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起・宇宙実習航海へ
11・宇宙実習艦ブラチスラバ
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宇宙士官学校が今回使用する実習艦「ブラチスラバ」は地球統合宇宙軍に所属する練習宇宙船の一隻で、もともとはリスボン級高速巡洋艦の七番艦として宇宙歴143年に進宙し、一線から退役後に練習艦として再就役した。全長は1200メートルで、標準乗組員は1200名であるが、実習任務の時は900人に制限されていた。その300人の差はロボットなどで埋める事になっていた。
タクマは他の実習生と共に乗り組んだのは宇宙歴205年10月8日の事だった。夏の間は慣例として卒業旅行のような太平洋で座学中心の訓練航海をしていたが、これからは卒業後の進路にも影響するので気を引き締めていた。
「なあ、タクマ。お前っていいよなあ婚約者がいて。俺なんかそんな引く手あまたじゃないしな」
タクマの同期生のマイケル・マクガイバーが肩に肘を乗せてきた。
「しかたないだろう、上官の半ば命令だから。まあ、それで本当にやりたかったコースに選抜してもらえたからな。結果往来さ!」
タクマは婚約者、という存在は忌々しく思っていた。もし許されるのなら夏の日に別れたあの少女となら幸せになれたはずなにとと、想っていたというのに。
「そうだよなあ、でもこの実習航海って結構ハードなんだぞ。噂じゃ実習といって際どい地域を航海しているっていうじゃないか」
マイケルがいうとおり、ブラチスラバが向かうところは必ずしも地球を快く思っていない文明社会が存在する恒星系に接近する空間をいくつも横切ることになっていた。
「それぐらい難しい所がなければ訓練じゃないだろ? VRなんざ過去の事例に即したモノだろ、やっぱり未知の事態に遭遇してから解決する方が面白いだろ?」
タクマの子供のころからの夢は人類未踏の惑星系を探検することだった。そのためには宇宙軍に入って哨戒師団に配属してもらう必要があった。しかし、少々成績が優秀過ぎたので上層部から目を付けられ、将来の宇宙艦隊を統率していく人材と目されていた。本来は、そっちの方が人気があって、危険な哨戒業務は避けられる傾向があった。
「そうだけど、お前それでいいのか? 卒業しても必ず希望の部署に配属されるとは限らないぞ! お前、聞いているだろう。お前の婚約者の父親って相当の野心家だって。軍の上層部を掌握しているらしいからな。せいぜい婚約者の彼女の・・・」
そこまでいったところでマイケルはやめた。タクマはその婚約者の事をよくおもっていないのが顔から読み取れたからだ。だから謝罪した。
「いいんだよ、僕が選んだ道だから。あんなに嬉しそうな母さんの顔をみていたら、断れなかっただけなんだから。まあもう一隻の実習艦に乗るのは断れたからよかったとしなければな」
タクマはそういって視線の先を追った。そこにはこれから乗艦するブラチスラバの姿があった。二か月に渡る整備が終了し、士官候補生が位置についたところで、発進するはずだった。タクマ達をのせた宇宙連絡船がブラチスラバとドッキングすると、全員が格納庫に集められた。実習生400名には地球と地球に属する恒星系の様々な人種が男女問わず含まれていた。その実習生の前には教官とそれに従うロボット達が整列していた。
「諸君、小官はブラチスラバ艦長のマック・バチスタである。この艦は火星軌道上で先発している他の実習艦とともに訓練艦隊を編成し三ヶ月間航海したのち、単独航海することになっている。その三ヶ月間の間に除籍されないように頑張り給え。では他の担当どうぞ」
そんな、挨拶を聞き入っていたタクマであったが、終わりに近づいて訓練生の誓いを述べるために列の前に行く途中で気になった事があった。クリスタルに輝く少女の形をしたガイノイドに、それは何故か懐かしいという想いがわいたのだ。
タクマは他の実習生と共に乗り組んだのは宇宙歴205年10月8日の事だった。夏の間は慣例として卒業旅行のような太平洋で座学中心の訓練航海をしていたが、これからは卒業後の進路にも影響するので気を引き締めていた。
「なあ、タクマ。お前っていいよなあ婚約者がいて。俺なんかそんな引く手あまたじゃないしな」
タクマの同期生のマイケル・マクガイバーが肩に肘を乗せてきた。
「しかたないだろう、上官の半ば命令だから。まあ、それで本当にやりたかったコースに選抜してもらえたからな。結果往来さ!」
タクマは婚約者、という存在は忌々しく思っていた。もし許されるのなら夏の日に別れたあの少女となら幸せになれたはずなにとと、想っていたというのに。
「そうだよなあ、でもこの実習航海って結構ハードなんだぞ。噂じゃ実習といって際どい地域を航海しているっていうじゃないか」
マイケルがいうとおり、ブラチスラバが向かうところは必ずしも地球を快く思っていない文明社会が存在する恒星系に接近する空間をいくつも横切ることになっていた。
「それぐらい難しい所がなければ訓練じゃないだろ? VRなんざ過去の事例に即したモノだろ、やっぱり未知の事態に遭遇してから解決する方が面白いだろ?」
タクマの子供のころからの夢は人類未踏の惑星系を探検することだった。そのためには宇宙軍に入って哨戒師団に配属してもらう必要があった。しかし、少々成績が優秀過ぎたので上層部から目を付けられ、将来の宇宙艦隊を統率していく人材と目されていた。本来は、そっちの方が人気があって、危険な哨戒業務は避けられる傾向があった。
「そうだけど、お前それでいいのか? 卒業しても必ず希望の部署に配属されるとは限らないぞ! お前、聞いているだろう。お前の婚約者の父親って相当の野心家だって。軍の上層部を掌握しているらしいからな。せいぜい婚約者の彼女の・・・」
そこまでいったところでマイケルはやめた。タクマはその婚約者の事をよくおもっていないのが顔から読み取れたからだ。だから謝罪した。
「いいんだよ、僕が選んだ道だから。あんなに嬉しそうな母さんの顔をみていたら、断れなかっただけなんだから。まあもう一隻の実習艦に乗るのは断れたからよかったとしなければな」
タクマはそういって視線の先を追った。そこにはこれから乗艦するブラチスラバの姿があった。二か月に渡る整備が終了し、士官候補生が位置についたところで、発進するはずだった。タクマ達をのせた宇宙連絡船がブラチスラバとドッキングすると、全員が格納庫に集められた。実習生400名には地球と地球に属する恒星系の様々な人種が男女問わず含まれていた。その実習生の前には教官とそれに従うロボット達が整列していた。
「諸君、小官はブラチスラバ艦長のマック・バチスタである。この艦は火星軌道上で先発している他の実習艦とともに訓練艦隊を編成し三ヶ月間航海したのち、単独航海することになっている。その三ヶ月間の間に除籍されないように頑張り給え。では他の担当どうぞ」
そんな、挨拶を聞き入っていたタクマであったが、終わりに近づいて訓練生の誓いを述べるために列の前に行く途中で気になった事があった。クリスタルに輝く少女の形をしたガイノイドに、それは何故か懐かしいという想いがわいたのだ。
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