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序・クリスタルレディ
05・チズルの改造開始
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チズルはタクマと一緒に旅をするために人間を捨てる事を決意した。チズルは亜空間航行中の非常保安要員になるため、身体を機械化する措置をうけるべく、軌道エレベーターの末端にある宇宙基地に向かった。ここはタクヤたち宇宙士官学校の練習宇宙艦が出発することになっていた。既に予定されている艦の整備と物資の詰め込みが行われ、機器の最終チェックが行われていた。その機器のひとつにチズルは改造されるわけだ。
宇宙歴205年度の士官候補生は400人いたが、練習艦にはほぼ同じ人数の乗組員と教官のほか、多数のロボットが搭乗予定だった。チズルは多数のロボットの範疇になるわけだ。なお、宇宙軍がわざわざ人間改造のロボットを搭乗されるかであるが、予算の関係もあった。人間を改造した方が人件費を後で払っても安上がりであった。
チズルは宇宙基地31号の無重力区画にいた。そこに入る前に人間としての最後の入浴をして、全身の脱毛処理を受けた。そのためチズルはマネキンのような姿にされ、身体検査の時に着るようなローブを身にまとっていた。この時チズルは少し後悔していた。いくら愛おしい彼に同行するためとはいえ、人間でなくなることを。それに一緒にいても自分だと分かるはずはないのに。
宇宙基地に来る前に一週間の研修と最終チャックが行われた。機械と融合させる措置がどういうものか、どのような手順で機械にされるのかをシミュレーションされた。その姿そのものはチズルも気に入っていたが、これから一年間、その姿というのも精神に負担になっていた。
宇宙軍に約束された報酬は小さなお店を開業するぐらいの資金に充分なものなので、帰ってきたらタクマの事を想いながら一生一人でやっていこうと人生設計を描いていた。好きになる男は一人だと思い詰めていたから。
「アズマチズル、ここからその名前は無くなる! ここから仮称クリスタルレディとなるからな」
偉そうにそう言って入ってきたのはチズル改造を担当するナンシー・ドリス技術中佐とその他の改造マシーンであった。宇宙軍は公式には人体改造は戦闘員もしくは傷痍兵のみとしているので、汎用型の改造を行っているのは公然の秘密であった。そのため被改造者は軍籍を持たない一般人と決まっており、改造された後はとある植民惑星に軍関係の開発プロジェクトに従事していることにされた。
タクマたちが乗る練習艦「ブラチスラバ」の客室乗務員ガイノイドは10名いたが、人間改造は3名いた。そのうち1名に欠員が生じたのでその募集に応じたのがチズルだった。これからチズルの身体は機械の身体にされるが、永久に改造されるわけではないので、生体組織の九割は元通りである。それでも、外観は全て作り物にされる。
「わかりました」
チズルは羽織っていたものを脱いだ。本当なら一糸まとわぬ姿をタクマに見せたかったと思った。でも、彼と同じ時間をすごせるから、それでもいいと思いなおしていた。
宇宙歴205年度の士官候補生は400人いたが、練習艦にはほぼ同じ人数の乗組員と教官のほか、多数のロボットが搭乗予定だった。チズルは多数のロボットの範疇になるわけだ。なお、宇宙軍がわざわざ人間改造のロボットを搭乗されるかであるが、予算の関係もあった。人間を改造した方が人件費を後で払っても安上がりであった。
チズルは宇宙基地31号の無重力区画にいた。そこに入る前に人間としての最後の入浴をして、全身の脱毛処理を受けた。そのためチズルはマネキンのような姿にされ、身体検査の時に着るようなローブを身にまとっていた。この時チズルは少し後悔していた。いくら愛おしい彼に同行するためとはいえ、人間でなくなることを。それに一緒にいても自分だと分かるはずはないのに。
宇宙基地に来る前に一週間の研修と最終チャックが行われた。機械と融合させる措置がどういうものか、どのような手順で機械にされるのかをシミュレーションされた。その姿そのものはチズルも気に入っていたが、これから一年間、その姿というのも精神に負担になっていた。
宇宙軍に約束された報酬は小さなお店を開業するぐらいの資金に充分なものなので、帰ってきたらタクマの事を想いながら一生一人でやっていこうと人生設計を描いていた。好きになる男は一人だと思い詰めていたから。
「アズマチズル、ここからその名前は無くなる! ここから仮称クリスタルレディとなるからな」
偉そうにそう言って入ってきたのはチズル改造を担当するナンシー・ドリス技術中佐とその他の改造マシーンであった。宇宙軍は公式には人体改造は戦闘員もしくは傷痍兵のみとしているので、汎用型の改造を行っているのは公然の秘密であった。そのため被改造者は軍籍を持たない一般人と決まっており、改造された後はとある植民惑星に軍関係の開発プロジェクトに従事していることにされた。
タクマたちが乗る練習艦「ブラチスラバ」の客室乗務員ガイノイドは10名いたが、人間改造は3名いた。そのうち1名に欠員が生じたのでその募集に応じたのがチズルだった。これからチズルの身体は機械の身体にされるが、永久に改造されるわけではないので、生体組織の九割は元通りである。それでも、外観は全て作り物にされる。
「わかりました」
チズルは羽織っていたものを脱いだ。本当なら一糸まとわぬ姿をタクマに見せたかったと思った。でも、彼と同じ時間をすごせるから、それでもいいと思いなおしていた。
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