠っている間に影絵のような姿にしてやったわ。そんなふうにボディラインが露になって裸よりもいやらしいわね」

 そういいつつも私はせっせとゼンタイの中に晴香の身体を内臓として突っ込んでいっていた。そんなことに気が付いていないような晴香は相変わらず酒臭い息を出していた。

 晴香の首から下は完全にゼンタイに覆われてしまい、真っ赤に身体が染められてしまったかのような姿になっていた。そのとき、わたしはムショーに晴香を触りたくなってしまった。

 これって触り心地気持ち良いわねえ、なんかクッションみたい人肌の温もりよね、これは。

 そう思ったわたしは晴香が抵抗しない事を良いことに身体のあちらこちらをスリスリしはじめてしまった。これってたしかゼンタイのまとめ買いを頼んできた人が言っていたゼンタイの楽しみだという事に気付いた。

 その心地よさにわたしはうっとりしていたけど、晴香もなんか良い表情をしていた。それを見ると晴香ゼンタイ着てよかったの? そう思ってしまったので腹が立ってきた。そこでわたしは晴美の顔も真っ赤なマスクで覆うことにした。

 「バイバイ! 晴美、これから完全なセンタイ女になってもらうわよ」
 そういってわたしは晴香の顔をマスクで覆い、ファスナーを締めてしまった。
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