クリスタルレディ との逃亡

ジャン・幸田

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承・ふたりきりの遭難!

21・タクマと一緒

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 タクマにとって光輝くメタルロイドと呼ばれるガイノイドのクリスタルレディは愛おしかった。なんとなく妹のようにも恋人のようでもあったからだ。そのため練習航海中も気になって仕方なかった。でも、彼女は作られた存在で生物ではなかった。プログラムが実体化しただけのはずだった。

 一方のチズルはそれでよかった。機械の中で閉じ込められることで一緒にタクマといられるからだ。士官候補生たちから人間扱いされないでもよかった。タクマといられるからだ。そんなとき、事件が起きてしまった。

 三ヶ月にわたる訓練艦隊による航海から離脱したブラチスラバに辺境植民惑星S21から緊急通信が入った。感染症が流行したがワクチン製造装置が故障しているので危険が迫っているというものだった。

 その時、最も至近にいたブラチスラバが予定の航路を逸脱して駆けつけるはずであったが、運悪く宇宙海賊に襲撃を受けている別の辺境惑星系からの救助へと向かっていたため、S21へ恒星間連絡シャトルで救援部隊を派遣することになった。その時、成績優秀なタクマが副官に選ばれた。そして生活支援要員としてクリスタルレディも同行することになった。

 「これでよし! じゃあ向かうぞ!」

 タクマは意気揚々だった。タクマが派遣部隊に抜擢されたのは経歴に箔をつけるためだとクリスタルレディことチズルは思っていた。S21への任務は危険性がないし、往復68時間という短期のミッションだった。だから選ばれたんだと。

 「必要な物資は揃っております、タクマ少尉」

 クリスタルレディは事務的な人工音声を発していたが、その内臓のチズルはドキドキしていた。タクマと一緒、こんなに近くでいれるんだと。そのとき、ドキドキを遮る声が響いた。

 「それじゃあ、いきますか! さっさと終わらせましょう!」

 それは派遣部隊隊長のグエン大尉だった。彼はタクマの教官でもあった。

 「それじゃあ、お嬢さんも位置についてね。君は不測の事態のためのバックアップ要員だからね」

 グエンの言葉は不吉なものであったが、それを思い知らされるのはS21に到着してからだった。
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